PLAYNOTE Shinjuku Gyoen Sentimental

2009年04月13日

Shinjuku Gyoen Sentimental

[お出かけ・旅行] 2009/04/13 14:26
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この一ヶ月でたった一日、たった一日、昼稽古がない日が今日。新宿御苑に行ってきた。やわらかくなった風が、世界そのものの境界線を、もっとずっと遠くへ押し広げているような気がする。子供は昨日残した野菜を食べられるようになり、少年の恋は実り、大人たちの夜には優しい夢が訪れる。暖か過ぎて、柔らか過ぎて、引きちぎってしまいたいくらいだぜ。

コンビニでビールと塩大福、ピーナッツ・チョコレート、それに鉛筆と無地のノートを買った。今朝は友人宅でゆっくり起きたので、もう午後の一時半だが、あれだけ飲んだのに体調はすこぶるいい。友人の作ってくれたコンソメ味のパスタと手製のはちみつレモンが効いたのだろう。なお、友人と言うのは、今度新作飲尿ミュージカルで作曲・演奏・歌唱指導ほか音楽で携わってくれる伊藤くんだ。

新宿御苑について、まず鼻を抜ける匂いが違う。草木の青々とした存在感が、香りとなって鼻腔をくすぐる。どうしようもない。完全降伏という気分になる。私は私をどこに置き忘れてきたんだろう? ずっとそんなことを考えていたが、ようやく気がついた。

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グランド・ジャット島の日曜日の午後

思わずスーラの絵画を思い出す。

春らしい草木の青、というよりは、それを貫く光の透明度に驚いてしまう。広くて大きな腕の中で守られているような心地がする。おそらく、魔法がかかっていると思って間違いないんだ。人間は歩みを遅くし、鼓動をゆるめ、大きく息を吸う。きっと、昨夜は亭主の寝汚い様を口汚くののしっていた主婦や、明日はミスを部下になすりつけるために書類を書き換えるサラリーマンや、今日もこの後手首を切る女子高生やがいるんだろう、この公演には。でも、ここにいる瞬間だけは、なにがしかの魔法が働いているように見える。

最近は何があった? いろいろなことがあった。基本的には毎日稽古だ。先週は友人の芝居を観に行った。僕は楽しむことができず、かといって面と向かってそれを伝えることに建設的な何かも感じず、かつ臆病や打算もあいまって、誰とも会わずに帰った。昨日は次の音楽で世話になる伊藤くんと飲んだりした。現場の不条理を叩きつけ合う時間は楽しかったが、ある一線を越えると見苦しくなる。だが久々に台本を書くためにとか早く寝るためにとかつきあいでとかではなく、真剣に酒が飲めたので楽しかった。DCPOPで花見をした。古い友人とメールで連絡をとった。親友から「結婚します」というメールが英語で届いた。WSオーディションをやった。というか、やっている。

と、ふと目を上げて、あらためて周囲の美しさに心を奪われる。芸術的とすら言える美しさだ。風はやわらかく、大地は平らく広く広がる。地面の上すれすれを、舞い落ちた桜の花びらが転がるように飛んでいく。そして僕には今、あと十五分だけ、時間がある。この空気を吸っていられる時間が。