PLAYNOTE 『息をひそめて』稽古

2009年03月26日

『息をひそめて』稽古

[公演活動] 2009/03/26 02:32
DSC_46460067.JPG
佐野功

今日はDULL-COLORED POP7.7『ショート7』のBプログラム一番打者を飾る一作、『息をひそめて』の稽古をしてきたよ。時代錯誤に大きく振りかぶった独白と現代口語会話のアンバランスなミックスが魅力の、大人の恋の有り様を描いた一品。

DULL-COLORED POP7.7『ショート7
2009/4/29(水・祝)~5/6(水・祝)@Pit北/区域 ☆ 前売2500円・当日3000円

『息をひそめて』は元々、2007年の5月に催された『猫道ロックフェスティバル』に参加したときの作品。そのときは、ド外道クルー・猫道一家、平均Dカップの根暗アイドルユニット・平均D、オリジナル大衆演劇アーティスト・小櫃川桃郎太一座、そしてDULL-COLORED POPが参加。高円寺UFOクラブという割とちゃんとしたライブハウスで一夜限りのアクトでした。わずか10分の転換中に、四畳半のセットを現出させ、「バカだろ」と喝采された幻の一品。観たのはおそらく60人くらいじゃないかな?

DULL-COLORED POPはどういう劇団か、と言えば、独白やポエム、文学的表現をシアトリカルに回収して舞台にぶち込むというのが一つの個性であります。よく「台詞がカッコいい」「格調高い」「大仰」「いつの時代だ」とかあれこれ言われるけれど、「ナチュラルな会話だって書けるしやれるよちくしょう!」とか「現代口語劇って面白いかも!?」とか思ってた時期に書いたものなので、モロに影響を受けています。

思い返せばちょうど時間堂公演『ピンポン、のような』に、俺が演出助手、清水が役者として参加していて、やたらと深呼吸のできる演劇を吸収・咀嚼していた時期。「さっそく使ってやれ」とばかりに酔っぱらった二人の女というだらりとした会話を設け、正対するようにいかめしい独白をかます男を配置し、ある演劇的魔法によってその二つを繋げる、ということをやった、30分足らずの小品のくせに、結構欲張った作品でした。

内容的にも、当時の…、と言うより大学出てからの自分の恋愛観がぎゅっと凝縮されていて、なかなか思い入れが深い。バカみたいな話だが、再演にあたって二年ぶりくらいに読み返したら、ちょっと泣きそうになってしまった。本公演では全然恋愛モノとかやらないうちですが、短編ではいくつかあります。それは、短編は人生のあるドラマチックな一瞬をざくっと切り取ったものであるべきだから、という信念のもと、万人が共有できるドラマのプラットフォームとして、恋愛というものが出てきている、とも言えるし、本当は書きたいんだけど二時間分も書くほどネチネチしたくもない俺、という事情も。

* * *

さて稽古状況であるが、二回目なのでまだ前途多難。初絡みとなる佐野功は、つかこうへいから平田オリザから文学座から柿喰う客からインプロからトレンディドラマから、ありとあらゆる演劇ジャンルを渡り鳥している男なので、実に器用。なのだが、まだ初絡みなので共有言語が少なく、お互いのギャップがまだまだある感じ。特に難しいポジションにいるので、最期まで肉弾戦になりそう。

ちゃんと絡むのはまだ二度目の田中のり子(reset-N)、のはずなんだけど、何だろうこの安心感は。空気や状況を汲み取る能力が実にグッドで、どんどん先に行けちゃう感じ。最終的にはバランスであり調和であるから、ゴールに近いわけではないんだが、むしろ他が遅れを取っている感じがする。

そしてその二人のバックアップをもらいつつ、揺れる思い体中感じる女を演じる堀奈津美。劇団員だしもう五年以上の中だから、彼女の演技が嫌いなはずはないのだが、いつも一番最後までシビアに当たっている感じがする。今回も最初からあーしろこーしろ言っているが、今回の奈津美嬢は実に謙虚で前向きでひたむきなので、演出席に座る人間として大変に助けられている。

思えば演劇の稽古ってのはなかなか変なもので、本番までに何百回と返し稽古をやる中で、何百回と「ダメ」を出され続けるわけだから、心が折れる瞬間だってあるだろう。もちろん「ここはいい、ここはこうして」という部分的否定・肯定はあるけれど、だからって心が疲れないはずがない。「お前の性格は好きだが、顔がダメだな」とか「今日の服は似合ってるけど、安そうだね」とか言われても嬉しくないのと同様、全面的なオッケーが出せるまでは心が疲れ続けるものだ。慣れてくる部分もあるけど、慣れてしまったらおしまいでもあるし、何でこんなことやってんだろうねー?

帰り道、四人で桜を観ながら缶ビールを飲んだ。三月とは思えない寒風に吹きさらされながら、ほとんど桜は見ないでペラペラと他愛ない話を喋っていた。であるからして、この作品は面白くなると思う。

明日はソヴァージュと藪の中だ。