PLAYNOTE 脚本の声を聴く

2009年03月24日

脚本の声を聴く

[公演活動] 2009/03/24 02:33
ビスコ.jpg
これはビスコ

『15 minutes made vol.5』が終わり、一週間。顔合わせを済ませ、DULL-COLORED POP次回公演稽古が始まりました。今回は7本演出します。

すでに3本終えたわけだが、脚本ごとにまるで稽古の感触が違って面白い。と言うことを書く。

DULL-COLORED POP7.7『ショート7
2009/4/29(水・祝)~5/6(水・祝)@Pit北/区域 ☆ 前売2500円・当日3000円

息をひそめて

稽古一発目。堀奈津美、田中のり子、佐野功出演の、現代口語劇と独白をミックスした、センチメンタルな恋愛劇。

適役ながらバラバラの個性と経歴を持つ3人なので、お茶をした。リプトンのティーバッグを買ってきて、給湯室で湯を沸かして、お茶を淹れた。しばらく雑談、よもやま、佐野くんが出くわした愉快なエピソードの話などで駄弁を連ねた後、いい演技ってどういうことか、どう台本と向き合っていこうか。意外にも3人の話がそこそこ歩調が合い、安心する。

で、読み合わせスタート。とにかくいい加減にやってくれ、効果を狙わず、頭を使わず、反射神経だけでやってくれ、というディレクション。口語会話の部分が多いので、最終目標はテキストから自由になること、目に見えない無数のピンポンのラリーを絶え間なく続けること、きちんとその場に存在すること、などが問題になるから、先入観を絞め殺して、身体の声を聴いてみろ。やってみてやはり、佐野くんのポジションがえらい難しいことに気づく。初演は菅野貴夫である。のりちゃんは個人的には全7本を通してもベストキャスティングの1人と思っているだけあって幸先いいスタートだし、さすが年長者、間口が広い。やりやすい。なっちゃんは、初演でも同じ役をやっているだけあって、脚本を理解しすぎている。一度離れる作業に時間がかかりそう。

アムカと長い鳥

二発目は、清水那保ひとり芝居・『アムカと長い鳥』。自分にとって最高傑作の1本だが、読み返してみて、稽古してみて、改めてそのパーフェクトさに驚く。今回、七本あって、一文字一文字も変えなかったのはこれだけ。

リアリズムとかうっちゃって、会話を全部リズムで組み立てる努力をしている。かちっとした型があっても、俳優の中にきちんとしたイメージと理解、瞬発力があれば、時間は圧縮できる。だからこそ、この台本に書き込まれているリズム、イマージュ、影を声と身体と精神に乗せることに時間を使う。最初の八行くらいの台詞だけでたっぷり一時間半やれた。恐ろしい子。

『息をひそめて』では台詞崩していいよと言ったが、こちらは正反対、一文字も、一リズムも崩すなというディレクション。加えて、二重の意味で台詞から自由になる必要があるから、もうガチガチに覚え直さないといけない。そこはさすが怪物清水那保、三年ぶりの再演なのに90%入っていたが、ディテールでズレがある。全部完璧に覚え直すことを指示する。この台本に書かれた台詞は、一文字も変えちゃいけない。

15分しかないの

つい一週間前くらいに楽日を迎えた『15分しかないの』。むちゃくちゃ正確に劇場の寸法を実寸でバミり、空間を把握することからスタートする。そして台詞の確認。うん、抜けてない。

すぐの再演といえどもかなり違ったものになりそう。衣裳の変更、「女A」の解釈の変更、「男」の解釈の変更などに加え、一番でかくてややこしいのが空間の使い方。劇場の声を聴くこと。シアターグリーン・Box in Boxは、比較的傾斜の強い、俯瞰的に見下ろす、横に広い劇場空間だ。それに対しPit北/区域は、一階席だけで客席が二方向にあり、舞台はほぼ正方形、客席との距離も近く、見え方・見せ方がまるで違う。同じ配置でやったらのっぺりしてしまう。もっと俳優を彫塑的に見せたいし、声をサラウンドに響かせる必要がある。と言うわけで、位置取りをすべて変更。観た人ならわかると思うが、あれの位置取りを変えるってのは、大仕事だ。

とは言え何だかポジティブな稽古場。「やってみよう、で、ダメだったら元に戻そう」っていう気楽さがある。一応の完成は見ているわけで、一から作るというのとはまるで違う。むしろこの、とりあえずの完成があって、どうよくするか、ということに意識を使っている今の方が、より誠実にクリエイションをしている印象がある。本番に間に合わせるために稽古するんじゃなくて、ベースアップのために、理想に近づくためにやる稽古。しんどいが、刺激的である。

脚本の声を聴くということ

実は再演モノは今回が初。やってみて痛感するのが、脚本の声を聴くというステップの重要さ。書き上げて一ヶ月経ってない台本をやるのとは違う。客観的に脚本を読んで、何が必要で何が正解なのかを、耳を澄ませて聴き取る。自分の先入観で塗りつぶすんじゃなくて、脚本の声を聴き、そこからクリエイションをスタートさせる。自分の本だからってわかってると思っちゃいけないんだな。

全体的に、奇をてらった演出をするつもりは全くないんだが、それでもスタートの切り方はそれぞれまるで違う。実に微妙なバランス感覚が必要になる。例えば、稽古の始めで、「では、はじめます」と言って始めるのと、「よーし、じゃあやろうか」と言って始めるの、これだけでもまるで空気が違うわけだ。最初にアップをやるのか、会議や分析をやるのかでも現場の印象は違うし、舵取りは始まっている。今回は自分が一番勉強になりそうだ。

一番いいスタートを切れたのは『アムカ』だと思う。久々に、強引で、傲慢な演出がやれそうでわくわくしている。次に『息をひそめて』だろうか。きちんとタイムスケジュールを確認した上で、見通しを立てる。脚本がすでにあるからこそやれる、でも本当ならどの現場でもやらなきゃいけないこと。それをすごく冷静にやれるのは、嬉しい。逆に、『15分しかないの』はいいスタートとは言えなかった。出演者の意気込み、反省、分析は冴えていたが、それに比して自分のプランニングが甘かったことは否めない。少し焦って言葉遣いを急いでしまった。まだしっかり劇場空間がイメージし切れていない。あの劇場の面白さをしっかり引き出すこと、それも演出の仕事だ。

脚本の声をしっかり聴いて、劇場の声を聴いて、出演者の声を聴く。演出ってのは、それをやってからするもんだし、作品によってやり方がまるで違うということを、きちんと考えていきたい。

ってまだ三本しかスタート切ってないんですけど。七本、これは悪夢だな。いい夢見ろよ! おいしくって強くなる~