PLAYNOTE 舞城王太郎『阿修羅ガール』

2008年12月02日

舞城王太郎『阿修羅ガール』

[読書] 2008/12/02 00:19

気がつきゃ世の中あちこちで舞城・舞城・舞城、舞城=文学のメシア、猫も杓子も王太郎、みたいな流れだからさ、一冊買って読んでみたんだ。三島由紀夫賞を受賞したという本作。

さっき書いた『AMEBIC』もそうだが、本当に現代文学は読みやすいなぁ。

結論から書くと、なぜ今舞城王太郎か? 俺にはようわからんかった。

またしても女子校生の口語書き流し文体。もちろんきっちり構成されているし、むしろ巧妙な展開のさせ方をしてはいる、してはいるのだが…。

文体が、というよりこの、何か出来事が起きて、それを全部一人称であるところの私が解説・開陳・解釈しまくっちゃう作りに今ひとつのめり込めず。もちろん、何か出来事が起こって、それを解釈・解説している主人公がいて、そことそれを読んでいる僕らの間に文学は発生するのだが、いやいやいや、主人公がどう思った、どう解釈したかってとこがド親切過ぎて、バカにされてる気にすらなる。

中盤、金槌が出てきたあたりで急に流れが途切れ、意識不明の主人公が見た彼女なりの生と死の狭間のイメージに場面がシフトする。グッチ裕三がお父さんだったり、石原慎太郎と喧嘩して辺見えみりが助けてくれたりする奴に。そしてそれがまたしても途切れ、今度は文体もまるでおとぎ話か童話のそれにかわり、シャスティンという北欧あたりに住む少女のお話にチェンジする。

ここが違和感なのだ。グッチ裕三と行く三途の川のエピソードは、ひねり方としても今ひとつ面白くないし、別に艦名を受けるような文章の光沢や艶がない。意識的なトリックであるから当然だと思うのだけれど。続くシャスティンの物語は、これはかなり面白く読めたのだが、それを、その後、無事意識を取り戻した少女が自ら解説する! これはきっとこういう意味だったんだろう、あれはこういうことだったんだろう、私は本当はこういう欲望なり心根なりを持っていたんだろう、と。

そこを書かれちゃうと、もう僕は何を読んでいいんだかわからない。もちろん、前述した通り、そういう解釈なり解説なりをしている少女と、その思考と発言と周囲の情景を読んでいる僕との間に文学は発生し得るんだけど、それって「私、こう思うんだけどー」と自分なりのセカイ観を語る女の話に和民あたりで相槌を売っている僕と何ら変わらない。いいか、和民だぞ。和民でなきゃフレッシュネスバーガーだ。マックとまでは言わないが。スペシャルじゃないんだ。俺が受ける感情体験として、ちいとも特殊でもなければアピーリングでもアトラクティブでもスティミュレイティングでもないんだよ!

嫌いな作家ではない。きっと彼が感じてる悲しみだとか憤りだとか絶望だとかは、ずいぶんな勢いで共感できると思う。ぜひ一緒に和民かフレッシュネスバーガーに行きたい。

もっと、この人の、衝動的に書いた文章が読んでみたいな。併録の川と蛇の話は割と面白かった。あれでも親切過ぎてこちらの想像力が殺される思いがするくらいだ。もっと俺に呼吸をさせてくれ、文学の湖の底で! たっぷりと水をたたえた作家であることは間違いなかろうが、浮き輪とかシュノーケルとか酸素ボンベとか、親切過ぎる感じがした。

コメント

投稿者:terada (2008年12月02日 16:06)

お久しぶりです!
舞台を見に行かせていただいてぶりです。
なんと、阿修羅ガール、私は昨日読み終わったところで、谷君がちょうど読んでいたというのを今知って、驚いています!
説明が多くて、作者が表現したいそのまんまの絵は文字通り浮かぶのだけれど、自分の想像が広がらなくて物足りない感じがしました。行間って大事だし、行間から想像を掻き立てる小説を書くっていうのは本当に難しいものなんだなぁっと改めて思いました。


投稿者:Kenichi Tani (2008年12月02日 21:26)

わぁ、そりゃ奇遇だね。感想もほぼ同じって言う笑。でも今人気ありますよね。ハズレひいちゃったかなーとも思うので、またしばらく時間置いて一作二作読んでみようかなと思ってます。コメントどうもありがとう!

投稿者:小櫃川桃郎太 (2008年12月05日 20:35)

ああ、この本、7~8年前に本屋で店員さんの手書きで「とにかく、最初の10ページ(だったか?)を読んでみてください!!」って書いてあったので、立ち読みした事ありました。懐かしい。
それ以上読むことはなかったけど。

演劇でもそうだけど、親切すぎる文体・説明だらけの文体ってのは、読む(観る)側の想像力を狭めてしまうので、書き手の想像を超える事はないのではないかなあ?

テレビ番組の画面下に出てくる文字も、同じ事でしょうね。

投稿者:Kenichi Tani (2008年12月06日 12:12)

もちろんそうですね。とはいえもちろん、下手な作家さんではないと思うので、その辺には気づいていて意図的にやっているんでは、などと勘繰ってしまいます。

七八年前にももうあったんだなー。だとしたら確かにちょっと新しく感じるかもですね。