PLAYNOTE 世田谷シルク『接触』

2008年11月17日

世田谷シルク『接触』

[演劇レビュー] 2008/11/17 01:30

堀越涼くんが出ているので観に行った。堀川炎さんとの二人芝居。渋谷ルデコ4Fにて。

衝撃的に面白い。

堀越涼の怪優っぷりがぎゅんぎゅん出ていてたまらない。
「こいつは色々ウラのある男だな」
というのは初見からずっと気づいていたが、ここまで引き出しが多いとは思わなかった。歌舞伎風あり、現代口語演劇風あり、柿喰う客テイストあり、落語あり、アングラ的なアウラあり。芸がある俳優であり、腕がある俳優。

それに対峙する堀川炎嬢も見事。僕は彼女のことは以前競泳水着でお見かけしただけだったので、よく存知あげなかったのだが、こんな魔獣のような女優だとは思わなかった。

内容もすごい。近松門左衛門の『けいせい半魂香』の翻案が一応全体の大きな流れなのだが、その間に唖の画家と編集者のエピソードが重なり、さらに何本か通り雨のような短編・寸劇・落語が混ざる。近松と競泳水着と柿喰う客と落語が同居しているわけで、カオスもいいとこ。

だがすげぇなぁと思うのは、どれも洒落やノリでやっちゃいましたー☆みたいな感じではなく、それぞれの表現としての力や独自性を理解した上で租借して表現を創っているところ。僕は勝手に演劇偏差値という言葉を発明してあれこれの人の能力をスカウターで図っているのだが、歌舞伎から落語までカバーするこの公演の演劇偏差値はあまりに高い。演劇偏差値は高ければ高いほど自由になれるのが常なのだが、彼女たちは賢く意欲的である上にバカなので、さらに輪をかけて自由である。それは脚本と演出に顕著であったが、演者の実力と腕力が伴って、ひどく面白かった。

これくらいできないと俳優と名乗っちゃいけない気がするし、逆に言えば、きっちり俳優の仕事を観れた気がして、すごく満足な公演でした。

ひとつ残念なのは、挿話的な短編・寸劇・落語のクオリティが高かったのに対して、本筋であるはずの『けいせい反魂香』のエピソードが埋もれて見えてしまっていた点。欲張り過ぎているのがこの公演のいいところだが、反面、やや主筋が浅かったと思う。映像や見立てを用いた演出はスリリングで面白かったし、まさかMAXの♪TORA・TORA・TORAやGO!GO!7188カバーの『恋のフーガ』まで使うとは思わなかったが、その辺もきちんと構成されていて確かに面白かった、面白かったのだが、俳優二人の声と身体でもっとぞっとする瞬間が描けたように思う。結構ね、お客さんのことを気遣ってポップにしてくれていたんだろうけれど、少し近づき過ぎていたような、そんなインプレッション。

だが全体としてはとにかく楽しめた。終演後、涼くんにもちらと喋ったのだが、演じ手が極限まで演劇を楽しんでいるのが良い。よく「演ってる本人が楽しくないと、お客さんも楽しくない」みたいな浅俗な発想を、あたかも芸事の真理や哲学でも発見したかのように得意満面言っている奴がいて、俺はその度に心の中で小さく「バカ、だまれ」と思っているんだが、今回の公演に関しては、演劇を骨の髄まで楽しみつくすようなところがあって、だからこちらも楽しいのだ。オタクと言っていいしゃぶり尽くしっぷりである。それに、肉体が極限まで酷使されていて、動物園に来ているような気持ちにもなれた。とにかく演劇的に言って面白い要素の多く詰まった舞台であった。