PLAYNOTE 横浜未来演劇人シアター『市電うどん・特盛版』

2008年11月04日

横浜未来演劇人シアター『市電うどん・特盛版』

[演劇レビュー] 2008/11/04 01:12

8月に上演されたMrs.fictions主催公演『15 minutes maid』で飛び抜けて素晴らしかったので、思わずその場で次回公演のチケットを買った横浜未来演劇人シアターの『市電うどん・特盛版』を観て来た。以下すべてメモ。

こんなプレスリリースがあったよ。

総勢80名のダンス!火花散る生演奏!「ハマのメリー伝説」再び!

「横浜未来演劇人シアター」は、平成18年度から始まった、演劇界の登竜門的プロジェクトです。プロを目指す新進舞台芸術家を発掘し、一流の演劇人の指導のもと、横浜発の舞台芸術家を育成すること、また、制作過程を公開しながら公演を行い、人材と質の高い演劇を横浜から発信することを目的としています。

演目「市電うどん」は、昨年度初めて演じられた群舞と生演奏を交えた舞台です。3日間の公演は口コミで広がり大盛況のうちに幕を閉じました。

今回は「特盛版」として、総勢80名によるダンスなど、昨年度以上に壮観な舞台を作り上げます。

横浜の街に実在したと言う名物ばあさん・「ハマのメリー」を題材にした、演劇:ダンス比=2:8くらいの舞台。

主演・石丸だいこ様の存在感と気配・空気の張り詰め方が凄まじい過ぎる。一挙手一投足が、指先まで気が張り詰めて、生気が漲っていて、たまらん。あともう一人、最後のダンスで石丸だいこ様のすぐ隣(上手側)で踊っていたおかっぱ頭のガールも大変素晴らしかった。

この二人は特に目の飛び方が半端じゃなくて、ギョロギョロとひん剥いた目力とかではなく、瞳孔や焦点がおかしなことになっているようであった。おそらく宇宙(Universe)とコンタクトしているのだろう。

出演者が総勢80名近い人数だったそうなのだが、その群舞が凄まじい迫力と美しさ。振り付けは、一見難しそうでも何でもない、シンプルな動作を組み合わせたものなのだが、魔法のかかった俳優たちがそれを踊ると、客席にも魔法がかかって、急に会場の空気の密度が張り詰める。芸術品である。振り付けも主演の石丸だいこ様がやっているようなのだが、どういう出自の方なんだろう。元少年王者館というくらいしか知らないんだが、どこからともなく溢れ出す暗黒舞踏やアングラな匂いと手触り。コンテンポラリーとオシャレに言うより、BUTOHと言いたい、そんな透き通った張り詰めた空気。

ダンスが始まる瞬間、それまでのストーリーやイメージを脳裏に引きずりながら、急にグンと舞台に脳髄の意識を引っ張られる。正直言って、俳優の肉体だけでここまで表現されてしまったら、劇作家・演出家としては絶望したくなる。そこまで叩き上げるのが演出家だろう、とトーシローは言うかもしれないが、ありゃ土台が違うよ。ああいうモンスターと一度仕事をしてみたいものだ。

たぶん僕が気になった女優の名は、雪港(ゆきこう)嬢or水元汽色(みもときいろ)嬢ではないかと思うのだが、確証が全くない。いずれも少年王者館所属の俳優さんなので観に行きゃいいんだが、名古屋までは行けないしなぁ。東京にいたら必ず次回公演観に行ったろうに。

テントでの上演だったんだが、とにかくテントの使い方を心得過ぎていて、当然背景幕はぶっ飛ぶし、宙吊りはあるし、奥行きや広さをきちんきちんとシーンごとに使っていて、空間の表情をめくるめく変えていくし、俳優の身体が持つアウラは背骨の曲がった現代口語演劇崩れとはまるで違う次元。アングラの遺産はきちんと評価し直すべきだと思うんだ。ハイバイの岩井さんとカナリア派のムックさんはどうやら個人的に交友もあるようだし、岩井さんがアングラ芝居やって、ムックさんが現代口語演劇をやるって言うのはどうだろう。そういうだけの話でもないんだが、とにかく、ああいう圧倒的な・特権的な肉体力、俳優力、表現圧力、アウラ、そんなものを、もっときちんと現代演劇で見たいんだ。センスよく。