PLAYNOTE 劇団競泳水着『真剣恋愛』

2008年08月30日

劇団競泳水着『真剣恋愛』

[演劇レビュー] 2008/08/30 12:38

DULL-COLORED POP所属の清水那保、DULL-COLORED POPに過去数え切れないほど出ている菅野貴夫、DULL-COLORED POPに三回も出演している和知龍範が出演していた&主宰の上野さんとも4x1hなどでご一緒して知らぬ仲ではないので観に行った。王子小劇場にて。

ついこないだ柿喰う客を見たとき、あらためて中屋敷くんがアフタートークで柿喰う客の演劇スタイルの根幹である「妄想エンターテイメント」という言葉を強調していたが、競泳水着もある意味では「妄想エンターテイメント」であるなぁ、というのが真っ先な感想。トレンディドラマシリーズと銘打った裏には、当然キャッチーでユニークな煽りをつけることによるマーケティング的な意味での策略もあるのだろうが、語られている言葉や描かれている人物像を見る限り、単に「ウケそうだしよくね?」みたいな軽薄さはない。むしろ、マジでこの作家は恋愛問題を真剣問題として描いている。上野氏の中にある恋愛妄想の数々が台詞と行動に描かれており、ある意味柿喰う客とタメをはるほど凄絶な妄想濃度を感じる。恋愛だけを語る二時間芝居を描く。並大抵のことではない。

高校の保健室と芸能界の舞台裏、この一見何の接点もない二つの世界が、割と実際に接点のないままに物語は進んでいくが、不思議と断絶感は感じない。むしろ、いずれのチームも追い詰められた恋愛模様の中で足掻いている、賢いはずなんだけど愛すべき馬鹿なキャラクターたちを扱っているので、割と実直に「恋愛」というキーワードを通して劇全体を俯瞰できる。

ワンシーンが短ければ3~5分程度、長くても10分程度で、次々と入れ替わり立ち代り別のシーンが演じられていく構成。演劇というより映画のカットバックに近い手法だが、考える間もなく次のシーンが現れて、すぐさまキュンキュン胸キュンな展開が始まるので、客席にいて退屈することはない、むしろ、え、俺今割と「恋愛」について真剣に考えてね? みたいな瞬間があって、まんまとハメられた感すらある。シーンの併置の仕方も上手いが、日常会話も丁寧に描いてあるし、キメの台詞やシーンをきちんと描いており、バランスがいい。恋愛を描いた演劇としては実によく出来ていると素直に思うし、練られた言葉や研ぎ澄まされた言葉がそこここにある点もさすがである。上野さんのことをこれからは恋愛博士と呼ぼう。

前半~中盤が演出的にも脚本的にもかなり一本調子であり、やや退屈したのは残念。あそこら辺の間は詰めていくようだから、今頃は解決されているかもしれないが。あとは、中心にいた数名を除く人物がかなりマージナル(余白として)描かれており、これだけの大人数を出す必要があったのか、という点には疑問が残る。

ある事情により当日パンフレットを入手することができなかったので、お名前がわからないのだが、女子アナの役をやっていた方と、モバブルーをやっていた方の演技が特に秀逸・白眉であった。そのキャラクターの、台詞に描かれていない部分の性格や過去までが言葉と身体から滲み出るようで、どちらも丁寧だが熱量を感じるいい芝居をしていらした。いい役者さんだ。保健室の先生役の方も、物憂げですこしひねくれた雰囲気を持つ人物像のオーラをもりもりと発散しており、ともすればムカついちゃいそうな人物像を同情を誘うくらいに哀れにはかなげに演じていた点には好感が持てた。