PLAYNOTE 『若草』修了

2008年05月11日

『若草』修了

[公演活動] 2008/05/11 01:43

多忙の上に多忙を極め、疲労の底に疲労を堆積しているので、非常にざっくりした形ではあるが、ミュージカル『若草物語』を振り返っておこうと思う。

思えば初挑戦ミュージカルであったが、途中から何か気負いが随分減った。それは、突然歌う不自然さを消そう、とかってんじゃなくて、歌も含めて一本の芝居にする、という単純な視点の変換ができたからだろう。

今回、演出するにあたって特に口うるさく言っていたのが、「呼吸をしろ」「台詞がないときこそ存在していろ」ということだった。ぶっちゃけ、これは演技・芝居の基本の基本であるように思うし、できて当然、さぁそこからだ、みたいなスタートラインだと思うのだが、二兎を追うものは一兎をも得ず、ここを徹底するのに随分と時間がかかった。

前々から辺だなぁと思っていたのが、誰かが歌いだすと周囲が突然口パクのサイレント映画になって、演劇病的過大表情表現にのみ頼り出し、よくわからんアッパーなエナジーを放出しながらニコニコしたりゲロゲロ落ち込んだりし始めるとこだった。なので、ひたすら歌の最中「喋れ、喋れ」「呼吸しろ、息を吐け」と言い続けておった。やってみるとうまくいくんだが、ほっておくとすぐ口パクサイレントの演劇病が発生する。習慣とは恐ろしいものである。

「演技指導」ではなく「演出」に関しては取り立てて真新しいことはやっていない。当初のプランにあった映像を使って現代の何でもないカップルとクロスオーバーさせたり、演出換えのバージョンによってオケを変えたり、カットする位地を変えることで戯曲の見え方をごっそり変化させてみたり、ということが、製作現場での余裕のなさに押されて実現できなかったことは残念だ。そういう意味では、今回の現場での自分の仕事は、翻訳二割、演出二割、演技指導六割ってとこだったように思う。

翻訳に関しては某友人M氏から割と手痛いダメ出しを頂いたりもしたが、概ね好評で、『プルーフ/翻訳』に引き続き、まともな会話調にできていたと思う。自分で言うのも何だが、割といい訳だよ、あれ。しのぶちゃんや高小野エイミーちゃんにえらい誉めてもらったが、翻訳って地味な割に結構大変な作業だから(ただ訳すだけならあっという間だろうが、単語の裏の意味や地名・固有名詞が当時持っていた意味まで考え出すと時間がいくらあっても足りない)、もうちょっと注目浴びたかったな。

努力家にしてムードメーカーだった影山くんから「谷さん、好きなことの間口が広いから(=演出家として何でも屋だから)、割とミュージカル向いてると思いますよ」と言われたが、話があればまた是非やりたいとは思う。ただ、次はこの二倍の準備期間と安定した製作環境が欲しい。一度やった以上、もう「いい経験」では済まされないし、一度目の今回も十分人様にお見せできるレベルには仕上がっていたと思うが、次にやるとしたら革新的なものにしなきゃやる意味がない。

俳優もお手伝いスタッフもバタバタする中、えらい助けて頂いたブカン酒井氏、照明保坂氏、音響雅様には感謝の言葉が尽きない。特に酒井さんはあのペースで熱量を放出しながら仕事を続けていると二十代が終わる頃には総白髪になっているだろうから、少し休めと優しく伝えたい。照明保坂氏は妙に話していて楽しくいじり甲斐のある人であった。ミュージカル慣れしており、自身も演出をしているだけあって、小屋入り後は演出のセカンドオピニオンとしてあれこれご相談に乗って頂いた。音響雅様はあれこれ無理を通して道理を引っ込ませてお付き合い頂いたことがわんさかあるので、そのうち闇討ちされないようにこれからは夜道に気をつけて歩こうと思う。

最後に役者についてだが、主演の二人、若林・諸星に関しては実にユニークなキャスティングができてよかった。若林くんは当初随分とまごついていたが、途中で俺のルールを飲み込んでからは頭空っぽにしてやわらかキノコのようなスタンスでぶつかっていってくれたから、はちみつに関しては結構ジョー頼りの演出ができたのは嬉しい。勝手に「若林力」と呼んでいたが、あれがなければAstonishingもFireももっとゴテゴテと何かを付け加えなければならなかっただろう。俳優力がきちんとあれば、余計な演出は要らない。諸星に関しては最後の最後まで苦しめられっ放しだったが、強く抜ける歌唱力と立ち姿の良さは持ち前の良さだし、あの独特の影のある風貌・雰囲気は演出プランにおいてあれこれ想像力を触発された。ピアノが得意なベス・ファンキーを獲得していたことによって、Fireのシーンでは思い出ぽろぽろ幻想の中での再会という実に美しいシーンが出来たし、ラストの傘のシーンも俺が考えたというより俳優を見ていたら思いついた、という意味で、やったら時間のかかる諸星との稽古を通して出て来た着想には面白いものが多かった。次はもうちょっと器用で身軽になった彼女が観たい。

主演二人以外について書き出すと膨大になるのでそこそこで止めておくが、歌も芝居も突出していた佐野は逆にもったいないくらいの印象。演技者という意味ではまだ伸び白もあるだろうが、歌い手・パフォーマーとしてはもう俺の手に負えないので今後の成長と活躍を楽しみにするのみ。斎藤ベア氏は実にユニークでかつ誠実な俳優さんで、風貌もいいし声もいいから次はDCPOPで力を貸して頂ければ。瀬戸ローレンス氏は寡黙そうに見えてとんでもない馬鹿であり、しかし脳裏ではきちんと俳優としてのスイッチを持ち、責任感のある仕事をしていた点を大変尊敬している。立場的には自分の大先輩なのだが、それでも演出を汲もうとしてあれこれ努力してくれた点に感謝。影山くんとはまたいつか意味なくアツい演劇トークをしたいし、どこかの現場でご一緒できればいいな。いや、どこかの現場で一緒にやれれば、ってのは誰もしもがそうなのだが、彼の場合は一緒にやっていてこちらが励まされると言うか、プラスのオーラ、エネルギーを受け取るような感覚があるので、そういう意味でってことね。

最後の最後になったが、今回やはり一番一緒にやっていて楽しかったのは伊藤くんだな。堀口や新戸と並んで、対等以上に才能と努力と熱意を持っている人間に出会った気がする。久々だった。彼とは今後もじっくり付き合っていきたいし、どっかで必ず一緒に仕事をしたい。いい男であった。天晴れ。

JMSの今後については俺が口出すことではないが、しのぶちゃんが指摘していた点は結構重要な問題点だよなぁと思う。来年は吉祥寺シアターらしいが、いい俳優集めないと単なるノルマ消化劇団にしかならないし、しかしいい俳優集めるには餌がいる。自分が関与した団体として、また朝倉くんの旧知の友人としては、真剣に発展を祈願しているが、他になかなか例を見ない団体であることからもわかるように、興行形態として運営が難しそうである。そりゃあ役者30人くらい出せば吉祥寺だろうがモリエールだろうがMOMOだろうが埋まるだろうが、そうではない新機軸が打ち出せるといいなー。

最後にもう一つ。ミュージカルが嫌いだ嫌いだとあちこちに書いていたが、半分はリップサービスで、しかもこうして愉快で充実した公演を終えた後だと感情が随分変わった。今、はっきり思うのは、「芝居の下手なミュージカルは嫌い」ってことだと思う。まぁ歌もだが。キャラメルみたいな芝居してりゃ、どんなミュージカルだって気持ち悪くなるよね。ミュージカルがキモい理由の大半は、演技をおろそかにしているから、……演技というよりは、そこに存在するということをおろそかにしているから、わかる嘘を堂々とついているから、ではないかしらん、とか考える最近でした。

コメント

投稿者:むらい (2008年05月11日 05:49)

お疲れ様でした。
そして御生誕日オメデトウございます。

そっか、和訳もやってたんだよね。忘れてた。
忘れるくらい自然で素敵な和訳でした。

6月期待してます。
おやすみなさい。

投稿者:まさきっく (2008年05月11日 09:43)

はぴばすで。

投稿者:しのぶ (2008年05月11日 13:36)

しのぶ「ちゃん」てどうよ?
お疲れさまでした~♪

投稿者:Kenichi Tani (2008年05月11日 13:38)

>むらい
お誕生日ありがとうございます。
訳とか演出とかってのは、忘れられる(意識されない)のが一番素敵な形なんだろうけどねぇ。
お褒めありがおつ。

>まさきっく
アリガト。

>しのぶ
「ちゃん」はマイブームです。単に。ご来場ありがとうございました~。