PLAYNOTE ジェシカ・ユー監督『非現実の王国で ヘンリー・ダーガーの謎』

2008年04月09日

ジェシカ・ユー監督『非現実の王国で ヘンリー・ダーガーの謎』

[映画・美術など] 2008/04/09 03:13

今年の一月くらいにチラシを見つけてからずっと観たかった映画。ダーガー作品は前からチェックしていたのだが、さすがにインターネットのちまちました画像で見るのと、スクリーンで踊るそれを目の前で観るのとでは断然違うな。映画としては割とうんこだと思うのだが、ダーガーのサイコな世界が臨場感たっぷりに体験できたって意味で、実に満足できる映画体験。渋谷シネマライズにて。

ヘンリー・ダーガーとは、アメリカの孤高のアウトサイダーアーティスト、とか紹介されることが多いけど、一言で言えば完全に頭の狂った変態男。もう一度書くよ。完全に頭の狂った変態男だ。ここで言う『頭の狂った』とは、別にDSM-IVとか臨床心理の言葉の意味で「気が狂った」ではなく、賛辞としての『気が狂った』である。

ダーガーは、50年以上掃除夫をやりながら、一人の友人も作らず、誰とも口を聞かず、ただ黙々と自宅と職場を往復するだけの人生を送っていた。そして、誰に見せるわけでもなく、1万5000ページを超える小説と、数百枚の巨大な絵を残した。そのどれもが、「ヴィヴィアン・ガールズ」というちんちんの生えた幼女七人が、グランデリニア帝国の奴隷的支配に反抗して立ち向かい、結果、ぎったんぎったんに虐待にあったり、大の大人をぐっちゃぐちゃにやっつけたりする話。パーフェクトな気違いである。

が、しかし、その絵が俺の心を揺さぶる。サイケデリックな色使いと完全に自由な空想世界の展開が、他に類を見ない独自の幻想世界を形作っている。ある意味でこれは、『指輪物語』と肩を並べ得る20世紀最大のファンタジーとすら言えるだろう。

気になる人は『Henry Darger』でググってみるといいよ。とんちきな絵がたくさん出て来て、あぁ、自分は何て抑圧されたちっぽけな人間だったのだろうって気づくよ。俺も彼のように自由に書きたい。

映画は、構成も中心もピンぼけで、はっきり言っていい出来とは言えないが、ダーガーの絵がふわふわ動き、ダコタ・ファニングが甘いボイスで絶望的な文章を淡々と読み上げるコントラストが加わり、最高にイイ。出来は悪いが、ある意味最高の映画である。