PLAYNOTE 親父の手術

2008年02月08日

親父の手術

[雑記・メモ] 2008/02/08 07:15

今年で59になるうちの父親は、

  • ヘビースモーカー歴40年
  • 辛党深酒歴40年
  • 高血圧(上が170とか言ってた)
  • コレステロール・中性脂肪だらけ(むちゃくちゃ痩せてるのだが、そういうのはあんまり関係ないらしい)

と、心筋梗塞スタンバイオッケー、いつでも逝けます、みたいな感じの体質をしているのだが、ついに冠動脈狭窄症という病気にかかって入院した。

で、昨日、手術には付き添おうと思い病院まで行って来た。18時から稽古があるから、それまでには出なきゃならない。

柏の市立病院。自分が以前、気胸で3度も入院した場所だ。よく覚えている風景と、匂いと、人の顔。そうそう、と、思い出した。高齢者の入院が多いので、廊下を歩くだけでかなり気が滅入る。人々の顔が疲れている、しかも、昨日今日の肉体疲労というものではなく、80年分の人生に疲れた顔をしている。以前自分が入院していたときは、夜中になると「殺してくれ」と叫ぶ老女が入院していた。見舞いに来た孫にまで「殺してくれ」と言っているのを聞き、酷い気分になった記憶がある。理解はできる。共感はできない。柏市立病院、ロビーまでは懐かしく暖かい気持ちがするが、病棟の廊下からは、嫌いな場所である。

(この辺の病院に対する思いが、ベツレヘム精神病院という芝居に繋がったのだな)

病院着をつけた親父はぐっと老け込んで見える。見た感じだけでなく、実際さすがに不安なようだ。

親父とお袋から手術の説明を聞く。右腕の動脈から細いワイヤーと風船と筒状の網を入れ、ゆっくりと奥へ奥へ差し込み、動脈に直結している冠動脈まで到達させる。そこで風船を膨らませ、筒状の網を広げて固定し、細くなっている冠動脈を治療する、というのだ。ややこしい。しばらく理解できなかった。

成功率95%以上とは言え、何とも背筋が寒くなる術式である。自分も入院と手術の経験があるから、この不安はよくわかる。大丈夫大丈夫、安全な手術だから、とは言っても、「まさか」や「万が一」を考えてしまうのが人間である。以前どこかで、恐怖とは想像力の量に比例する、というようなことを読んだ。確かにそうだ。恐怖とは、未だ来ていない何事かを想像して身がすくむ、という、実に阿呆らしいメカニズムをしている。想像力。親父は強がっているが、実に不安そうである。

そして自分も不安であった。看護婦さんに「手術中は病室か談話室にいて下さい」と言われたが、なかなか思い切れずに廊下にへばりついていた。普段から想像力を鍛えている自分である。「まさか」と「万が一」にまみれて大いに恐怖し、隣にいるお袋を和ませるためにへらへらする。自分が長男なのだなということを認識した。

「まさか」も「万が一」もなく手術は無事終了した。親父は気丈過ぎるほど気丈で、急に覇気を得て鬱陶しいくらいであった。尿道のカテーテルを早く抜いて欲しいと言うし、自分で歩けると言ってスタスタ歩いていってしまうし、夕食まだか・ハラヘッタと言うし、面倒臭い親父である。病人らしくしておれ、事実病人なのだから。

自分は先週から煙草を止めた。親父はもう煙草を吸えない。それに付き合おうという腹積もりである。だが親父は手術が終わるなり「一仕事終わったから一服したいなぁ」などとほざいていた。老いを自覚もするが、肯定もできないのだろう。ライフスタイルや信念を変えるくらいなら貧乏くじを引く方がマシだ、というような考え方をする男である。煙草の話ではなく、事実親父はそういう格好はいいが損をする発想で、本社の部長および子会社の何かわからんが高い地位にまで上り詰めていた会社をあっさり辞めた。50歳くらいのときである。そういうところは、やるな親父、それでいいバッキャローと思うが、煙草は止めて欲しい。

コメント

投稿者:小窓 (2008年02月10日 02:59)

はじめまして。時おり、ブログ拝見しております。
演劇(ライブ)の事はあまり詳しくありませんが、かつて1年半ほど「シナリオスクール(映像)」に通っていました。
私は谷さんより大分年上・おばさんとお姉さんの間(←しかも自己申告)なので、「ほぉー、最近の若い方は…」などと刺激を頂いているわけです。

ところで、お父様、順調に回復されといるようで何よりです。でも、ご家族は心配ですよね。
なぜ、いつも「読み逃げ」させてもらっているところ、コメント差し上げているか、、
実は私の父が58歳で亡くなったからです。私が30歳の時ですので、もう随分月日が経ちました。
けれども、(おそらく美化しているとは思いますが)忘れられない。肉親であるから。そして純粋で、かつ理性的な人だった。そう、私はただもっと長く生きて欲しかっただけなのです。

長くなってすいません。お父様、お大事に。
お芝居もご成功を願っております。

投稿者:Kenichi Tani (2008年02月10日 21:58)

メッセージありがとうございます!いつも読んで頂いているんですね、嬉しいなぁ。友人・知人でない方の読者は本当に嬉しい・ありがたいです。

58歳で…。お気の毒なことです。僕も、今回の一件で両親の未来を割とリアルに想像してしまい、背筋がぞっとしました。意識を改めるのはいいことだと思うのですが、それでも嫌な想像ですね。

今後ともよろしくご愛顧お願い致します。よかったら本職の劇作・戯曲の方もご覧になって頂きたいです。何かコメント・ダメ出し頂ければ幸いです。