PLAYNOTE サンドイッチマンの善意

2008年02月08日

サンドイッチマンの善意

[雑記・メモ] 2008/02/08 07:10

もう一週間以上前に書いた文章だが、mixiにしか貼ってなかったのでこちらにも貼っておく。

ふつーの柏市民と一緒に演劇作るプロジェクト、CoTiKでの話です。

とても単純な話です。今日、落涙しそうになるくらい、感動しました。

PM3:00。いつものように疲れを引きずりながら街を歩き、柏市民活動センターに辿り着く。製版機やパソコン、ロッカーなどが無料で使用できる、行政が作った市民活動の支援施設で、俺はここのヘビーユーザーである。職員とも仲がいい。

行政などへの公演招待状を作成するためパソコンをいじっていると、職員が俺に話し掛ける。

「CoTiK頑張ってるね。サンドイッチマン見たよ」

え? サンドイッチマン? M1グランプリの話?

「いやいや、駅前でね、チラシ配ってたよ」

何かの勘違いだろうと思い、でっかいクエスチョンマークを感じながらも、いい加減に調子を合わせて市民活動センターを去った。疲れていたのだ。何故俺だけこんなに仕事をしなければならないのだ。演出がやる仕事じゃないだろう。みんな俺にもっと感謝しろよ。誰かこの重荷を肩代わりしてくれないか。センターを去る間際も、疲れていたので、愛想よく笑った。

その後、柏市内を方々歩き回り、あちこちに頭を下げつつポスターやら招待券やらチラシやらを撒いて、休む間もなく稽古場へ。煙草を一本ふかして、意識を切り替える。よし、ここからが俺の本職だ。きっちり演出の仕事をやろう。これは、俺の仕事だ。まだ台詞の入らない出演者に苛々しながらも、最善の打開策を探し、一緒にもがく。もどかしい。

三時間の稽古が終わり、帰り道、ロミオ君がやにわに携帯を取り出し、一枚の画像を見せてくれた。今日の七時頃、柏駅で撮ったものだと言う。見れば、うすぼんやりブレた写真に、確かにサンドイッチマンが映っている。体の前後にCoTiKのポスターを貼った看板をぶら提げ、どうやらチラシを配っている様子だ。え?

話を聞けばこうだ。ロミオ君が仕事を終え、稽古場へ向かおうと柏駅の改札をくぐったら、CoTiK出演者のTさんがチラシ束を抱えながらサンドイッチマンをやっていた。Tさんとは今年で70歳になる、CoTiK最年長の男性である。見れば、女子高生や若者など、冷たい手にも億劫がらず、一心にチラシを配っている。

俺は耳を疑った。そんなはずはない、俺はTさんにそんなこと頼んでいないし、制作の川崎さんも知らなかった。誰一人彼にそんなこと頼んでいないのに、何故?

ロミオ君が事情を聞くと、Tさんはこう答えたと言う。

「いやぁ~、いっつも、皆様のお荷物で申し訳ないもんですから、
 こうして少しでもお手伝いできればと、やっております。
 あぁ、写真はどうか勘弁して下さい。こっそりとやっていますから」

PM3:00に俺が話した市民活動センターの職員が見掛けていたということは、少なく見積もっても4時間以上はその格好でチラシを撒き続けていたことになる。誰から強いられたわけでもなく、純粋な善意、完全なボランティアでだ。しかも、その労を人に誇るでもなく、「みんなには黙っていてくれ」と言ったという。

目の奥が熱くなるのを感じながら、俺は自分の幼さを恥じた。だが俺が感じていたのは自省だの羞恥だのではなく、まっさらな感動と敬意であったように思う。

確かにTさんは台詞が飛ぶこともあるし、器用な演技者とは言えないが、だが稽古場での姿勢は誰よりも真摯だ。逐一すべてメモを取り、台本は二種類用意している。ノーマルな台本と、暗記用に用意した自分の台詞を消した特製台本。いつも稽古の合間に「代表!」と俺に声をかけ、俺の労をねぎらい、俺を称えてくれている。その度に俺は謙遜しつつも、裏でこっそり「まんざらでもねぇな」という気がしていた。たまには持ち上げられるのも悪くない。そして、そういう俗悪な自意識を、俺はそれほど軽蔑していなかった。だって世の中、俗悪で薄っぺらくて、口だけ達者で臆病で、外面ばかり飾るような連中ばかり溢れているじゃん。評価されない善意なんか、口では皆あーのこーの言うが、意味ないことくらいわかっているだろ?

そういう実利的だが実に浅俗な発想を、根元からびゅんと吹き飛ばすような衝撃を感じた。演劇やっててよかった。御年70歳。学ばせて頂きました。

素晴らしい人が、たくさん出ています。柏ロミジュリ、是非ご来場下さい。

★2/15(金)~17(日) 戸部さん出演・柏市民劇場CoTiK『ロミオとジュリエット』
 予約受付中 → http://www.cotik.org/category/8