PLAYNOTE ジェットラグ『投げられやす~い石』

2008年01月26日

ジェットラグ『投げられやす~い石』

[演劇レビュー] 2008/01/26 02:28

ハイバイ主宰・岩井秀人氏が作・演出というので観に行った。と思ったら出演もしていた。そして、その演技にノックアウトされた。新宿ゴールデン街劇場にて。

あらすじをちょろっと書く。冒頭、ある展覧会の待合室という設定。若き天才画家と、そいつに応援されて金魚の糞的に注目されたパッとしない男、あと画家の彼女が登場。この展覧会を最後に画家は失踪する。時間が経過し、パッとしない男は浮浪者のようになり頭髪が脱毛しまくったボロボロの画家と再会。画家は、バイトばっかして絵を描かないパッとしない男と、パッとしない男とくっついた頭の弱そうな彼女に憤慨したり、セックスしたいと言ったりする。

写真をめくり、ベンチや小道具を移動しての場面転換は実にハイバイっぽい岩井演出。

もう小劇場はハイバイだけ観ておけばいいのではないか、いや、岩井秀人さえ観ておけばいいのではと思うほどのクオリティと狂気であった。しこたま笑い、そして胸が締め付けられた良作。

岩井氏演じる佐藤だか山田だかいう役の描写が物凄かった。必死な人間は冷静に見てみると超面白い。テンパってる人間は冷静に見てみると超面白い。怯えている人間、背伸びしている人間、強がっている人間、強情を張る人間、弱みに付け入ろうとする人間、超面白い。

構造をちょっと一歩引いてみてみると、あるあるネタなんだ、とはたと気づく。あるあるネタと言うと実に俗っぽいが、よくあるお笑いのあるあるネタとは違い、「あぁ、こういうとき、こういう表情する」「こういう噛み方する」「こういうへこみ方する」「こういうへどもどした挨拶する」という、人間の滑稽さのショウ・ケースという意味でのあるあるネタ。人間観察力が半端じゃないし、それを再現する演技力も飛び抜けている。戯画化と模写の按配が実にセンスが良い。

わけがわからなくなったテンションの中、二人の男が「命!」「いや、お前の命は命じゃない!」とやりとりをするシーンが白眉であった。滑稽極まりないのだが、才能はあるが余命わずかな画家が、命はあるのに筆をとろうとしない自分の友人へ嫉妬とお節介と友情と期待が入り混じったような感情でシャウトする「命!」という意味不明な言葉。笑った後できゅんと来た。

作・演出をこなし、役者としてもあれほどの存在感と技量と狂気を見せ付けられては、岩井秀人という男の前にただ平伏すばかりである。超面白かった。