2008年01月20日
夏目漱石『夢十夜 他二篇』
内容(「BOOK」データベースより)
漱石には小品とよばれる一群の短篇がある。小品とはいうがその存在は大きく、戦後の漱石論は『夢十夜』の読み直しから始まったとさえ言われる。ここには荒涼たる孤独に生きた漱石の最暗部が濃密に形象化されている。
『夢十夜』『文長』『永日小品』の三作を収録。三作、と言っても、『夢十夜』は短編×10みたいな作品だし、『永日小品』も2.5ページ分くらいの短編をぎっしり詰めたものだから、さしづめ夏目漱石短編集と言ったところ。
まず『夢十夜』は文句なしに面白い。以前、ちょいと機会があって読み込んだことがあったが、こんなに薄気味が悪く夢幻的で主観的な小説を漱石が書いていたのかとえらく驚いた覚えがある。「夢」ってさぁ、スポンジみたいにぐにゃぐにゃ曲がってじゅうじゅう吸い込んで、理屈や道理のついてくる間もなく自分をぐいぐい牽引していくじゃない。そういう感じがよく文章化されていて、実に怖い。面白い。文章に色気があるから、くだらんウェブの走り書きと違って十分に読み応えもある。
『文長』は漱石の私生活を知る上では非常に興味深い一品。凄まじく地味なのだが、これがなかなかどうして笑えるから不思議だ。漱石をはじめとする登場人物の首尾一貫しない言動や自分勝手、淡白なところなどが急にぐっと笑いを誘う。面白かった。
『永日小品』は、はっきり言って素人にはオススメできない。ぶっちゃけて言うと、大して面白くなかった。どれもこれも漱石その人となりを知る上では興味深くはあるのだが、何だか物語としての完結性を放棄したような、殴り書きのようなところがあって、習作めいた匂いがあって、メモっぽい感じがして、……今で言えばブログっぽい感じがして、一品一品のパンチやフックが非常に弱い。が、その分、妙に色気があるというか、空気・雰囲気のある得体の知れない深みのあるものもあったりして、目が離せなくはあるのだが、あんまり入門者向けではないだろうな。例の猫の吾輩君が死んだ折の話や、ロンドン滞在中の話なんかもあったりするから、漱石研究にはもってこいの題材なのだろうけど。
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投稿者:むらむら (2008年01月23日 01:04)
金井田 英津子さんの版画入り「夢十夜」良いですよ
何度も読み返してます
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