PLAYNOTE MU『愛の続き/その他短編』Bパート

2008年01月19日

MU『愛の続き/その他短編』Bパート

2008/01/19 02:46

知り合いが出演しており、主宰さんとも何か気まぐれのような面識があり、かつ何やらどうやら書き手として非常に評価が高かったりするので、MUを観に行って来た。下北沢OFF OFFシアターにて。

小ぶりで瀟洒、粗末ながらシックな舞台美術。本棚が何か印象的。椅子や机を動かしてセットチェンジ。

どちらも何かファミレス的な豪華さ・賑やかさ。「今日はブリのいいのが入ったから食って行ってよ。え、カンパチ? ごめんね、今日は仕入れてないんだ」という江戸前寿司な感じではないのだが、作家的にはそういう作風の方が似合っているのでは、と思ったり。頑固一徹な寿司を握ればさぞ旨いだろうなぁ。

『愛の続き(の続き)』と『5分だけあげる』の二作を鑑賞。いずれも西山聡氏がカカかよってくらいに八面六臂の大活躍を見せていたが、さすがにバランスのいい布陣。その中においても存在感を失わない福原冠は大したものである。刃物を持たせてこれほど似合う男も少ない。ちなみに彼は自転車を持たせてもよく似合うのだから、金物全般が似合うと言っても差し支えないだろう。が、換言すれば見慣れた冠である。3WD改め国道58号戦線でやる際は何かガラリと違う奴が観たい。

『5分だけあげる』が出色であった。モンスターペアレントの話にせよ、蕎麦屋の人にせよ、小学生同士の恋にせよ、学校の先生たちにせよ、不倫にせよ、いずれもいくらでも膨らませられそうな物語の萌芽を孕んでいる分、どれも描き足りない印象を受けたが、恐らくそれがファミレス的印象の理由だろう。この一本で二倍の尺の長編芝居が一本書けそうな予感がするだけに、コンパクトでお値打ち・お手軽な感じが却って残念。

が、根津茂尚氏演じる梶浦先生には底の見えぬ漆黒を感じて実に心地よかった。終演後、根津さんに「いい役だった、中身が知りたい」と言うと、「俺に聞くのが間違いだよ、果たしてきちんとわかっているのかどうか」と謙遜めいたことを言っていたが、野暮なことを聞く覚悟ででも主宰のハセガワアユム氏にあれこれ突っ込んでみたら面白かったかもしれない。ある意味では主役である梶浦先生も十全確実な読解ができるほど描き込まれていないのだが、それが却って想像力を掻き立てる。他のキャラクターが世のカリカチュア的な役割を担っている以上、どこかで見たような印象や特徴を持っていることはむしろ肯定的に捉えた方がいいのだろうが、梶浦先生はぶっちぎりユニークで、印象としては地味なのにきちんと物語の中核にいた。彼の心理には興味がそそられる。所詮人間なぞ解釈不可能で矛盾含みのものなのだが、そういう矛盾を内包したキャラクタリゼーションが、ファミレス的パステルポップな世界観の中に点と落ちる作者のそれこそ心の闇を裏書しているようで、そこにしびれる、あこがれる、という感じであった。

二本観ただけで何かを判断するのは早計なのだろうが、ドライな中にロマンのある作風で、かつ笑いや構成の妙など技巧を感じさせるものであった。何か現代を達観しているような様子でありつつ、その実一番未練と浪漫に溺れているような作者像を予感させる。

ややこしいことをいろいろ書いたが、これで2500円なら実にお値打ち。シニカルに見えてロマンチックな作風はいろんな人がいろんな角度から見れるだろうし、役者もいいので、興味がある人はご覧になるといいですよ。

* * *

帰りに古本屋でオリヴィエの伝記とヒッチコックの本とウォーホルの本と漱石と芥川とラヴクラフトが全部100円で売っていたので買ってきたが、これで600円と考えるとMUよりさらにお買い得だ。演劇人がボロボロ集まる下北沢で、こんな本が100円のまま売れ残っているというのも奇奇怪怪だが、ラッキー。

コメント

投稿者:なお (2008年01月19日 12:55)

おりびえ。。
はよう、兄さんはよう貸して。

投稿者:上野庸平 (2008年01月19日 20:59)

上の駅前でやってた鹿殺しに知り合いが出てるそうなのでヒマなら行ってあげてください。 あとムーチョさんも。
あれもう終わっちゃったかな。