PLAYNOTE 韓国人俳優が演技で大事にしている三つのこと

2007年12月21日

韓国人俳優が演技で大事にしている三つのこと

[演劇メモ] 2007/12/21 02:36
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今日から24日まで、新宿タイニイアリスに韓国の劇団「前進シアター」と「演劇集団反」が来ていて、そのお手伝いスタッフとして劇場に常駐しています。ソウルで人気を博した演目を持ってきたようで、今日観た感じではどちらもなかなか興味深い公演でした。演出法や脚本にとりわけ革新的な何かがあるわけではないのだけれど、俳優さんが上手い。韓国語、これっぽっちもわからないけど上手いのは伝わる。その分、台詞が聞き取れないのが残念。

で、打ち上げにお邪魔して、俳優さんやら演出さんやらとあれこれ話していたんだけど、納豆だのフジヤマだのSONYだのヤクザだのという話をしてどうする、こういうときこそ演劇の話をしようぜと思い、無理矢理俳優論を問うてみた。難解な話ができるほど向こうが英語を喋れないので、ずばりストレートに、「演技をするとき、何を一番大事にしてますか?」とだけ質問。

聞いたのは前進シアター(チョンジン・シアター、と読むらしい)に出演中の三人。韓国って俳優になるには全員が非常に倍率の高い演劇大学を通らなくちゃいけないって小耳に挟んだんだけど本当? まだ若い三人、と言っても28・9くらいらしく、日本人の目から見ても芝居はかなり上手い。ややデフォルメされた演技をすることが劇中に何度かあるが、平均点をとれば日本の小劇場よりは確実に上だと思う。俺はね。

で、肝心の質問、「演技をするとき、何を一番大事にしてますか?」への答えは、

  • Truth
  • Analysis
  • Live

の三つでした。単語で答えると、馬鹿っぽくも無茶苦茶深くも聴こえるから不思議だ。

一発目に "truth" が来たことに驚いた。今年かぶれていたサンフォード・マイズナーが自著の中でひたすらに繰り返していた言葉だからだ。真実。マイズナーは、俳優が手本にしていいもの、学ぶべきもの、表現すべきものは真実をおいて他にない、てなことを言っていた(気がする)。簡単に「真実」と言うと安っぽいけど、なかなか難しい言葉だよね。

二発目の "Analysis" も慧眼だなぁと思う。Analysis、分析。初期のスタニスラフスキーが「テーブル稽古」と称してひたすら戯曲分析につとめたり、アクターズ・スタジオでは人間の生理や骨格、動物の動きなんかも観察の対象としていた、らしい。アカデミックリソースを提示してないのでこのまま卒論とかにコピペしたりするなよ、日本の馬鹿大学生ども。

三発目に "Live" が来たが、これは三発目に聞けてとてもよかったなぁと思う。舞台上で呼吸ができてないくせに、やたらと「お客さんと繋がるのが演劇だから」みたいなことを得意げに言う俳優が多いことに俺は苛々しているのだが、かと言って瑣末なことではもちろんない。「分析」を通して辿り着いた「真実」を舞台上に体現し、結果として演劇が「Live」になるのなら、それは、素晴らしい。

三人とも、小難しい話をするような体ではなく、「これこれ! これが大事!」「あっ、これも!」みたいに瞳を輝かせながら語っていたのが印象的。偉い。

* * *

韓国の演劇大学の教育カリキュラムってどんなんなのかな。日本の演劇教育を何とかしなきゃ、みたいな話はあちこちから出ているけど、骨格にすべき俳優論、共有できる俳優論、マジョリティから支持を受けていると言える俳優論が日本にはないと思うのだな。
「スタニスラフスキー? は? 誰それ? それよりうちのサークルの前田先輩がすっげー深いこと言ってたぜ。演技ってのは……」
みたいな人が多いので、スタの野郎ですらデファクトスタンダードとは言い難い。

韓国はどうなんかしら。やっぱりスタニスラフスキー? それとも南北分断の歴史があったからアクターズ・スタジオ寄りとか(笑)?

新国立劇場演劇養成所はとてもいい教育機関らしいので、新国立劇場の例の糞ロビーを売り払って駐車場でも作るつもりで予算を今の五倍くらい継ぎ込み、もっと規模をでかくして欲しい。本当に日本演劇のクオリティの底上げをしたいなら、一週間の体験ワークショップとかでいいからどんどん「こんなテクニックもあるんだよ」「こんな発想もあるんだぜ」と紹介して欲しい。ハコはもう要らねーから、稽古場と養成所を作ってくれよ。

「作ってくれよ」とか「こうしてくれよ」なんて事ほど言っていて無意味なことはないんだよな、ってことくらいちゃんとわかっていますよ。黒字が出せないから国や自治体や財団に頼るしかないんだが、需要がないからそうそう予算も通らない。「需要あるに決まってるだろ!」と言ってるのは恐らく有権者の1%くらいだろうから、まずそこから叩かないとね。

以前デスロックの多田さんがブログで「問題意識のある演劇人は確実に増えていると思う」と書いていたが、次は金を持ってる演劇人が増えるといいですね。どうですか、財閥の坊ちゃん嬢ちゃん。なかなか面白いですよ、演劇も。

コメント

投稿者:ハマカワ (2007年12月21日 11:58)

韓国ときいてやっていました。最近コメつけまくりですんません。

韓国は、いろんな意味で教育熱心なんですよ。基本的に儒教文化の国だから、序列がすごい。そして将来的にはそのトップに近づけるようビシバシ教育、みたいな。
学歴もさることながら、なんかちょっと才能やら興味やらを示した分野に、親がすごく金を使うんです。
そういう意味では「金持ってる演劇人」は日本より断然多いだろうなぁ。

韓国の劇団、興味深いですね。
うちのおかん通訳に貸しましょうかw

投稿者:谷 (2007年12月21日 14:32)

なるほど、やっぱり詳しいねぇ。日本みたいな詰め込み教育、偏差値至上主義でなく、才能や興味に目を向けているのだとしたら、とってもそんな国に生まれたかった。

おかんが通訳て(笑)。おかんと一緒においでよ。そして俺に通訳してくれ。

コメントは全然大歓迎だよー

投稿者:ハマカワ (2007年12月21日 15:13)

逆に言うと、才能が見出せない奴は厭でも何でも勉強です。
偏差値至上主義は日本以上にものすごいし、大学のネームバリューも半端ではない。浪人?当然。韓国の歴代大統領夫人は物凄い確率で梨花女子大学という名門女子大の出身です。そういうコードがあるんじゃないかってくらいに。
あと徴兵のある国なんで、1年2年のずれやら留年やらはいわば「細かいこと」です。それより立派な履歴書。でなければ才能。
谷さんは韓国よか日本が合ってる気がしますよー。兵隊さんの訓練とか、厭でしょー。笑

投稿者:Hiroko (2008年01月29日 14:56)

一読、とても面白かったです。韓国の俳優さんたちの三つもむろん面白かったですけど、それよりもっと、書いた人の考えの進め方に興味深々でした。
 俳優の演技。私もときどき考え込んでいます。巧い下手なんかじゃない、それ以上の「魅力」って何だろうと。
(ちなみに、最近見たのでは劇団SKの北嶋晶さんが、とくに前半、めったやたら魅力的でした。)

 お断りもせず、勝手に
http://alices-review.tinyalice.net/?eid=757403 (1/24のところ)にリンクしちゃいました。もしダメッ!でしたら、すみませんが、ひとことメールをお願いしま~す。すぐ外します。お名前も外した方がいい、んでしょうか?

投稿者:Kenichi Tani (2008年01月29日 15:42)

ワオ、コメントありがとうございます。そう、巧い下手ではないんですよね。でも、かと言ってセンスだけでやれるわけじゃないし、センスや才能にばっか頼ってちゃダメだ、誰でも演技は上達できる、っつーのがスタニスラフスキーやアクターズスタジオの出発点だったわけで、未だに結実していないのは遺憾ですね。

リンク、全然OKです!!