PLAYNOTE 猫道一家プレゼンツ『魔夏ニ放ツ独演ノ狂宴!』

2007年08月18日

猫道一家プレゼンツ『魔夏ニ放ツ独演ノ狂宴!』

[演劇レビュー] 2007/08/18 02:47

おい東京の片隅でこんな面白いことやってるって信じられるか? 世界は広いな。

東京を冷やかし半分で翻弄しているポーカーフェイスの怪人・猫道率いる猫道一家(と言っても現在一人)が主催したイベント、『魔夏ニ放ツ独演ノ狂宴!』。2000円+ワンドリンクだったが、5000円払ってもいいくらい面白かった。

OPアクト: ハマカワフミエ一人芝居『魔夏の果実』

よく知らないが昔の猫道一家テイストがきゅんきゅんする。当世風にアレンジされているのは再演気分を味わえて◎。役者・ハマカワフミエのセルロイドっぽい胡散臭さがいい意味で垣間見える瞬間は気持ちよかったが、あと一歩、見ているこっちが目をそらしたくなるような狂気、剥き出し感が見れれば極まったパフォーマンスになっていただろう。こっからどこへ進むかがハマカワの表現者としての分かれ目なのだろうな。

岩☆ロック座『してん ~永訣の朝』

OPアクトが終わっていきなり傑作が飛び出してビビる。岩ロック氏は実にバランスの取れたいい役者だな。以前の猫道一家出演時のようなケレンと濃さで勝負するような役だけでなく、こういうコメディの王道のようなことをやりつつ最後は人情、というようなこともやれてしまう。脚本のセンスも一言では評し難い。良いので。あの詩情とおふざけがちょうどバランスよくミックスされた感じ、非常によかった。

猫道一家vol.10『ヤルセナキヲ殺人事件』

猫道氏の一人芝居なのだが、驚異。そして脅威。おいおいおい、主宰・作・演出・役者・音響チョイスまでやりつつ、一人芝居でこの完成度ってどういうことだ。役者衆はドン引きして見るといい。後日本人と話したら、「もっと剥き出しな感じがあってもよかったかなぁ」と謙虚に発言しておったが、身体のキレ、凝縮力、密度、ケレン未、「表現圧力」、すべてにおいてちょっとぶっ飛んだ存在。脚本的にもシンプルな構造ではあるが、猫道リリックと混合されるならこれくらいシンプルな構造とギミックを持っているほうが、演者の身体と台詞に酔えてなおよいではないか。

小櫃川桃郎太一座『独り語り! 怪談 まんじゅう怖い』

完全にファンになってしまった感があるため、冷静な評はできないかもしれない。多分無理。しかし、詰んだ芸と身体訓練が如実に舞台表現に現れておる。何より恐るべきは動じない身体と声。ブレないブレない。確信めいたものをもって歌っているし演じている。そして、そこに生じる間が怖い。人間(劇中の人物のことだが)が何かを信じ込むとこうなる、これほどまでに前のめりで視野狭窄になる、という意味でも、単に沈黙の重さ、という意味でも、あとまぁいろんな意味でホラさ、とにかくこの沈黙・間の取り方はやみつきになる。これくらいの舞台度胸と確信があって欲しいものだ。

吉田ミサイルの世界『ドラえもん のび太と不死鳥の騎士団』

90分、一人で引っ張る。言うのは簡単だが、イッセー尾形とか野田秀樹にしか出来ない芸当ではないか。現実と虚構の狭間をくっだらないジョークを言いながら行き来する、というような作風だったが、よくよく見るとネタの作り方にせよ間の取り方にせよ展開にせよ実にうまい。こんなこと書くと誉め過ぎかもしれないが、チャップリンがやったようなパーフェクトさを感じた。そして最後には完全に破綻し、さらにその後感情的に揺さ振って来る。いきなり勇者の仲間として舞台上に引き上げられたのにも驚いたが、それ以上にどこまで本気か分からないように見える(もちろんしっかと一線は引いているのだが)ラストの独白には迫力が漲っていた。キャラクターは舞台から出られない。そして、俺は新宿の街で人を殺すかもしれない。

総括

おもしろかった。また観たい。これだけ平均レベルの高いパーティーはなかなかあるまい。そして、いよいよ演劇的万能選手ぶりぶちまけはじめた猫道氏の今後に期待。『藪の中』と『ベツレヘム』のエッセンスを自分より遥かに巧みな形で舞台化したような印象があって、改めて完敗感を味わった。以外にも、目の届く範囲内で完敗感を味わう演出家は彼くらいしかいないかもしれない。とにかく見事であった。天晴れ。