PLAYNOTE 蜷川幸雄演出『お気に召すまま』

2007年07月25日

蜷川幸雄演出『お気に召すまま』

[演劇レビュー] 2007/07/25 06:48

蜷川幸雄演出作品、というより、ホリプロ&TBS企画公演と言った方がいい内容。フィーチャリング成宮寛貴&小栗旬。知人にチケットもらったので観て来たが、大変珍しいものが観れた。

俳優さん目当ての人以外は足を運ぶと激しく損した気分がすること間違いなしの、演劇版「買ってはいけない」みたいな上演でした。

芝居の内容についてはあれこれ書かない。つまらなかったので。出演者のサービス精神には拍手を送りたいし、きちんと公演プロデューサーの意向を汲んで演出している蜷川さんのスタンスにプロ根性を感じた。

会場が凄まじい雰囲気。男性がせいぜい全体の2%くらいで、後は全部ジャニーズのライブ会場みたいな空気。キャストが客席通路を走っただけで、腰を上げ、身を乗り出し、さらには黄色い声、オペラグラスで凝視。成宮ギャグは全部ウケる。こんなにアツい劇場空間はなかなか見れたもんじゃないぜ。

一事が万事そういう感じで、タッチストーンを演じていた田山涼成氏が孤軍奮闘する中、誰も彼の台詞を聞かず(かわいそう…)、「早く成宮くんこっち向いて」みたいな空気。田山涼成氏は、日本人にわかるわけないシェイクスピア・ジョークをかなり自分なりに料理して出しており、「そこはカットしてやればいいのに…」と思うようなネタも必死に演じていた。俺はすごく面白かったです。

さて、演劇が資本主義に飲み込まれるとこういうことになるよ、ホリプロが買い取ったアートスフィアって今どうなってんだろ、そういや東京グローブ座もどうなってんだ? みたいな危惧ばかり煽る内容であったわけだが、唯一興味深く観れたのが、ジェイクイズの扱い。一人だけ黒い異質な衣装を身に付け、終始目立っていた彼だが、あれは蜷川さんの自己投影なのかしら。彼が立ち去るときだけは、ちょっぴり舞台に苦い空気が流れていた。それを、「こんな馬鹿騒ぎ(劇中では「都合のいい結婚」、蜷川視点からは「くだらん芝居」)やってられるか」と言いたかった蜷川幸雄の本音…と、取りたいなぁ。

河合祥一郎さんが、このプロダクションの初演版ジェイクイズに寄せたコメントを、Revolver * Junkie / 舞台『お気に召すまま』プレ&アフタートーク:高橋洋氏というページに発見。引用しとく。

河合氏によれば、洋さんのジェイクイズはこれまでに演じられたジェイクイズとは異質のものだそうだ。洋さんから新たなジェイクイズへの解釈を得られたともおっしゃっていた。

ジェイクイズは「鬱ぎ屋(ふさぎや)」で、物事に対して斜に構えるタイプ。過去に演じられたジェイクイズは、皆が幸せになるラストの婚礼シーンでも、あくまでも自分は円の外から白い眼差しを向ける“常に”ひねくれた者であったそうだ。今回の洋さんのジェイクイズは、鬱ぎ屋でありながらも奥底に人間味のある優しさを潤わせた人。婚礼シーンで立ち去る時も、言葉や態度で決して祝福を表現しないけれど、そこには無言でもキチンと皆に伝わるナニカがある。それは常日頃ひねくれても憎まれ口をきいていても、ジェイクイズの奥底にある優しい人格を皆が理解し、愛しているからだ。改心したフレデリック公爵に会いに行こうと瞳を輝かせるジェイクイズ。愛されるジェイクイズ、成長していこうとするジェイクイズは新しい。台本ではしっくりこなかったというジェイクイズのイメージ像、演ってみて本当はこうなんだと理解し、繋がったという。洋さんが見つけたジェイクイズ、洋さんが創ったジェイクイズ。

確かにそういう風にも見えたなぁ。だとすると蜷川氏が何したかったんだかよくわからない舞台だ。かと言ってパンフ買ってまで確かめようとも思わないし。

本物のヤギと本物の小学生くらいの子供が登場しており、「子役と動物には叶わねぇ」を再確認したよ。さしもの成宮・小栗もヤギとガキには勝てなかった。

カーテンコールを何度も何度もやるので、途中で帰った。