PLAYNOTE スタニェフスキWS まとめメモ

2007年07月09日

スタニェフスキWS まとめメモ

[演劇メモ] 2007/07/09 21:38

もう先々週のことになるが、一週間、計六回かけて参加したヴオジミェシュ・スタニェフスキ氏の集中ワークショップのメモを載せておく。いずれも断片的であり、WS中にとったメモや記憶から再現・再構築されたものなので、あまりあてにしないで欲しい。どちらかというと自分に向けてのメモ。

印象に残ったこと・言葉

「形」に対する飽くなき興味。「形」は心理にアプローチするための手段ではない。心理は一番最後に来るべき。

古代演劇の崇拝。古代には真実があった。歴史から逃れることはできない。古典劇は、古典劇のdiscipline(規律、訓練)と感情・感受性が交錯している。

いつでも一番大事なのは俳優。演出家はプロンプター(囁きかける者)でしかない。演出プランも、インスピレーションを与える(inspire)だけであり、決して強制的なものではない。ただし、俳優はそれに耳を傾けなくてはならない。

音楽は演出家にとって最良の友/教師。
すべてが音楽だ。言葉の身体も。そのことに気づかなくてはならない。
古代では、劇作家は詩人と呼ばれた。台詞を書くときに音楽もつけた。音楽を書いた。言葉は音楽的だった。

舞台上は戦場⇔舞台上のものを傷つけてはならない。共演者はあなたより大事(呼吸とリズムとの関連?)。

心理主義演劇の欠点…台詞と感情の混同。身振り言語が彫刻であるように、台詞も彫刻でなければならない。内面から湧き出た混沌としたものではない。彫刻としての台詞は、聴いた瞬間、想像力が爆発する…。…古代の役者は絵や彫刻も習った。最後に、自分の身体を使って彫刻を作った。

心理主義は自己中心主義とも言い換えられる。そうではなく、やらなければならないことは、言わば世界中心主義。あなたの演技が全世界にとって重要不可欠なものであるように信じてやって下さい。…俳優は媒介者だ。戯曲に比べたら、個人はゼロに等しい。全人類にとっての個人性でなければならない。個人的な心理主義から遠ざかり、「形」を発見しなくてはならない。

各種エクササイズ

■腰を落としてウォーキング

まず全員部屋中いっぱいに広がる。「1,2,3,4」のリズムをとりながら。4拍待って、4拍で中央に歩み出て、4拍分「混沌」を作り(なるべく身体を近づけながら腰を落としたまま歩き回る)、4拍で再び広がる。

リズムと呼吸を意識。中央に集まるときに混沌を作る。混沌から抜けるときは意志を持つ、選ぶ、決定する。incident(出来事。ハプニング?)を利用する。

■背中合わせ→回転→出会う

二人の俳優。背中を合わせ、「間に壁を一枚挟んでいるような感覚で」、腰を落とし、体重をかけあう。「ハッ、ハ、ハー」(タン・ウン・タン・ターン・ウン・ウン)のリズムで呼吸をしながら、身体を回転させ、お互いに「出会う」。出会う際には驚きを持って発見しなければならない。

徐々に、距離を変えたり、相手の身体にタッチしたり、動作を示したりと変化を加えても良い。さらには短いエチュードのようにもなっていく。

■身体のアルファベット

古代ギリシャの壷絵をモデルに&アレンジされた、名前のついたポーズ多数(100近くある?)。名前を口にしながらポーズをとる。その際、最も気をつけなければならないのは形の正確さ。しっかり目で見て確認する(見るものと見られるものという劇的な瞬間がもうここから始まる)。間違っていたら直す。

例:クリュタイメストラ、アガメムノン、イピゲネイア、アキレウス、メネラオス、父、母、娘、妻、夫、涙、悲しみ、あなた、わたし、わかる、わからない、行く(行け)、馬鹿、すべて、終わり、殺す、etc.

これを繋げて物語を語る。あるいは、衝動的に動作を繋げて練習する。

  • 内面から湧き出るものであってはならない。研究成果でなければならない。
  • 『ヘイロノーミア』(手の知識)…古代の俳優は身振りだけで物語を伝えることができた。
  • 手は嘘をつく、手に話させるな!
  • 人間…下半身:地上的なもの/上半身:天上的なもの
  • 心理的リアリズムの身振り=内面から湧き出る→混沌。しかし、身振りは形であり、伝えられるものだ。
  • プルターク「言葉は見えない糸で身振りに結びついている」

■タムタカタカタカ

「タムタカタカタカ」等リズムを口ずさみながら様々なステップを踏む。

タムタカタカタカ タムタカタカタカ タムタカタカタカ タムタカタカタカ(腰落とし片手を腹、片手を背中に当ててウォーキング)
タムタカタムタカ タムタカタカタカ タムタカタムタカ タムタカタカタカ(跳ね馬のように)
タタカ・タカタ・タカ タタカ・タカタ・タカ タタカ・タカタ・タカ タタカ・タカタ・タカ(各一拍目で片足を前に)
タムタカタ[カ]タン タムタカタカタカ タムタカタ[カ]タン タムタカタカタカ([カ]が高い音。ンでジャンプ)

■歌

石版に刻まれた古代の楽譜の断片から再現した、古代ギリシャの音楽。現在のような統制のとれた和音だけでなく、不協和音を有効に使っていた。

■ギリシャの歌を歌って踊る(ひどい説明)

確か四音で出来てる歌を歌いながら、左右往復と旋回が混ざったような動きを繰り返す。腰をなるべく落とす。

どの国、どの宗教にもある基本的な動き…旋回。

■質疑応答

Q.あなたの方法論はどう現代演劇の製作に活かせるとお考えですか?
古典劇と同じ。グロテスクな効果を生む(現代劇はグロテスクである。悲劇と喜劇が混ざり合っている)
例えばサラ・ケイン。彼女の作品は現代的かつ古典的だ。古典劇の情熱がある。同じく現代劇で思いつくのはサルトルの『蝿』。サラの方が面白いと思うが。
現代劇を扱う際、創造のプロセスを逆にするべきだ。つまり、心理を最後に持ってくる。
(俺解釈メモ)心理や感情が吹き出ている演技は個人的なものであり、ユニバーサルな表現としての形質をはぎとってしまう。ワークショップ内で心理的・感情的に演じられたアガメムノンは、アガメムノンではないように見えた、あなたという一人の俳優に見えた。
Q.あなたの演劇理論に影響を与えた書物・人物は?
ミハイル・バフチン、特に『フランソワ・ラブレーの作品と中世・ルネッサンスの民衆文化』。構造主義の哲学者だが演劇にも造詣が深い。私は大学で演劇ではなく文学・哲学を専攻していた。私があなたくらいの年の頃(20代中盤)には、必ずリュックにこの本を入れていたものだ。
演劇の分野で、ということで言えば、メイエルホリドは重要だ。ビオメハニカは客観的で正しいアプローチであると思う。私の書斎には、メイエルホリドの肖像が飾ってある。
Q.演劇を通して何ができると思いますか?
「別の現実」を作ることができる。
Q.ガルジェニッツェで俳優として舞台に上るには、どれくらいの期間トレーニングを続けるのですか?
三年。自分たちが持っている演劇アカデミーで二年間修行する。その間、脳のワキのような形で舞台に上ることはあるが、テクニックを身に付けるには三年はかかる。
Q.今回のワークショップで感じた、日本の俳優の良い点と悪い点は?
良い点…失念。
悪い点…「紳士は欠点を名指ししないものだ」(にっこりと笑いながら)

※ニーチェ『悲劇の誕生』への言及。

コメント

投稿者:なお (2007年07月10日 00:50)

これだけ読むとすげー面白そう。
いや、『きゃー楽しそう!』ってんじゃなくて、もっとこー、何つーか知的な感じで。実際体力的に相当大変そうだったし、並行はあたしには無理だったろうな。それにしても全然触れたことのないものだ。創造欲求への刺激。いいなぁ。こーゆーちょっとぶっとんだワークショップたくさん受けたいなぁ。

投稿者:Kenichi Tani (2007年07月10日 00:54)

これは相当演劇学とかに興味ないと実際に参加しても面白くないと思うぞ。あるいはとんでもなく感性が鋭い人か。日本でやってる演劇とはちょっと方向性が違い過ぎるから(世界的に観てもぶっとんでる)、簡単に応用できるようなものでもないしねぇ。