PLAYNOTE 柚木佑美/サンフォード・マイズナーワークショップ記録 No.1

2007年06月27日

柚木佑美/サンフォード・マイズナーワークショップ記録 No.1

[演劇メモ] 2007/06/27 02:38

スタニスラフスキーの流れを汲むアメリカの「メソッド演技」の巨匠の一人、サンフォード・マイズナー。さらっと触れてみた感じ、アドラーと並んで後期スタニスラフスキーをよく継承していると思われる、かなり実践的な演技指導者であるなぁと思っていたんだが、いかんせん書物だけでは演劇の稽古はできるもんではない。一度体験せねば、と思っていたところに、渡りに船、時間堂主催でやってくれることになったので、おめおめと参加して来た。

全十回構成なので、毎回を記録とはいかないだろうが、ちょいちょい記録していきたい。

時間堂2007計画ブログ:柚木佑美ワークショップ 一般参加者募集 - livedoor Blog(ブログ)に結構詳細なWS概要が載っているが、実はこれ全部俺が書いたものなので、まんまここに転載しとこうと思う。

●講師紹介 柚木佑美

俳優・アクティングトレーナー。ニューヨークの演劇学校・ネイバーフットプレイハウスにて四年間学び、サンフォード・マイズナー・システムを修める。1996年から俳優向けワークショップの企画を始め、99年に自身のワークショップ団体「アクターズワークス」を設立。以後、少人数制の集中ワークショップを年に十回弱開催しつつ、アクティングトレーナーとして数々の舞台公演・映像作品の演技指導を手掛ける。

トレーナーとしての最近の仕事は、NHK 大河ドラマ「巧妙が辻」、NHK 朝の連続テレビ小説「どんど晴れ」、俳優としては井筒和幸監督「パッチギ! ラブ アンド ピース」、NHK土曜ドラマ「繋がれた明日」などがある。

●サンフォード・マイズナーとは

アメリカの演技指導者・演出家・俳優。リー・ストラスバーグやステラ・アドラーらと共にグループシアターの立ち上げに参加。後にスタニスラフスキー・システムを発展的に再解釈した演技指導法(通称マイズナー・システム)を創案。数々の舞台作品、ブロードウェイ、ハリウッドなどで活躍する俳優を養成した。

マイズナー・システムは「感情の記憶」を用いるストラスバーグらのメソッド演技に比べ、身体と行動に重きを置いている点において、後期のスタニスラフスキーが到達した身体的行動に沿っており、よりスタニスラフスキーの真意を汲んだものであると言える。リピティション(繰り返し)と呼ばれる独自のエクササイズを始めとするユニークな指導法は、俳優の打算や自意識に操られた見せ掛けの「演技」に比べ、より衝動的で直接的な「真実の感情」に基づいた「体験」「行動」であると言える。((紹介文・文責:谷) )

●ワークショップ紹介

マイズナー・システムをベースに、メソッド演技や日本の古典からの要素を取り入れたオリジナルのカリキュラムを通して、システマティックに役や感情へ迫る方法論を提供する。

このサンフォード・マイズナーシステムは、スタニスラフスキーシステムをベースにリアルな感情を表現させるもっともシステマティックなやり方です。「感情」というあいまいな世界を具体的に扱うことを可能にしたのです。感情のエクササイズを使って、自分の感情に気づき、観察し、どうやったらその感情をだせるかにトライします。そうすると、まるで水泳の練習か何かのように具体的に、徐々に感情を自在に出したり押さえたりすることが出来るようになるのです。
このテクニックにそって訓練することによって、自分の真実の感情で役を生きることが手にはいります。つまり自分自身の個性を役に生かす=他の人の真似ではない個性的な演技が可能になるのです。

人はひとりひとり違います。誰一人として同じ人はいません。だから「個性」なのです。本来、ひとりひとり練習方法が違って当然です。
このワークショップでは、サンフォード・マイズナーシステムにそって、その人その人の「うまくいく方法」を見つけだしていきます。だからこそ、他の人では変わることの出来ないその人の演技ができるのです。

* * *

で、参加の感想

第一印象としては、「いきなり repetition(繰り返し) に来たか」という感じ。repetitionとはマイズナー流メソッド演技の代名詞と言っても過言ではないほど有名なもので、また俳優間の相互作用、反応を第一に重視するマイズナーの精神を最も体現したエクササイズ。「マイズナーと言えば!」みたいな奴が、いきなり初回に行われたので、ビビった。

まぁ、『サンフォード・マイズナー・オン・アクティング―ネイバーフッド・プレイハウス演劇学校の1年間』を読んだ限りでも、やはりクラスの最初期段階で扱っているようだし、不思議ではないのだが、ちょっと心の準備が、と、いきなりチューされた中学生みたいな気分(いきなりチューされた中学生? そんな青春、あればよかった、欲しかったですね)

で、やってみた。前掲の本やネット上の断片を読む限りでは、「これで本当に衝動的な感情が引き出されるものなのか?」と懐疑的だったのだが、確かにこれは気持ちが悪い。感情と向き合わざるを得なくなるし、俺ほど考えることが好きな人間でも、生理的な反応が沸き起こってくる。しかもまだ初回、お試しみたいな感じでこれ。これは、自分の枠をとっぱらう意味では、また、感情が湧いてくる→行動というフローを生理的に理解する上でも、含蓄の深いエクササイズ。うーん。考えたものだなぁ。

repetitionってのは要するに、相手をじっと観察して、気づいたことを言っていく。それをひたすらリピートする。何か言いたくなったり行動したくなったりしたらしてもいいよ。でも考えるなよ。みたいなものなんだけど(←ひどい説明)、これが生理・衝動に作用するとは思わなかった、本当に。何か禅問答的なイメージを持っていたのだが、いやいや、もっとシンプル。感情をぶつけること、ぶつけられた感情に反応すること、そして自分に正直であること、そういうとこをガリガリとやっていく感じ。一回目では。

得意な人などいないだろうが、自分は苦手であった。「言ったら悪い」と思う。次々と酷い言葉が浮かんで来て、あぁ俺は本当に性格が悪くて育ちの悪い奴だなぁと思う。さてここに一つの「抑圧」があるわけだ。まず、そういうことに気づくことが大事、ってとこで今日は終わった感。

一つ興味深い討議があった。俺が、「感情が行動を引き起こす、と言うが、では思考は感情に入るのか?」と問うた。答えは「No」。割と想定内。マイズナーにこの質問をしたらノーと答えるだろうけど、柚木先生はどうなんだろう、と思って問うてみたら「いい質問!」と一つも怯まず、明快に「No」。さすがである。でも、マイズナーもスタニスラフスキーも教えてくれないのが、じゃあ思考の末の行動や、あるいは無意識の行動や癖・身体的状態や障害にはどう対処すればいいの? ということ。まぁ、それはまた別の話。いつかテーマにしてみたい。

あと、昼にスタニェフスキというメイエルホリド寄りの演出家、夜にマイズナーというスタニスラフスキー寄りの演技論を同時に受ける、という体験は興味深いと思うんだよね。これって、昼は長島、夜は野村に野球を習う、みたいなもんで、ほぼ真逆の理論を同時にやってるわけだけど、自分の中では共通点が見出せそうな気がするの。これがストラスバーグとかブレヒトだったら難しいだろうけど。まぁまた書くよ。これはただの日記。

あとはそうだな、後半はリラックスしてやれた。次回はよりハードになるそうなので楽しみ。

※最近のPLAYNOTEは記録性を優先して書いているので、我ながら酷い文章が並んでいますがご勘弁下さい。あと、多分「マイズナー」とか検索してここのページに来る人がわんさかいると思いますが、ビールと午後の紅茶を同時に飲みながら書いているような文章なので、何の参考にもしないで下さい。↓の本読むといいよ。黒澤世莉&俺推薦。