PLAYNOTE スタニェフスキWS記録No.0 セミナー『ポーランド演劇・近代から現代』

2007年06月25日

スタニェフスキWS記録No.0 セミナー『ポーランド演劇・近代から現代』

[演劇メモ] 2007/06/25 02:05

ポーランド出身の世界的な演出家・ヴオジミェシュ・スタニェフスキ氏が来日しており、日本演出者協会主催で六日間の集中ワークショップが開催される。俺、のうのうと参加している。俺は当然俳優ではないのだが、メイエルホリドやグロトフスキーの流れを汲みつつ、全く独自の演劇理論を打ち立てている(ように見える)スタニェフスキ氏の手法、絶対本で読んでもわからんので、出ることにした。

今日はそのワークショップ本番を前に、『ポーランド演劇・近代から現代』と銘打ったセミナーが開かれていたので出席して来たよ。時間がないのでさらっと記録。

まずスタニェフスキ氏が創設し芸術監督を務める「ガルジェニッツェ」という名の演劇センター/演劇集団について、演出者協会のサイトに紹介があったので丸々引用。なぜか一部文字化け。

■演劇実践センター「ガルジェニッツェ」 

ヴオジミェシュ・スタニェフスキが設立・主宰する、世界で最も古く名高い実験劇団のひとつ。その活動は世界中の演劇人に多大な影響を与え、アリソン・ホッジ編著「二十世紀俳優トレーニング」他多数の出版物に紹介されている。1999年からはポーランド文化省の財政的・実務的支援のもとに運営され、文化省支援文化団体として登録されている。民俗音楽や古代音楽の伝統の徹底的な調査、パワフルな身体と声を鍛え上げるテクニック、自然環境における創造活動、相互性と音楽性に重きを置いた創作などで知られる。古代ギリシャをヨーロッパ文化の源とみなし、図像学や文学、音楽的資料に基づいた古代ギリシャの演劇手法の研究に力を注ぐ。音楽の魂を通した悲劇の復元を目指す。これまでにロイヤルシェイクスピアカンパニー、バービカンセンター、バルティモア民族演劇祭、ファースト・ァ�縫紂璽茵璽�・フェスティバル、ラ・ママ劇場、メイエルホリドセンター、ベルリン世界芸術祭、ソウル・オリンピック芸術祭、利賀フェスティバル他、世界中の名だたる演劇祭や劇場で公演を行う。

今日は谷山和夫先生による講義でした。谷山先生はこのブログでも何度か紹介している『二十世紀俳優トレーニング』という20世紀世界演劇の巨星ら14名を概説した超便利本の共訳者の一人。全く何も知識のなかったポーランド演劇史だけど、大変コンパクトにまとめられたとても良い講義でした。スタニェフスキ氏は、「250年の歴史を一時間でまとめるなんて、ICチップの国の人、日本人にしかできない仕事だ」とジョークを飛ばして笑いをとっておった。

でも本当に初学者としてはこれくらいコンパクトなところから入って徐々にディテールを知るという流れは大変助かる。また、よーく見詰めてみると、ポーランドという東欧の小国が、演劇史において驚くほど大きな比率で役割を果たしているのに改めて気づかされる。久々に知的好奇心を刺激されるいい講義であった。

もちろんネイティブポーランド人(?)であるスタニェフスキ氏からは反論もあったが、それも含めて知的にわくわくする三時間。生きてて良かった、と思った。

スタニェフスキ氏の言葉で印象に残ったのは多々あるが、ポーランド演劇の歴史と彼の手法に照らし合わせてちょこっと書いておこうかな。まず彼は、ポーランドを「孤立を余儀なくされた国」と形容した。歴史を振り返ってみればこの言葉の意味はすぐわかる。

地図から消滅した国であるポーランドが、民族運動の精神的支柱として、また寓話や口承文学の伝統においてとんでもない深みを持つスラブ民族の誇りとして、文学や演劇を求めたのはよくわかる。が、スタニェフスキ氏によれば、「コンラッドですら英語で書かなければならなかった」、つまりポーランド語という極めて難解な言語は国際社会的に発信力を持たなかったと言うのだ。何かを言うために外国語を学ばねばならない。高い高い壁である。しかし、ポーランドの演劇は、その壁を、外国文化への順応を通してではなく、土着の文化の発展として生まれる身振り言語・演劇言語を通して越えようとしたのではないか。みたいなことを言っておった。

えーと、今実は「スタニェフスキ」で検索をかけるとうちのブログが二番目に表示されるんだけど、このブログの記述を決して真に受けないで下さい。きちんと彼について知りたければ、きちんと学術的な信頼性のある文章を読んで下さい。今、上に書いた講演メモも、記憶を頼りに、都合よく編集して書いていること、俺の印象なので、信頼性などないに等しい。スタニェフスキ氏は話し振りからもその聡明さと想像力の自由さにおいてちょっと類を見ない器のでかさを感じさせるし、割と飛躍を交えた論理展開と独自過ぎる問題の切り口にはこちらの想像力がめきめき刺激されるので、あれこれ喜んで書いてしまうのだが、基本的には俺の印象。

日本語で彼の仕事についてある程度まとまった記述があるのは、やっぱり今んとこ『二十世紀俳優トレーニング』しかないらしい。これは闘う演劇評論家・村井健氏と雑談する中で「うん、他に何もねぇよ」的にご教示頂いたので間違いないと思う。ただ、学術的言語を通して演劇表現を説明する、しかもすごい少ない紙数でそれをやるという不可能に挑戦している本なので、一読を試みる方は覚悟して欲しい。ある程度演劇学を知っている人には大変便利なアンチョコ本だが。

これから六日、毎日ワークショップに参加するので、とりあえず現在進行形でその日その日の印象を書き残していこうと思う。最後にはきちんと整理・構成された、かつ学術的な信頼性もある小論が書ければいいなと思うけど、氏の理論の難解さをチラ見する限り絶対無理なので、とにかく印象だけでも書き残していこうと思うよ。

明日からワークショップだよ。今日、セミナー終了後、ワークショップ参加者向けにちらっと実演があったけど、それを見る限り簡単に何かに応用できるような代物ではないのだが、悶絶するほど面白そうなので別にもうどうでもいいや。楽しんで来ます。

コメント

投稿者:みあざき (2007年06月26日 17:56)

コンラッドはポーランド人だったのかー、という驚き。
ずっとフランス人だと思ってたショパンもポーリッシュだし
かの国は文化人輩出の目覚しい国なのですね。ロシア語とはちがうのかな、その辺はG氏が詳しいのか。

ワタシもショパン大好き日本人です。和音が少しさびしげで、でも広がっていくときはおもいっきり華々しいのがいいんですなぁ…。アルペジオひいてるときとかシアワセになるんです。

動きとリズム、といわれると
NHK教育でからだであそぼという番組があって
そこでダンサーと思われるかいじくんという人がセットの中で一人で「たたく」「とぶ」などのその日のテーマを表現する15秒くらいのコーナーがあるんですけれども、これがおもしろくて結構見入ってしまう。
感情表現はない、ように見えるんだけど、動きそのものからにじみ出てくるものがあり、
かつまとまっていて、なんかね、いいんですよ。よかったら、一度。

投稿者:Kenichi Tani (2007年06月27日 02:17)

そうだね、Gに聞けば早いんだろうが、いやはやポーランド侮れんね。んなこと言ったらチェコもハンガリーも侮れないのかもしらんが、こと演劇の分野においてはポーランドはちょっと出張りすぎなくらい。

NHK教育の例は多分ちょっと違う気がするが(笑)、機会があれば見てはみたいな。YouTubeとかに上がって…ねぇだろうなぁ。今厳しいし。