PLAYNOTE 阿佐ヶ谷スパイダース『少女とガソリン』

2007年06月19日

阿佐ヶ谷スパイダース『少女とガソリン』

[演劇レビュー] 2007/06/19 21:53

チケット高いのでもう観ん。といつも思うのだが、ふと
「長塚圭史を観ないと自分はダメになる」
と思い出し、観に行った。観といてよかった。

もうかれこれ七年くらい追っ掛けてるんだなぁ。初めて観たのが『日本の女』で、以来彼の描くバイオレンスとセンチメンタルに魅せられて、足繁く通っている。

今回は、脚本的にはちょっと作りが甘いかな、と思う点が散見された。登場人物が多い分、全員が主筋にとって必要不可欠とは思えない絡み方をしていたり、描きが足りない・弱いと思う人物がいたり、ヒロインであるミポリンは存在感ばかり光っていて、あの奇妙な性格に生活感や説得力が感じられなかった。ミュージカルシーンの盛り上がり方とかも中途半端でちょっと恥ずかしい感じが。ラストの合唱も、ステージ上でやってる分にはよかったが、客席中通路にまで降りて来るのはちょっとクールじゃないファンサービスに見えた。

これくらい書けばいいよね。俺長塚圭史大好きなんだ。欠点なんか気にならないよ。今回も観てよかったよ。本当は「君の全てが好きだ」くらい言いたいんだが、こいつバカじゃないのかと思われるのも怖いので(なんてソーシャルな自分)、残念な部分は書いたが、今回も励まされた、勇気づけられた。

今回は部落差別がテーマ。こういう題材を選んで来るから長塚圭史は好きだ。毎度、こちらの気が滅入るようなテーマを選んで来て、その度に勇気づけられる。自分は、失恋だとか挫折だとか、人間関係の不和だとか、そりゃあそういうお芝居も面白いしあっていいと思うけれど、みんながみんなそんなのばっかりやってるのを見て、逆に暗澹とした気になる。それくらいしか書くべきことはないのか現代、と。

以下ネタバレあるよ。

誰でも書くであろう感想だが、中村まこと演じる飲み屋の親父の豹変ぶりが○。反抗のシンボルとして担ぎ上げようとしていたアイドル・ミポリンが、自分の実の娘である、イコール部落民であるとわかった瞬間、もう関わらせちゃいけない、何も知らせちゃいけない、普通に生きていって欲しい、と、それまでの熱狂はどこへやら、担ぎ上げるどころか率先して解放しようとする。部落差別を、ただ被害者よりの目線で描くだけでなく、被害者の中に存在するこういう真実だが後ろ暗いところをきちんと描く辺り、作家としての真摯さが出ていて俺は大好きだ。

役者はちょっとケチをつけるのが難しいくらい個性的でエネルギッシュで良い。一つケチをつけるとすれば、あんまり演技うまくなかったんだ、と気づく瞬間があったが(笑)、もうそんなもんどうでもいい。笑いはとれるし器用だし、何より男臭くて不器用な生き様を全身に背負っている。「誰がよかった」とか書くと超長いエントリーになっちゃうのでやめとくが、池田さん、中村さん、待村さん辺りが今回は特によかった。中山さんは相変わらず一番好きだな。シャツに『GET BACK with BIG MAC』って書いてあって笑った。

「真実(まこと)」という名の、労働者のための酒、という設定も面白かったなー。これって俺がビールを飲んで感じることと極めて近く、もうボツになったんだが次回公演のプロットとかぶるとこがあって少し驚いた。前半部のどうしようもないダメダメさが大変素敵でした。

割と誰も描かない人間のグロテスクな側面を、漫画的なくらいに誇張して描く長塚圭史。作風。今回も、チェンソーが出て来た時点でほっとした。何だろう、この感じ。この人には変わらないでいて欲しい。

コメント

投稿者:ユキ (2007年06月19日 22:40)

私、今日見てきたー。
スズナリって我が家への通り道だからもうこの1ヵ月スズナリが気になって気になって…
「日本の女」「はたらくおとこ」と「少女とガソリン」とここ数日で順を追って見たおかげでなんか
「圭史のやってることかわんねーなー」
と思いつつ、それにニヤっとしつつ…
もう、この人達大好きだわ。
これからも足繁く通うためにうちの会社でチケット買ってください!

あ、あと「ミポリン」じゃなくて「リポリン」ね。
細かいか?

投稿者:Kenichi Tani (2007年06月19日 23:09)

うっわ、リポリンだった。ミポリンって、さすがにそんなネーミングはしねーよな(笑)。俺も日本の女今週観に行くつもりだよー。

すまんが今回はe+ではなくぴ×で買った(笑)。