PLAYNOTE 柿喰う客企画公演『誰も笑わない「検察官」』

2007年06月01日

柿喰う客企画公演『誰も笑わない「検察官」』

[演劇レビュー] 2007/06/01 03:31

以前時間堂界隈で一緒にパンチを敷いたり稽古場で鬼ごっこをしたり飲んだり煙草を吸ったりした玉置玲央くんと、制作女神・田中沙織さんが関与しているので観に行った。早稲田出身の柿喰う客、ロシア古典戯曲・ゴーゴリの『検察官』を洒脱かつしゃあしゃあと上演す。

赤坂RED/THEATERにて。初日拝見。

時間がないので企画の概要とかは柿喰う客-次回公演情報を参照のこと。

真っ黒素舞台。衣装も役柄を示すための最低限のものを身につけているだけで、基本は上下黒の簡素なもの。

いきなり市長役・堀越涼氏の印象的な含み笑いから開幕。印象的な群像の光景。お、意外とシックに来るのか、と思いきや、その後はテンション高めのネタを連発。前半はちょっと退屈。逃げも隠れもできないほどネタらしいネタである割に、そこまでウケてなかったから、というのが理由なのだが、やっぱり古典戯曲の台詞は処理するのしんどいし、聞き手も疲れる・つかみ所がないなぁとかも感じた。

自分は「キャラクター」と「人物」という語を割と使い分けて使っている。特徴・個性を戯画化・誇張して演じられたものを「キャラクター」、一人の人間・存在として説得力を持ち得るものを「人物」、ってな具合に。この『誰も笑わない「検察官」』では、見事に全員キャラクター。柿喰う客自体がそういう劇団なのかな? 初見なのでよくわからないけれど。

そういうわけで、凄まじい勢いでネタを披露しまくる「キャラクター」の連発に、小劇場によくある気疲れを感じた前半~中盤。が、これが後半、却って好転する。偽の「検察官」の前に振り回される乱痴気騒ぎのキャラクターたちが、真実が明らかになった瞬間にぞっと正体を現し、「人物」としての陰影を現す。特に七転八倒大騒ぎしていた市長が、その勢い全開の強烈な個性をそのまま引き摺って、狂気とも言える感情を露出して来たラストにはぞくりとさせられた。

…この辺まで書いて放置しておいたエントリー。他に気になった・覚えている点としては、

  • 家政婦?の存在。市長の傍らにおって、途中で虐待されていたように思う家政婦?が、ラスト、市長の脱ぎ捨てた服を拾った後、にまりと笑う。これは原作戯曲にいる人物なのかな? まぁどっちでもいいや。グロテスクでいい趣向であったように思う。
  • 舌をべろっと。ラスト、カーテンコールで、市長役で怪演を見せた堀越涼氏と、柿喰う客の看板・玉置玲央が、去り際に客席に向かってべろっと舌を出して去るんだが、これがえらいよかった。なんでかとかよくわからん。柿の遊び心とひねくれ心が良く出ているように感じたから?とか、分析すると面白くないけど、見た瞬間、あっ、やられた、と気持ちよかった。

役者では堀越涼氏の異常なまでのテンションの高さがすごく良かった。玲央くんは、昨年の「俺の屍~」で見せた純朴さとは打って変わって無邪気で勢いのある伊達男といった風体。脱ぎっぷりも見事であった。自分も脱ぐことに関しては一家言ある人間なのだが、あれほど見事な脱ぎ芸をあの若さで見せるとは末恐ろしい。華もある。

面白かった。