PLAYNOTE イプセン『幽霊』

2007年05月24日

イプセン『幽霊』

[読書] 2007/05/24 02:27

昨日読んだ『ヘッダ・ガーブレル』と同様、Amazonで注文してさくっと読んだ。性病と因襲の問題を中心に据えた、イプセンの自然主義的・家庭劇。全三幕。

出版社/著者からの内容紹介

愛のない結婚を否定しつつも,因襲的な観念に縛られて放縦な夫のもとに留まり,家名を守るため偽善に終始してきたアルヴィング夫人.夫の偽りの名誉を讃える記念式典を前に,可愛い一人息子のオスヴァルも帰ってくるが,因襲の幽霊がふたたび夫人の前にあらわれる.ギリシャ悲劇に比せられるべきイプセンの傑作.

まぁまぁ、面白かった。『ヘッダ・ガーブレル』や『人形の家』の方が好きだけど。

牧師の俗物野郎っぷりが半端ない。あと女中的に家にいたレギーネの豹変っぷりがとんでもない。ここら辺はちょっと笑いそうになってしまった。

途中すごく現代詩のような台詞があって好きだった。筋とは何も関係ないのだが。

脳軟化症の一種──とか何とか、そう言ってたな。(悲しげに微笑み)この言葉、とても、しゃれた感じでしょう。僕はいつも、これで連想するんですよ、サクランボ色をしたベルベットのカーテンとか、──何かふわあっとした手ざわりの、デリケートなものをね。(p147)

ラストは圧巻。これほどグロテスクで胸を締め付ける光景を、あのイプセンが書いていたなんて。ずいぶん前に読んだはずだが、すっかり忘れていたので感銘を受けた。イプセンがここまでやってるんだから、俺たち何やってもいいんだよな。

母さん、太陽が欲しいよう。──(鈍い、響きのない声で繰り返し)太陽。太陽だよう。──(依然として表情のない声で)太陽。太陽。(p151)

劇作術としては勉強になるところが多かったが、さほど優れた戯曲であるようには感じない(もちろんA級であることは間違いないんだが)。扱っている問題は十分に普遍性のある事柄だと思うんだが。思うに、「幽霊」というモチーフの訴求力が弱いのか。また、劇全体が空間的・動作的行動をあまり含まず、会話でのみ展開するのも残念。やはり、朗読の会ではないわけで、モチーフの訴求力にせよ話題への関心にせよ、言葉だけでは弱いのだなぁ。

それにみんな、私たち、光をすごく怖がっていますものね。(p81)

短いし、ラストはぐっと来るし、いい気分転換になる読書だった。