PLAYNOTE テラ・アーツ・ファクトリー公開ワークショップ

2007年05月19日

テラ・アーツ・ファクトリー公開ワークショップ

[演劇メモ] 2007/05/19 02:28

先日の猫道ロックフェス'07で知り合った小櫃川桃郎太さんに紹介してもらい、テラ・アーツ・ファクトリーというとこの公開ワークショップに参加してきた。小櫃川さん曰く、「話してみて/作品(『ベツレヘム精神病院』)を観てみて、きっと波長が合うと思った」とのこと。最近、新しい稽古方法・俳優観を深めたい、広めたいと思っていたので渡りに船。俳優でも役者でもないのにのこのこと参加して来たよ。

80年代に演劇集団アジア劇場で活躍し、その後伝統演劇や武道・ヨーガなど横断的にジャンルを超えて俳優訓練の方法を独自に模索して来た林英樹氏が講師を務める。経歴を見てみるとえらいきらめいた方なのだが、とりあえず目にしてみねば何もわからぬ、とあまり先入観を持たず飛び込んでみたが。

身のこなしが大変きれい。美しい。説得力のある身体であった。百聞は一見に如かず、言葉は人間をちょくちょく裏切るが、身体はあんまり裏切らない(それでもたまに裏切る・笑)。おお、すげぇ、と素直に思った。

そんな林先生を囲んで二十余名でワークショップはスタート。テラ・アーツ・ファクトリーのメンバー、年間ワークショップ参加者、某劇場の小屋付きさん、パントマイム役者など、まぁ幅広い参加者層であった。

まずは又割りのように腰を落とし(「ハコ」と呼んでいた)、骨盤から背骨・上半身を垂直に立て、そのまま左右に重心移動し、片足をもう片足に引き寄せる。この時点で自分はもうできない。なぜ音もなくすっと足が床を滑り重心が移動してるのか。

続いて今度はそれに腰から上半身をひねり、そのエネルギーの余波を両手に伝えて身体を旋回させる、…ような運動。林先生も仰っていたが、あまり他に類を見ない動き。「ファリファリ」と呼んでいるそうだが、これがえらい難しい。

テラ・アーツ・ファクトリーの古参メンバーに話を聞くと、「イメージと身体がぴったり重なる/実現できる、その瞬間にぶわっと風景が変わる」みたいな。自分も昔武道を嗜んでいたことだし、バレエや歌舞伎がえらい好きなので、イメージは何となく想像できるし、できたら気持ちいいだろな、と思う。が、身体の歯車がギシギシギシギシ、不器用に軋むばかり。観念的で宗教的な感じすら漂うが、二人組で「ファリファリ」をやっている経験者の動きを見ていると、こういう丹田からの波動だとか精神同士の交感だとかが可能なことはよくわかる。聞けば「週ニで続けて、とりあえず一年くらいはわかんない」そうなので、まぁがっかりしないことにした。

ここまではもちろん基礎の基礎。骨盤、背骨、そういうものからしっかり立たせる、つまり身体が持っているバランス感覚を掴む。講義では、発声と腰・骨盤の関係性について触れられていたが、それに留まらずテラ・メンバーの間ではこれらの基礎訓練から発展した身体感覚を演技作りの中枢に置いているのだろう。どういう演技がここから出て来るのか、大変興味がある。まだ多分全体の5%も見ていないんだろうな。

休憩を挟み、後半は「F空間」と呼ばれる集団で行う即興身体表現を行う。七・八人で大き目の輪を作り、一人目がパッと思いつきで輪の中心・場に立ち、任意の姿勢・ポーズを取る。動きが定まったな、と思ったら二人目が入り、やはり任意の場に立ち任意の姿勢・ポーズを取る。これをどんどん繰り返し、最後の一人が入ったら、最初の一人から順々に輪を抜けて行く。最初はシンプルだったが、徐々に「場の中にいるとき動作をしていても良い」「一人だけ歩いていても良い」「去るときは順番じゃなくても良い」など自由度が増していき、さらにはある単語(「壁」「爆撃」「農夫」などいろいろ)を林先生が提示し、それを照準にして動いていく。

これは、もう、言葉では説明しきらんが、やってみると意外とスムーズに入り込める。要は、俳優が自分自身を演出すること、あるいは空間やその状態・バランスを意識すること、などの感覚を泳がせながら鍛える、みたいなことだと思う。が、理屈抜きに、わっと入って自分が場や表現に参与し、空間が変わったり共演者の動きに影響を与えたり、それまで場が持っていた意味性やニュアンスをあっさり覆してしまったり、そういう空間上の交感力のようなものが大変面白かった。

これにてワークショップは終了。時間的に発声や台詞について触れられないことを林先生は悔しがっていたが、確かに自分もそこは興味があった。WS最初の講義であった、「『会話』の演劇と『語り』の演劇」という話、そしてその『語り』にウェイトを置いて演劇を考えている、というようなところに強く共感・感心を持ったので、余計に。

三時間ほどのワークショップにちょろっと参加しただけなので、まだ何もわかってないというのが正確な位置取りなのだろうが、今年七月に一発公演を打つそうなので、是非それを観てみたいなと思った。話や理論には頷くことしきりだったし、あの知識量・明晰さは一朝一夕で培えるものではない。それにあの動き。では果たしてどういうプロダクションを提示するのだろう?

参加者のほとんどは二十代前半の若い女性ばかりだったが、こういう観念的で、気の長い、じっくりとした稽古を丹念に続けているというその姿勢に驚いた。それに、アルトーやニーチェ、シェイクスピアやラシーヌやギリシャ悲劇やらに強い関心を寄せている人というのは、いそうでなかなかいやしないので、演出・構成としての林英樹氏がどういう舞台をやろうとしているのか、その理論はどういう結晶を持ち得るのか、ということにも大変興味がある。今んとこ、全貌が掴めていなさ過ぎなので、またワークショップに足を運んだり、それに何より次回公演を拝見して、片鱗を目にできればと思う。

* * *

ところで小櫃川桃郎太ことK原さんとえらい仲良しになって帰って来た。ニコニコしている男が好きだ。いや、女でもニコニコしていて欲しい。彼はとてもニコニコしていて、いろいろ気を配ってくれるので非常に話しやすいし、いて楽しい。WS後の交流会的な飲み会でも、俺の席の位置にまで気を配ってくれて、最後は駅まで送るように一緒に席を立ってくれて、しかも「端数の310円は持ちますよ!」と310円分の気前の良さと爽やかさを手渡してくれて(お断りしました)、いい人過ぎて怖いくらいだ。きっと夜は猫をナグリで殺したり、犬を黒ガムでぐるぐる巻きにしたりして、さながら一人百鬼夜行とでも言うべき悪行卑劣の限りを尽くしているに違いない。オビツガワモモロウタもきっと何かのアナグラムで、並べ替えると「月の出た夜に猿を焼く人妻」とか「ライ麦畑から子供が落ちるのを見て楽しい」とか、そういうのを暗示しているに違いない。字数が全然合わない。

とにかく、誘って下さってありがとうございました。そして、快く参加を受け入れて下さった林英樹先生&テラ・アーツ・ファクトリーの方々、改めて御礼申し上げます。