PLAYNOTE シャトナー研『感じわる大陸』

2007年05月18日

シャトナー研『感じわる大陸』

[演劇レビュー] 2007/05/18 15:56

『ピンポン、のような』でご一緒させて頂いた中田顕史郎さんが出演していたので観に行った。新宿THEATER/TOPSにて。

「筋書きだけ決めて、あとの九割はインプロ(即興)」というかなり興味をそそられる謳い文句。インプロっぽい公演はたまーに観てがっかりすることがとても多いのだが、まぁ芸達者な人が揃っているからと安心して観劇。

開演三分前、「前座」と称して西田シャトナー氏登場。アコギ一本ぶら提げて『神田川』『与作』の替え歌と漫談を披露。ギターの腕もなかなかのもので、弁舌の面白さもより光る。この前座はあってよかった。「あぁ、こういう雰囲気なのね」と納得できたから。客席を包み込む、友達同士のようなまったりとした空気。

本編の方は、インプロというより即興のネタ見せのような感じが大半を占めた。シーンの頭とお尻の段取りだけ決めておいて、中は銘々自由にやってね、という感じ。「リーダーを決めよう」とか「原住民の部族を発見した」というプロットに沿って、一人一人が前に歩み出て、それぞれネタを披露していく感じ(「俺がリーダーになったら○○する」「××族を発見した」など)。「タイムキーパー」役の女性が下手後方に座っていて、「あと五分」「時間です」などとカンペを見せていく。

個々人の技芸が披露される、とてもゆるーいインプロ。すごく笑えた。センスいいなぁ。欲を言えば、せっかくのインプロなのだからもっと人間同士の駆け引きが見えると個人的には面白かったな。一人一人のネタ見せ→つっこみ、という流れに終始していたため、安定感があり過ぎたのだ。これがもっと「やりとり」のインプロになったものの方が観たかったな。会話の駆け引きや予想外の展開に振り回される役者の努力、あるいはその場で生まれてくるドライブ感・グルーブ感や生命力、みたいなものが剥き出しに見えて来て欲しかった。

転換はプロ(だと思う)バイオリニストの演奏+タイムキーパー役の女性によるギター演奏をBGMに、セット換えを見せる方法。天井から伸びた九本の紐を絡めたり解いたり、鈴を持って振ったりと、面白い工夫。見目にも綺麗だし、予算もかからない。その分ちょっと地味だったけど。

ネタがとにかく面白かったし、テンパったり滑ったりする役者もいなかったから冷や冷やもしなかったし、二時間作品としては満足、大変笑った、スカッとした、のは間違いないのだが、消化不良な感じが残るのは残念。綺麗に収まりすぎていた。初日だからか、前座で「いつもは三時間四十分とかに伸びちゃうので、今日は時間通りやりま、…やれたらいいな」とシャトナー氏が喋っていたが、観たいのは三時間四十分に伸びた方! 完全にそうだ。尺は二時間でもいいから、そういう暴走やもっと生々しい即興性が見えてくると企画の真意が立ったかなと思った。あと、3500円はちょっと高いかな、とか、トップスでなくても、等感じた。貧乏性、貧乏性。

顕史郎さんは『ピンポン、のような』とは打って変わって、ちょっと頭の足りなさそうなきらきらした水夫役。瞳がすごい輝いていて、頭の足りなさそうなことをすごく一生懸命喋る様に胸がきゅんとした。こういう立ち回りもできちゃうのはすごいな。俳優だ。

新聞記者役をやっていた岩崎宇内さんが絶大に面白かった。ファンになってしまいそう。シュールにもほどがあるズレ具合、かわし具合。今度単独ライブがあるそうだが、観たいとさえ思った。

シャトナー氏は自身のブログで「自分のパワー不足」「冴えていなかった」と誠実に反省しているが、それでも十分面白かったし、頭のキレる人だなぁと思って観ていた。ピスタチオは俺が高校生のときに解散してしまったので全く観ていないのだが、奇才の片鱗を見せ付けるインパクト。拍手。