PLAYNOTE エムキチビート『昇鳴蛇 -CRY:ME SNAKE-』

2007年04月04日

エムキチビート『昇鳴蛇 -CRY:ME SNAKE-』

[演劇レビュー] 2007/04/04 05:16
『昇鳴蛇 -CRY:ME SNAKE-』フライヤー

明治大学活劇工房出身の劇団。DCPOP4『ベツレヘムむにゃむにゃ』に出ていたハマカワフミエが出演しており、かつステキ照明家・河上賢一氏が照明されてたので観に行った。懐かしの阿佐ヶ谷アルシェにて。

よく団体の成り立ちを知らないので迂闊なことが言えないのだが、サークル出身の若手劇団でこれほどしっかり芝居を作っている団体はあまりないので完成度にただ驚く。ファンタジー色が強く、演技に熱気と覇気と豪快さがあり、言葉遊びやリリシズムに満ちた台詞があり、壮大なテーマを扱っており、と、自分の趣味(おしゃれなカフェダイニングより地味な定食屋とかが好きです)とは隔たりがあるので、没入はできないものの、純粋に「すっげぇなぁ」と思いながら観ていた。

映像を交えたキャスト紹介のオープニングは、試みとしてはよくあるものだけれど映像のクオリティと役者のテンション、練り込まれた構成でちょっとした見物であった。グリーンの映像の前にブルーのパー缶ビームが走ると、あんな綺麗な絵が出るのか、とびっくり。みんなルパン三世みたいだった。

脚本の方は、会津白虎隊に独自の空想的脚色を加えた戦争物で、「ならぬものはならぬもの」という日新館の教えなど史実をうまく組み込んで使っていた。前回公演に比べて個々人の情念よりも戦争というでっかな歯車の回り方の凶暴さが前に出ており、一人の英雄が戦局を引っ繰り返しちゃう、みたいなことはなく、大勢たいせいを前にしてむしろ何も出来ない人々、というトーンが根底にあって、前回より個人的には面白かった。解決し得ない問題が中心にあると、人生そのものや生き方を扱うような芝居はぐっと引き締まる。と個人的に思ったり。

構成や転換・空間の使い方なんかもこなれていて、確かな実力があるなぁと思いつつ拝見。難を言えば登場人物が多過ぎて心情が追い切れない、一人一人の心情もダイジェストっぽく急展開、という感が。もっとぐっと人減らして、一人一人の心や弱さをしっかり描いたような本がいいなぁ、というのはイチ観客の我が侭か。こういう豪快さ、勢いのよさが売りのテイストなのだろう。ただ、ややもすれば豪快さ・勢い・覇気というものは、大味・粗雑に繋がりかねない。

役者ではウスタカ役の太田守信氏が大変よかった。色白・眼鏡に長髪気味のさらさらヘアーで、長身痩躯というルックスと、器用な芝居。面白い人だ。新撰組役の二人・澁田圭佑(副長だった方)&田中裕二(牙突の人)両氏も、若者たちに対比する形で渋く居座る百戦錬磨な雰囲気をよく体言しており、度胸と経験を感じさせる(とか言って「一年生です」とかだったら恥ずかしいけど)。ヒエイ役の山元文雄氏も素直な居方、癖のなさが好印象。ハマカワはちょっとずるいほど印象的なポジションだったから50点くらい差っ引いて評点したいが、それでもあでのある動き・声には光るものがあった。あそこまで人目を引くと、木陰のキノコの役とか馬の脚とかで出してどこまでやれるか、とか実験してみたくなる。役者的色気に満ちた魅惑のキノコを演じてしまうのだろうか。

自分が苦手なタイプの方向性であり、追い切れなかった部分があるのは否めないのだが、脚本的には今一つ消化不良の感あり。循環してしまう歴史、という壮大なギミックが、あと一歩プロットに悲壮で皮相なニュアンスを加味していれば、ファンタジーでありながら強烈な後味の悪さを残すシビアなドラマになっていたと思う。ただ、台詞へのこだわり、書きたい思いのようなものの強さ、構成の妙はびしびし伝わって来たので、今後の発展・伸張に期待は高い。

細かいことだけど、以前fringeでも紹介されていたボール紙一枚で出来る受付のバージョンアップが使われていたことにちょっと感心。真摯だなぁと思った。

いろいろ書いたけど、先が楽しみな集団ではある。この作風をあと五年続けて固定客をつかめれば、劇団として一つのカラー、確固とした地歩を固められるのではないかしら。もちろんそのためにはいくつも山や峠があるのだろうけれど。僕は先日卒業した明治大学というユニバーシティには一つも愛好心がなくて、この守銭奴大学バーカうんこ食って死ねくらいにしか思ってないのだが、それでも同郷の劇団が成長していくのは観ていて何だかほっこりする。こんなこと書くと主宰のエムキチくん(実名はNGなのかしら)に怒られるかもしれないけれど、同じ明治出身として畑違いの好敵手な感じがしているので、是非頑張って欲しいのです。