PLAYNOTE DCPOP4『ベツレヘム精神病院』、公演終了

2007年03月20日

DCPOP4『ベツレヘム精神病院』、公演終了

[公演活動] 2007/03/20 00:54

DULL-COLORED POP第四回公演『ベツレヘム精神病院』、公演終了致しました。ご来場誠にありがとうございました。

昨年五月の『国境線上の蕎麦屋』以来、ほぼまるまる十月十日ぶりの本公演ということで、気負い過ぎってくらい気負いまくって手掛けた公演。いろいろ書いておきます。

台本について

約3万7500字の台本。が、ボツ原稿料はこの二倍~三倍くらいあって、書いてはボツ、書いてはボツ、しまいには出した台本の後半全部書き直し、など、えらく胃に悪い執筆でした。

精神病者の苦しみはいくら想像しても想像では届かないものがある。
「あなたの想像力は、現実の三分の一にも満たない、と、思いますよ。」
これが大前提にあったため、精神病を見つめたり触れたりする人々の視線から物語を書こう、という形に落ち着きました。台本全体を貫くキーワードは、「見る」(見ることを拒む人々、精神病院を見に来た人々、目を瞑ることを選んだ人々、その他諸々)。二ページに一度は「見る」という行為が挿入されていました。

精神病者の妄想世界、精神病者を家族に抱える人々の視線、医療サイド、刑法上の問題、などを視点として盛り込んだ結果、プロットの散漫さを招いたかな、とも思ったのですが、結果的には政明・うにかを中心とした物語としてまとめることができ、過去最多のお客さんの涙・感動を頂いた公演になりました。

あと、俺もゲネと初日昼で泣きました(笑)。

演出について

紗幕の多用、無対象行動、二つのシーンが重なり合ったり、クロスフェード・カットチェンジしたり、一つの空間を二つに切って別々の場所で上演したり。凝りました。基本的には『ラパン・アジルと白の時代』に近いシンプルな舞台(アリスを完全素舞台で使う、という選択肢は、かなり勇気が要った)を使い、うにかが幻聴・幻覚に襲われて心の平静を失っていくシーンでは以前『アムカと長い鳥』で使った手法をバージョンアップして使ったり、過去のDCPOP公演や『マクベス』での経験を総動員した格好。

参考にしたのはサイモン・マクバーニー演出の『尺には尺を』なんだけれど、まぁあのレベルに到達するには大きな壁が。効果は確かにあったけれど、この辺の方法論はまだまだ突き詰められると思う。

役者への演技指導には、今回劇団主催で行ったカリフォルニアバカンス・田中美穂氏ワークショップ、並びに時間堂・黒澤世莉氏ワークショップが、心理的な意味でいい方向に影響力を持ったと思います。ワークショップ自体がそもそも、やったらすぐ上手くなるとか、やったらすぐ体や呼吸が変わる、というようなものではないのですが、意識の持ち方が変わった、それだけで演技も変わってくるもので、微細な変化ではあっても、重要なターニングポイントでした。

一部、卒論で扱ったスタニスラフスキーの身体的行動の方法を用いたこともあったけど、使い方としてはお粗末なもので、まだまだこの先演技指導に関しては経験を積まねばなぁと思っております。

が、結果的に「演技がうまい」とDCPOP一回目では考えられなかったような感想があったのも事実。少しずつ成長している、それくらい思ってもバチは当たるまい。

役者について

まず尊敬と言うより畏敬している猫道さんが出演してくれたのが最大嬉しい。安定した演技で芝居の骨格を固めてくれた。閉鎖病棟のシーンでは、一瞬ちらとかぶいた猫道さんが見れて実に◎。同じく初出演の加賀美バンビは、期待通りの器用さと真っ直ぐさで、はねっ返りと清涼感を併せ持ついいライン取りを見せてくれたし、ハマカワも発熱量の高さ・フォルテッシモな演技で、一瞬ふと「女」が垣間見せる目の恐ろしさ・強さを出してくれた。

清水那保はお家芸となった演技スタイルで妄想の中のうにかを熱演、加えてラストではぐちゃぐちゃに涙する素晴らしい表情を見せてくれた。堀奈津美は俺がイメージする看護士のマターナリズムと厳しさ、人間としての機微をきちんと芝居にしてくれており、過去のシュザンヌと並んで自分の中でベストアクト。理系こと富所浩一は、一癖も二癖もある親父を怪演。アドリブ的に台詞を変えて演じた「こたつの上に塩」の所は自分の想像を裏切るほどよく、やはり毎度毎度頼りになる存在。和知くんは演出家的な視点があるからなのかどうなのか、毎度毎度違うアプローチをしながら多彩な表情を見せてくれて、役者としての肝っ玉の据わり方や幅を感じさせてくれた。忘れちゃならない岩藤一成くん、彼がいなかったら DULL-COLORED POP の芝居にならなかったろう。次はもっと中心的な役柄で出演してもらいたい。

その他

素晴らしいスタッフ陣の皆様と会えたのも収穫、大収穫。ありがたや。今回絡んだ方々とはこの先も仲良くしたいし、是非また一緒に仕事をしたい。DCPOPに初めてついたプロ舞監・甲賀氏の愛と毒舌、確かな仕事の腕には感服致しました。どうもどうも。

宣伝美術について。
評判よかったですが、あらすじは書いた方がよかったな。すみません、あの頃はきちんと固まってなかったのです(自白)。なっちゃん、いい写真でした。

舞台美術について。
気に入っています。紗幕はそのうちまた使いたい。飛び道具的な形ではなく、演出上の必要性を兼ね備えた形で使うのはかなり難しいと思うけど。

音響について。
客入れとカーテンコールはarthur((アルチュール)というバンドの曲を使用。ポップかつファンシーな雰囲気の楽曲に、割と悪夢的な匂いもする詞が乗っていて、うにかの精神世界にぴったりマッチ。劇中ではDragibusというトイポップバンドを使用。カナリアの歌と出会っていなければこの芝居は無理だったかも、ってくらいヒット。他に Sonic Youth や SHERBETS、Fiona Apple、The Beatlesなどを使用していたものの、The Beatles以外は気づいたお客さんが少なくてがっかりな感じ。ふな蔵さんの力作であるうにかミュージックは実に良い出来で、大変なものを頼んだものの、おかげさまでいいもんできました。オペの若井さんは本当に本当に真剣にオペに取り組んでくれて感激。次は一緒に馬鹿なことしましょう(笑)。

照明について。
素舞台の使い方がよくわかっておらぬ俺に優しく手を添えてくれた河上賢一様様、ありがとうございました。客入れや作業療法のシーンなどでは俺の不確かな言葉を元によくぞあそこまで!という印象。初絡みなのにとことんやりやすく、満足の行く照明をありがとうございました。特にラストの窓枠がふわっと広がる明かりにはやられました。

演出助手について。
舞台監督同様初めて演出助手がついてくれました。一人ではいくら時間があっても手が足りないところを、働き者で俺と違って几帳面な上金くんのおかげで、何とか稽古と現場を回すことが出来ました。ありがたい。

最後に、制作について。
いろいろ書きたいことはあるんだけど、この場では一言、フジコお疲れと言いたい。DCPOPに一番貢献してくれた彼女が、いい形で将来への橋を渡ることを祈っております。後味の悪いラストを、いつまでも抱き締め続けろよ。"appreciate".

ネットで拾った感想など。(随時更新、順不同)

この公演からDCPOPは第二期に入ったかなという気がしています。今後ともよろしくお願い致します。