PLAYNOTE トーベ・ヤンソン『たのしいムーミン一家』

2007年02月02日

トーベ・ヤンソン『たのしいムーミン一家』

[読書] 2007/02/02 05:21

見間違いとかではなく、まじめにムーミン一家読んだよ。

面白い。ヤンソン自身も、ムーミンは決してただ子供のためだけの童話として書いていたわけではないらしいが、感じ入る点しばしば。よく人間をカリカチュアライズしておる。そしてユーモアがあり、想像力の翼がある。童話はよいものだ。

俺はJ.R.R.トールキン(指輪物語の人ね)が大好きなのだが、また芥川龍之介やカフカが大好きなのだが、こいつらみんな、童話と言えなくもないんじゃないか。童話というスタイルの利点は、簡単に言えば寓話性ということだと思う。それは創造者の視点から見れば抽象化とか戯画化とかを可能にする形式だし、同時に読者からすれば解釈と想像の自由度が極端に高いという意味で、非っ常に優れたもの。俺は今でも本屋で「はらぺこあおむし」とか「百万回生きたねこ」とか読むと泣いてしまう。本屋だが。

あとここからは飲み屋のくだらない噂話、酔っ払いが勢いで作ったでまかせ話くらいに聞いておいて欲しいのだが、以前どこかで「ムーミンの世界観は精神病院の戯画化だ」という話を聞いたことがある。つまり、ムーミン一家やスノークの兄弟やスニフやジャコウネズミは精神を病んでしまった人々で、村から出ることなく暮らしている。そこにときどき尋ねてくるスナフキン…という、穿ちに穿ちまくった解釈。

今回再読するにあたって、そういう視点を小脇に抱えながら読んでみたのだが、そうすっとこれがとんでもなく恐ろしい。ムーミンは小動物やら妖精やらとお話ができるようだし、ムーミンパパは「苦悩に満ちた若い頃のお話」を、長い長い物語として延々と書き続けている。ジャコウネズミは『The Uselessness of Everything』(すべてがむだであることについて)という本を、理解できるんだかできないんだが、読み続けている。がらくたみたいなものをみんなで大事にしたり。

もっとも、スナフキン自身も結構エキセントリックな発言や行動をしたりしているし、そもそもスナフキン自身、奴は人間ではない。よく勘違いされるが、あいつはムムリクという生物とミムラという生物(どちらも人名や固有名詞ではなく種族名)のハーフであり、指も四本しかない。しっぽも生えているそうだ。なので、ムーミンたちが病の人々で、スナフキンが見舞い客、という解釈は、単にスナフキンが他よりまっとうで思索的な発言を多くしているから、という点にのみ立脚している説としか言いようがないし、そもそもぶっちゃけヤンソンがそんな意図持って書いたはずなかろうという当然の疑問はあるのだが、それにしても背筋がぞっとするような読み方ではある。面白かった。

が、何にも増していいのは、やはりまったり感だなぁ。ムーミンとかスヌーピーとかプーさんとか、とても良いよ。牧歌的でありながら、時々ちくりと鋭いアフォリズムを残したりする。その絶妙のバランス感の中で、癒されながら人生を俯瞰的に眺めたりできる。「ムーミンて、お前ガキかよ」と思わず読んでみるといいですよ。電車の中で読むのはかなり恥ずかしいけど…。

追記: 未読だが『ムーミン谷の11月』という本には、ムーミン一家が一切登場しないらしい。どんな話だ…。とても気になる。いつか必ず読もう。

コメント

投稿者:ゆらら (2007年02月03日 16:15)

大人になってから読むムーミン……味わい深そうです。
結構怖い描写が多いんですよね~。
今回の谷さんのレビューで、「そうなのか!!」とぞくっと
したのが、スナフキンが人間ではない、というくだり。
うわーっ、確かめたい!!
図書館の児童書コーナーで、ムーミンの本を漁るわしが、
この春見受けられそうです。

投稿者:Kenichi Tani (2007年02月06日 06:13)

ムーミンに限らず童話はぞくりとする瞬間かなり多いですね。
一時期「本当は怖い…」なんて流行りましたが、
グリムに限らず日本の昔話にもぎょっとするようなディテールありますね。

スナフキンは人気高いけど、人間じゃないってのは意外とみんな知りませんね。驚き。

投稿者:makoto (2007年02月14日 13:44)

大人が読むのには特に『ムーミン谷の仲間たち』がおススメです。