PLAYNOTE 青年団リンク・サンプル『シフト』

2007年01月27日

青年団リンク・サンプル『シフト』

[演劇レビュー] 2007/01/27 02:52

青年団のユニットである「青年団リンク」。最近あちこちで話題になっとりますね。某友人からお誘い頂いてサンプル(というユニット)の『シフト』を観て来た。

こないだ『ソウル市民』を観てどえらい面白かったものの、未だに青年団と聞くと今一つ食指がそそらない(多分昔の悪い出会い方のせい)のだが、この『シフト』もどえらい面白かった。2/4までやってるから若い奴どんどん観に行けよ。これは、若い人こそ観るべき芝居だと思う。そこいらのギャグ芝居より面白いし、そこいらの社会派劇より生々しい。

公式サイトより、作品紹介。

独特の視点で現代を切り取り、緻密な物語を描くことに定評のある松井周が、いよいよ青年団リンクとして「サンプル」を立ち上げます。

その第一弾となる『シフト』は、近代以前の慣習と現代の消費社会がグロテスクに融合した村を舞台に、人間がどのように環境に適応していくかを描く意欲作です。

舞台観終わった後でこれを読むと、一つも嘘書いてないのがわかるのだが、実際の舞台で展開されるのは↑の文章から想像されるような静かな芝居でも社会派演劇でもなく、気分を害されるほどスリリングな人間同士の唾の吐き合い、貶め合い、悪意の連なり。それをうまーくコミカルにデコレートして、どうやら食べられるものにしてくれている匙加減が絶妙で、見ていて非常に嫌な気分にさせるような人間が多く出てくる割に、最後まで愛を持って見守れた。

センスいいなぁ。台詞の一行一行がセンスいい。人間の性格や性質を描くのに込み入った描写は実はほとんど必要なくて、「あぁ」とか「いいよ」だけでもその人間を深く深くえぐることができるけれども、そういう意味で無駄がないくせに妙に生々しい連中がそこにおり、センスのよさと筆致の巧みさをじわじわ感じる。役者も良い。養鶏場のおっちゃん役の人と若妻役の人、あと花屋の上司が絶妙であった。巧いし、しっかり色を持っている。

ギャグのセンスもよい。ギャグまでいいとちょっとずるいんではないか、と思う。それくらいよい。小劇場のギャグを見て引いてしまうことはかなり多いのだが、シュールでとても面白い。ギャグだけでもやっていけるのではないかと思ったくらい。

が、一番すげーなと思ったのは、登場人物の微妙なリアリティ。「これはフィクションだよ!」と丁寧に教えてくれるような台詞や設定が存在する一方、そこにいる人間の息吹自体は実に生々しく、いるいる、こういう奴は確かに日本にいる、と肯いてしまう。が、彼ら彼女らの生活や行動は、ときどき暴走して現実感を危うくさせる。リアリズムでもないし、類型化や戯画化でもない。サンプル『シフト』も参加しているこまばアゴラ劇場主催?の「冬のサミット2006」のパンフレットに、サミットディレクターであるチェルフィッチュの岡田利規がこの「サンプル」というユニットについて次のような言葉を寄せている。

洋食屋の食品ダミーや熊の剥製のように、偽者でありながらも本物っぽく、本物なのに偽者くさい、「異物」のような世界を表現しようというのがユニット名の由来。

これこれ! まさにこの感じ! あまり触れたことのない手触りであった。上記文章に続いて岡田氏は「アクチュアリティを引き連れたままナチュラリズムの脇路をすり抜ける方法を考えるべきです」と書いているけど、それをさらりとやってのける、そこにシビれる、あこがれる。

初見の劇団をあんまりあーのこーの言うのって好きではない(何だか失礼な気がする)のでこの辺でやめとくが、非常に気持ちよく気分を害された芝居であった。次も是非観たい。