PLAYNOTE 大平健『診療室にきた赤ずきん―物語療法の世界』

2006年12月29日

大平健『診療室にきた赤ずきん―物語療法の世界』

[読書] 2006/12/29 07:31

Amazonで精神医学の新書を七冊ほど大人買い。高い専門書は図書館で、新書や文庫はAmazonで、が最近のスタイル。これは図書館で発見、タイトルと表紙からしてずば抜けて面白そうだったので購入。読みやすかったので最初に読んだ。

内容(「BOOK」データベースより)

「むかしむかし、あるところに…」まさか精神科を受診して、昔話や童話を聞かされるなんて誰も思ってもみなかっただろう。でも、患者たちの当惑はすぐ驚きに変わる。そこに繰り広げられるのは自分の物語なのだ。悩みを抱えた心の深層を「赤ずきん」「ももたろう」「幸運なハンス」「三びきのこぶた」などで解き明かす、ちょっと不思議で、ほんとうは不思議じゃない12話の「心の薬

診察室を訪れた患者のエピソードを聞き、心の病の根を見つけて、ちょうどぴったりの童話を紹介してやる…という、ユニークな「物語療法」の本。話には聞いたことがあったけど、具体的な例がたくさん紹介されていて勉強になった。一話につき一症例、文体も読みやすく、エッセイでも読むような感覚で読める。

「ねむりひめ」「三年寝太郎」「幸運なハンス」「三匹の子豚」「赤ずきん」など、有名な童話が多数使われているけど、これらの童話を聞く内に、患者は自分との共通点を見出し、「あっ、なるほど」、自分で気付かなかった病の根を見つけ出したり、生き方を見つめ直したりする。実に面白い切り口。

もちろん実際の診療ではすべてがすべて物語療法で対処できるわけではないけれど、精神医療の本でよく述べられている、患者の自主性や自助力とでもいうものに手を添えてやることがとても大事、という考え方に通ずるものがあって頷ける部分は多い。頭にこびりついてしまった考え方や思い込みに対し、少し手を貸してやることで、別の見方、別の発想を患者自身に掴ませる。その際には比喩や寓話が非常に有効なんだけれど、童話という極めて寓話性の高いジャンルを使うことは理に叶っていると言える。

深刻な統合失調症(分裂病)や内因性のうつ病、ヒステリーなんかには当然薬物療法が欠かせないし、素人が生半可な知識でこういったデリケートな療法に手を出しても効果は望めないのだろうけど、薬物療法、精神療法、集団療法、芸術療法、あるいは生活環境の変化など様々な手段を総合して行うのが現代の精神医学。物語療法は箱庭療法なんかと並んでどうにもうさんくさく見えてしまうものだけれど、用法さえ間違えなければ有効なのだろう。まぁ、そこが難しいんだろうけど。

前編通してうまくいった話しか取り上げてないし、割と軽い精神病しか扱っていないので、何となくあっさりした印象を受けてしまったが、その分とても読みやすい。面白かった。