PLAYNOTE ジーン・ベネディティ『演技-創造の実際』

2006年12月23日

ジーン・ベネディティ『演技-創造の実際』

[読書] 2006/12/23 02:45

『スタニスラフスキー伝 1863‐1938』の著者でもあるジーン・ベネディティの、スタニスラフスキー・システム実践マニュアル。システムの基本概念の解説と具体的なエクササイズを収めているのだが、ちょっと驚くほど平易かつコンパクトにまとめられていて、難解で神秘めいていたスタニスラフスキー・システムの印象をがらりと変えかねない良書。

何より評価しなければならないのが、最新の研究とスタニスラフスキーの愛弟子たちによる実地のエクササイズや現場の解釈を広く取り入れ、本人の手によって整理されることのないまま残されたスタニスラフスキー・システムを、彼本人の意図したであろう姿を想像して補完している点。そもそも第一章のタイトルが『身体的行動の方法』であるから、未完のまま終わった『俳優修行』や途中でスタニスラフスキーの元を離れた弟子たちの断片的な記録に基づいて形成されたまがいもののシステム理解とは一線を画している。

従来のスタニスラフスキー本と比べて圧倒的に読みやすく実践的であることは間違いないのだが、まぁそれにしても例えば「俳優になりたいので田舎から出て来ました」みたいな人がいきなり読んでわかるような代物ではないのだが、ちょっと演技をかじったことがある人、そこで壁や挫折を味わった人なら、すっと意図するところが理解できるのではないだろうか。

実践的なエクササイズも多数収録。今回自分が読み漁っている背景には、まず身体的行動のはっきりとした全体像を掴むことがあるので、エクササイズの中身までは検討を加えていないが、もうあれですよ、とりあえず片っ端からやってみたらいいんじゃないですか。スタニスラフスキー本人も言っている。「もしシステムがあなたにとって役に立たないのなら、捨ててしまいなさい」。こればっかりは体動かしてみないと始まらない。

簡単な評伝や解説、日本におけるスタニスラフスキー受容の概説なんかもあるから、
「スタニスラフスキーって何だ!?」
って思っている人はとりあえず本屋か図書館で立ち読みされることを薦める。その気になれば三時間もありゃ読める。もちろん、ちゃんと理解して実践に適用しようと思ったら、買うしかないのだけれど。

しかしここまで優れた本が出るようになったんだから、例えば高校演劇とか、あるいは大学生や小劇場を対象に、安くて、信頼性のある団体が主催している、スタニスラフスキー講座みたいなのが出て来てもいいんじゃないだろうか。スタニスラフスキーを神聖視しろというつもりではないので、同様に様々な演劇ワークショップが盛んになればいいけどね。
(関係ないけど、そこらでやってるワークショップって、高過ぎるよあれ。ああいうのにこそ助成金って使えないのかな。)