PLAYNOTE デビット・フィンチャー監督『セブン』

2006年11月23日

デビット・フィンチャー監督『セブン』

[映画・美術など] 2006/11/23 08:23

とても有名な映画。「七つの大罪」をモチーフにしているというので観た。

観ている途中で中学生くらいのときにTVでオンエアーされていたのを思い出したが、改めて観て本当によかった。

キリスト教で言うところの「七つの大罪」、大食・強欲・怠惰・色欲・高慢・嫉妬・憤怒になぞらえて次々と犯される連続殺人事件。異常なほど緻密に計算された犯行の裏に潜む犯人の思惑、そして最後の犠牲者とは?

巧妙に仕組まれた脚本と演出は、過剰ではない程度のスリルとサスペンスをちりばめて決して観客を飽きさせない。現代社会の無関心と道徳的堕落という重厚なテーマを描きながら、エンターテイメントである配給映画としてのサービス精神も失わない、それはとても重要なことだ。

美術の世界ではファイン・アートという言葉があって、商業芸術と純粋芸術を区別する気運が20世紀前半に持ち上がったものだけれど、これは芸術の歴史を紐解くと実にナンセンスな区分である。古来より、後の世代によって芸術と呼ばれた作品は、常に受け手を楽しませるものだった。しかめつらしくパネルに書かれた評論家の解説を見ながら、お勉強するように見る芸術なんて、20世紀に入るまで一度だって存在したことはなかった。

だから、この『セブン』が、ブラッド・ピットにモーガン・フリーマンという「客の呼べる」俳優を起用し、ベッドシーンから銃撃戦、残酷描写、推理小説的謎解きなどあらゆる手段を用いて我々の娯楽感覚に訴え掛けていることは、むしろ自分は賞賛したい。実際二人はいい演技をしているし、スリルとサスペンスのサービスは、映画への没入・感情移入を促してくれている。

長年の経験と苦労に神経をすり減らし、厭世的なサマセット刑事(=モーガン・フリーマン)が、若く感情的なミルズ刑事(=ブラッド・ピット)に逆に目を覚まされるバーでのシーンがとても良い。原作者の道徳や社会に対する真摯な問題意識が見て取れる。が、ここで「(この世の中が最低だとは)俺は言わない」と強い瞳で語ったミルズも、最後にはあの選択に行き着く。絶望と希望を同じ重さで語っている。なかなか出来ることではない。

はっきり言って、よく出来た映画だ。緻密な計算が正確にラストの寂寞たる不条理感を叩き出しているし、歯車の一つ一つが完全に噛み合った物語は機能美という言葉を思い出す程無駄がない。描いている主題、それを問い掛ける構造、人物たちの感じている感情、すべてが手にとるようにわかる。こういった描き方の巧みさには、素直に敬意を払いたい。

いい映画を観ました。

追記: ネットの評判を見てげんなりした。「あの箱には結局何が入ってたの?」とか「犯人は結局何がしたかったんだろう」とか「気が狂っていたの?」とか「暗過ぎて見てられない」とか…。こんなに鮮烈に描いているだろう。何を見ていたんだ? 苛々する。

コメント

投稿者:りゅーせ (2006年11月23日 23:59)

高校時代に観て以来観てないんですが、大好きな映画の一つです。今観たらもっと面白そう!

投稿者:Kenichi Tani (2006年11月27日 07:36)

ガキの頃観てた映画の中には意外な名作が埋まっている気がする。
これも見直してよかったひとつだわ。
でも展開知ってるとちょっと残念かも。