PLAYNOTE 3WD『コンパクトディスクリードオンリーメモリー』

2006年11月14日

3WD『コンパクトディスクリードオンリーメモリー』

[演劇レビュー] 2006/11/14 22:49

現在明治大学最大の規模を誇る演劇サークル・活劇工房のユニット公演。次回DCPOP公演に参加するハマカワフミエをはじめとして、とてもたくさん知り合いが関与していたので観に行った。明治大学和泉校舎・第二学生会館地下アトリエにて。

世界中に存在し得るありとあらゆる書物をデジタル化して蔵書に収めた、森羅万象大宇宙図書館(ユニバーサル・ライブラリー)が舞台。レスト・ルームを作りたいが、立ち退きを受け入れず旧時代的な紙製の本を並べて細々と図書館を続けている邪魔者がいる。当然両者はぶつかり合う。そういうようなお話。

背表紙があって、目次があって、一枚一枚手でめくる、「本」という文化品。あと数十年もすれば消えてなくなるのは間違いないだろう。もっと見やすく小さく軽い液晶が登場するのは時間の問題だし、曲げたりめくったりできる紙のような液晶も(信じ難いことだが)本当に開発中らしい。本マニアの中にはそういう時代を本気で恐れている人間が多くいる。

不便だが温かみがあり、「読む」という行為に言わば儀式的な崇高さを与えている「本」という物品が消失するというのは、確かに一つの文化・生活の様式を失うことであり、便利にはなるが大変味気ない未来になるかもしれない。まぁすぐ慣れるだろうけど。今更LPプレーヤーで音楽聴いてる人間が何%いるかって話と一緒で。しかし、行為の意味よりも、行為そのものに価値がある場合というのはとても多いから、読書という極度に精神的な行為がデジタル化の波を受けてどう変化するかは未知数だ。

…そういう個人的に大変興味のあるテーマを切り口にした作品だったので、そこんとこが今ひとつ突っ込んで描かれてなかったのが残念。「やっぱ、手触りのある本はいいよね」で落ち着いてしまった。最後まで見ると作者のやりたかったことは、むしろバーチャルリアリティーを通して感覚と自我の不確かさを突くことだったとわかるのだが、消化不良感は拭い去れず、個人的がっかり。

今までに観た活劇系の芝居の中では群を抜いて面白かった。戯曲の構造がしっかりしており、それに演出がきっちりついてきている。作者のやりたいことがまっすぐ伝わってくる、よくできた構造。ディテールを見ていくと、ちょっとヌルいギャグが多かったり、途中でドタバタが続き過ぎて展開がのっぺりしてしまったりと残念なところはあった。が、中盤の破綻はラストの破壊力を増大せしめる効果をも担っていたから、一概にマイナスでもない。

役者は個性…というよりアクが強く、活劇の幅の広さを感じさせるいいキャスティング。長いこと「騒動舎のいない明治なんてなぁ」と女々しいことを思っていたが、何だかこの人たちが馬鹿なことをどんどんやっていけば明治演劇は安泰なんじゃないか、と、少し明るい未来を見た気がした。

  • 作家役の福原冠は、狂気をうまくデフォルメしコミカルなキャラクターとして登場しつつも、随所随所で作家の視野狭窄的な芸術観と狂気をぶちまけておりGood。笑いもとっていたし、器用な人だ。やはり間の取り方が絶妙。
  • ハマカワフミエは物語の中心にいるとてもおいしい役所だったが、エキセントリックな他の人々のクッション役として機能していたのが残念。むしろ彼女をエキセントリックにしたい。やはり彼女はハマカワオーラが出しやすい役をやらせたいなぁ。
  • ヤクザ役の田代くんが素晴らしかった。こんなに笑いを理解している人だとは、初めて知った。計算された笑いに加え、何つーかとても愛嬌がある人なので、突出した喜劇役者っぷりを発揮。もっと動きを抑えてシュールな笑いに向かった彼を見てみたい。
  • 名前は知らないんだが、スコップを愛している現場作業員役の金髪くんが天才だった。こういう鬼才が埋もれているから活劇は侮れない。
  • 全然知らなかったんだが雨宮くんが登場して不意打ちを食らった。ラストのどんでん返しまで、「この役いる意味なくね?」とずっと思っていたが(笑)、その適当さが逆に良かった。フェイントを多彩した動きは素晴らしい。

3WDという劇団、次回公演はあるのかな。次はもっとギャグをコントロールして配置し、作家の世界観を突き詰めた作風を観てみたいな。と期待。

コメント

投稿者:小林寛斉 (2006年11月15日 01:45)

金髪君は伊神という鬼才です。
ペニおと呼ばれています。
劇団仙人ではもっとスゴかったです。

投稿者:Kenichi Tani (2006年11月15日 09:01)

名前に「神」って入ってんのか。さすが、生まれからして違うのか…。