2006年09月14日
羽海野チカ『ハチミツとクローバー』
妹が全巻持っていたので読んだ。最近とても流行っている少女漫画だよ。
名作。少女漫画である割に、男の子の方の心理を特に描いていること、かつ恋愛のみでなく生き方・未来の選び方ということについて心を砕き描かれていること、などがあり、珍しい漫画だなぁと思う。
正直、最初の数巻はあんまりノリ切れずうやむやに読んだのだけれど、途中からノッて来たコテコテなギャグにまず引っ張り込まれた。この人は『すごいよ!マサルさん』にすごく影響を受けているのではないかしら。だばだばした感じの絵など。似顔パンのエピソードで不覚にも爆笑した。コテコテ過ぎてちょっと引いちゃう部分もあったけど、これくらいの方がむしろ安心感があっていいかも。
中盤からの繊細な心理描写がとても良い。横書き・黒バックに白抜き文字の想念と、台詞と、象徴的な絵が組み合わさって、漫画でしか出来ない強烈なユニゾンを成している。エピソードごとにモチーフとなるアイテム(植物や雑貨など)がきっちり象徴として意味をなして話の展開に絡んで来て、実にうまい見せ方。
個人的には竹本が自転車でひたすら北を目指すくだりがとても好きだった。自分も昔ああいう無防備で無鉄砲な野宿の旅をやったことがあるし、それまで軟弱に感じていた竹本が急にめきめきと成長していく姿は、かなりエキサイティングであった。いいんだよ、これぐらいドラマチックで、くっきりしていて。物語というものは。
不慣れなタイプの絵柄であることや、今一つどの登場人物にも感情移入できなかった点で、結構引いた目線から読んだけど、おかげで青春群像劇として道に迷い恋に悩む若者たちの人生が奇妙に絡み合う様が大変面白く読めた。ポエムのような独白部も秀逸なものがあって◎。特に気に入ったもの↓
そして僕は
まばたきをくり返す
まるでシャッターを切るように
心のどこかに焼き付けばいいと
そんなコト考えながら何回も
甘いケーキの匂いと
みんなの笑い声の中で
(ハチミツとクローバー(3)より)
終わり方も俺は好きだな。正直、修司(助教授のあの人)をずっとサブキャラとしか認識してなかったからちょっと唐突に奴がのし上がって来て戸惑ったし、彼の心情は今一つ掴みづらかったのだけれど、恋の結末も人生の選択も意外な程強く悲しみの影が落ちていて、よかった。ラストのサンドイッチにはやられたな。好きなんだ、ああいうタイトルの使い方。
5巻で修司が山田に語る台詞が印象的。人間の選択肢には、いつだって大抵「努力する」か「諦める」しかない、ということを言う。この時点でも結構いい台詞だが、その後モノローグで「選択肢は本当はもう一つある、だが二つしかないと信じていた方が道は開けるから、その答えを僕は口にしない」といった意味のことを語る。この「答え」は結局明かされることはないのだが、ここに何を持って来るかによって、その人の考え方や感性や知性が透けて見えるような気がする。
恋愛に限定して考えると非常につまらないが、人生ってものに拡大して捉えるべきだろう。僕は、この答えに「待つ」を挙げたい。努力するのは難しいが、諦めるにも胆力が要る。大抵の凡百で愛すべき人間たちが選ぶのは、「待つ」ということではないかしら。そして、ただ何となく憧れて、「もしかしたら」「いや、まだまだ」とじめじめと思いながら待っているうちに、終わっていくのが大抵の人生である。そして、「待つ」ことはそれほど痛くもないしリスクもないけれど、どことなく息苦しく、たまにぎゅっと切なくなる。この物語の主人公たちは、誰一人そういう燻った道を選ばなかった点で、大変にすがすがしい。
最後に。「リーダー」という犬キャラが最高によかった。ほら、よく犬とか猫が人間にじゃれてるときにアテレコするじゃないですか。「はふはふ、抱っこしてー」「お腹が減ったワン」みたいな。すごく高いレベルでそれをやっていて、しかも絵柄が超かわいかったので、僕はリーダーにめろめろであった。
勢いで今度映画を観に行ってみようと思うが、多分がっかりするんだろうなぁ。面白い漫画でした。
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投稿者:Kenichi Tani (2006年09月14日 11:23)
「三つ目の選択肢」は、作者自身がインタビューで答えを語っちゃってるみたいだ。2ch少女漫画板の当該スレに答えがあるよ。
現行スレ:
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/gcomic/1157895993/
俺の書いた答案は当たらずとも遠からず、というところだけど、深く考えていくと『ゴドーを待ちながら』が頭をよぎってイヤンな気持ちになるな。
投稿者:ふじこ (2006年09月15日 18:53)
わっちーに借りて9巻まで読みましたが10巻って出てるんですね。はよぉよみたひ。
真山がタイプです。
投稿者:Kenichi Tani (2006年09月16日 03:01)
真山がって、まんまと作者の手のひらに躍らされやがって、フジコめ…。メガネ+あのヘアスタイルでカッコよく見える男なんて、現実だったら相当レベル高くなくちゃ無理だぞ。現実を見ろ、フジコ!
俺は森田が好きだ。付き合うならあいつだな。
投稿者: (2006年09月16日 15:10)
森田さんなんてもっと非現実的じゃないですか!
めがね・・・いいよなぁ・・めがね。
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