PLAYNOTE ペドロ・アルモドバル監督『死ぬまでにしたい10のこと』

2006年09月08日

ペドロ・アルモドバル監督『死ぬまでにしたい10のこと』

[映画・美術など] 2006/09/08 03:52

三年前に映画館で一人で観た。今日、深夜にオンエアーされていたので無理矢理観た。

内容(「DVD NAVIGATOR」データベースより)

『トーク・トゥ・ハー』のペドロ・アルモドバルが製作総指揮を務める感動ドラマ。若干23歳にして余命2ヵ月と宣告されたアンは、そのことを誰にも話さず生きることを決意する。彼女は“死ぬまでにしたいこと”リストを作り、死ぬための準備を始める。

記憶していたよりずっと平板でドライな作品。「死」という、物語作家にとっていくらでも筋をドラマチックに・激しく演出できる要素を、ぐっと引き、淡々と追っている。が、それがいい。

「死は人生の一部である」
なんて書いた現代日本の売れっ子作家がいたけれど。この映画の作中で医者が、
「死ぬのも簡単じゃない」
なんて言うけれど。普通の人間が、アガメムノンでもハムレットでもない普通の人間が「死んでいく」ということは、こういうものなのかもしれない。静かに階段を降りていくように、あるいは、荒れ道をよろよろと歩いた末にふと足を止めるように、死んでいく一人の女。それをあえて大仰に描かず、静かに描く。それがいい。

アンは聖女ではないが鬼女でもない。「死ぬまでにしたい10のこと」に入っている、例えば「娘たちに毎日『愛している』と言う」の健気さ、それとは対照的に見える「夫以外の人と付き合ってみる」と言い、しっかり不倫相手を「夢中に」した後に何食わぬ顔でベッドの中の夫に「愛している。そのことをずっと忘れないで」と伝えられてしまう身勝手さ。「娘達が18歳になるまで誕生日のメッセージを贈る」や「娘達の気に入る新しいママを探す」も、一見慈愛に満ちたいい母親の言葉だが、見方を翻せば自己中心的・陶酔的な行為と言えなくもない。

が、そういう矛盾した、不完全で脆く弱いただの若い女性(彼女は設定上もうすぐ24歳を迎える23歳の女。俺より年下、驚いた)が、ぎゅっと唇を噛み締め、爪先立ちをし、そして少し欲張って、夢見て迎えようとする「死」。そこに僕は感動する。それを、華美に大袈裟に飾り立てず脚色せず、たださらさらとスケッチしていく脚本とカメラワークに感動する。いい映画だと思う。

最後に、俺が三年前書いた感想がPCの中に残っていたので転載しておく(あまりにも恥ずかしい言葉の誤用があったので、そこは伏字にしておく)

ハンドカメラで取られたラフな映像。カット割りではなく役者の表情で見せる稀な映画作品。主演のサラ・ポーリーの等身大で生々しい演技がものすごく残酷。

音楽や雰囲気のセンスがすごくいい。家族への愛と共存する不倫願望を10の願いの内にいれてみたりと、矛盾した人間像を描いていて素晴らしい。端役一人一人が生きている。宣告を下す医師や刑務所の父親など、ほんの数分登場する人物も息遣いが聞こえる。

とりわけラストが秀逸。原題『my life without me』の通り、自分が死んだ後の家族や恋人の映像が穏やかに流れ、ホワイト・アウトして突然スタッフロール。死にたくないと言って暴れたり、家族に病気を打ち明けて涙を流しながらキスしあったり、息を引き取る間際が一切描かれていないのが恐ろしくリアルだった。眠るような死ってのは、逆に怖いかもしれない。

とにかく主人公・アンに尽きるなぁ。夫へのセックスをねだるシーンの愛らしさ、時として八つ辺りもしてしまう不完全さ、家庭環境、男性との付き合い方などなど、××××的と言ったら誉め過ぎだろうか? こういう一見矛盾した人間像をしっかり描けるのってすごいなぁ。

DVDとかサントラとか欲しい。パンフは屑だった。

昔の文章を読み返すのは気恥ずかしい。

コメント

投稿者:ショウコ (2008年09月02日 02:26)

こんにちわ!
はじめて、コメントしています。
ペドロ・アルモドバル監督が好きな方々にとっても面白いサイトを見つけたのでご紹介したいと思ってコメントを書いています。
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