PLAYNOTE ジャック・ケッチャム『老人と犬』

2006年09月03日

ジャック・ケッチャム『老人と犬』

[読書] 2006/09/03 04:40

『隣の家の少女』がすごく良かったので、借りてみた。過激さと猟奇性では並ぶ者がいないと言われるアメリカの作家・ジャック・ケッチャムの一冊。

あらすじとかはAmazonで読んで下さい。

川釣りを楽しんでいた老人の犬が、若く粗野で気まぐれな若者たちの銃で突然殺された。しかも頭を粉々に打ち砕かれて――。

導入がとても良い。優しく柔らかく叙情的な文章と、エッジが鋭く刺すように暴力的な文章が奇妙に入り混じり溶け合う不思議。いや、刺すように、じゃ生温いな。刺して、ねじって、内臓をえぐり出すようなイメージ。でも作者はとても優しい人だと思う。でなけりゃあんなに柔らかくて優しい一説を書くことはできない。その辺の微妙なバランス感覚が、ケッチャムの魅力だ。ただ残虐なだけの作家ではない。

猟奇・暴力性にしてもプロットや構成の出来にしても『隣の家~』には及ばないし、あまりケッチャムらしさが前面に出た作品とは言えない。が、中盤のゆったりとした流れはとても好きだった。主人公の老人は特に丁寧に描かれており、犬や家の思い出を聞く度にどんどん背中を押したい気分になっていく。結末に待っているのが流血だというのは何となく予想できたが、それでも老人を応援したくなってくるから不思議だ。そういう野蛮さを人間は持っている、ということ自体が、ケッチャムのテーマであるようにも思えるが。

さて次はどれを読もう?