PLAYNOTE 漫画:小畑健/原作:大場つぐみ『DEATH NOTE』

2006年09月03日

漫画:小畑健/原作:大場つぐみ『DEATH NOTE』

[読書] 2006/09/03 04:15

こんな有名な漫画も読んでいないのは恥ずかしいと重い、読み始めたら止まらず漫画喫茶で徹夜。1~12巻一気読み。

いくらそういう時代だとは言え、漫画にここまでやられては手も足も出ないなぁ。下手な小説よりよっぽど面白いよ。

死刑という制度があってもなくても犯罪率は変わらない、という調査結果を、アメリカのどっかの州(死刑あり)とどっかの州(死刑なし)を比べて弾き出していた研究者がいたけど、一般的な感性で言えば死刑は抑止力になると想像するだろう。「名前を書かれた者は死ぬ」、この単純な原理を持ったノート一冊をモチーフに、人間の脆さ・弱さ・愚かさを多方面から描き出しており、実に興味深い作品。

一番感心したのは、「死神のノート」というファンタジックな設定を使いつつ、ラストでは「天国も地獄もない、死は誰にでも平等に訪れる」という極めて即物的で救いのない哲学を打ち出しているところ。ファンタジーの胸を借りながらも、冷静で皮肉な視点から人間を見ており、面白いじゃないですか。

後半がつまらない、という意見をよく聞くが、自分はそうは思わない。確かに前半の方が論理戦にしても作画のクオリティにしても頭抜けていい(後半は完全に文字の方が主導権をとっており、画がつまらない)、それは確かだが、世界がキラに傾いていく中、心を揺さぶられ自身の行動や選択・信念に対し、疑念を向けたり、あるいは思いを強めたりし変わっていくサブキャラクターたち(捜査本部の脇役くんたちや、SPCの雑魚たち)の描写はとてもいいし、ライトの末路を描かずに論理戦の結果だけ示しても作者の本懐は達せられなかったのではないだろうか。

小畑健氏の絵は本当にいいな。ともすればスーパーマン過ぎて血の通わない人間のように見えてしまうであろうライトやエルを、これだけ歪んだ曲者として描けているのは絵の力だ。藤原竜也が今映画でライトをやってるらしいけど、どんなにいい芝居してもこれよりいい表情のダイナミズムは生み出し得ないんじゃないかな。だんだん神話や宗教画のテイストを帯びてくる表紙や象徴的なコマの絵がまたいい。うまい。

あと、物語のその後を想像するととても面白いな。一度世界を掌中に入れた神が死んだ後の世界は、きっと神が生まれる以前よりも凄惨なものだろう。最後に祈る女の絵が出て物語りは完結するが、彼女らの胸中を思うとやりきれない。

素晴らしいエンターテイメント作品です。描写や主題の残虐性、ストーリーの複雑さを考えると、ジャンプでよくここまでやったと称えずにいられない。名作。