PLAYNOTE fool-fish『Sketch』

2006年06月25日

fool-fish『Sketch』

[演劇レビュー] 2006/06/25 01:11

『蕎麦屋』に出ていた和知くんや、『マクベス』の西村・鈴木(さ)、『ラパン・アジル~』で絡んだ田澤氏など知り合いがごろごろ出ていたので観に行った。fool-fishで辞書引いたらモンガラカワハギと出たが、そういうことでいいのだろうか。中野スタジオあくとれにて。

二人芝居の四本立て。しかもチラシには、
「四人の作家が“ラブストーリー”をテーマに書く」
という大胆不敵なキャッチコピー。

ラブ! てっきり舞台上の二人が、一緒に屋上でお弁当食べたり、イニシャルの入ったタオルを渡したり、車の中で隠れてキスをしたり、するのかと思ったら、俺が間違っていた。割と成熟した穏やかな、だがしかし、まだ愛に無垢なときめきを抱けるギリギリの年頃――つまり二十台中盤なわけだが――の愛と言った様相。

『Sketch』というタイトルに相応しく、日常に不可思議な事件が割り込んで来たその数十分を、あくまでもさらっとクールに「スケッチ」したような、大人しめの作品群だった。

そのため当然、台本より役者の技量がモノを言うことになる。どの作品にも言えることだと思うけれど、劇的なものが日常の隙間に割り込んで来てドラマになるのだから、まず日常が日常としてリアリティを持って見えるものでないといけないし、言い古された言い回しだが「役を生きる」ことが大前提になる。

四作品の中では和知・鈴木(さ)ペアの上演が郡を抜いて良かった。役者二人の技量が攻めぎ合っている上、台本も(「男の妊娠」という爆弾を投入した割に大人しくまとまった感はあるものの)丁寧に人物の感情のひだや軋轢を描いていた。和知くんの演技は若干固さが目に付いたが、ああいう無感動でズレたキャラクターは現代的でとても親しみやすいし、あざといがやはり巧みだ。さり気ない演技の中にキャパをえぐいほど意識した演劇的な表現が垣間見れたのも◎。鈴木すーたんは、やはりさすがの安定感。この人は本当に上手くなったなぁ。その人が舞台上で裸になっているかどうかは笑顔の演技を見れば大体わかる。彼女は、非常によかった。ブラックジョークのようなとぼけた世界観の台本も、この二人をうまく活かした。

順位をつけるようなことはしたくないし、どれもいいところもあれば悪いところもあるから他の話についても細々とは書かないが、西村の出ていた一話目は、笑いがとれなかったことが何としても痛い。ウケがとれないと、あのコミカルな状況設定も笑いを狙った台詞も逆効果だ。二話目は雰囲気もよく笑いもとれていいムードで進んでおりなかなか好感触。だが全体的にあっさり目で、演劇はフォーブだ、猛禽類だ、ディオニュソスだと思っている自分の個人的趣向から言わせてもらえれば最後にギャギーンと行って欲しかった。あ、「ハッテン場」という単語が出てきて笑った。田島嬢出演の四話目は、シュールな笑いや状況に何となく春樹チックなセンスの良さを感じて観易かったな。深くえぐらない、お互いの目配せや吐息だけで伝わる悲しみや苦しみが、そういう穏やかな空気によくあっていた(田島が出ていたからというわけでは全くないのだが、ちょっと岸田國士を思い出した)

どの芝居も「素舞台+必要最低限の小道具」という条件で演じられており、本当に役者の技量だけが問われる公演だったため、やはりバラつきはあったものの、四つの話がそれぞれあれほどまでに個性的だった割に、思いの外統一感を出していた点はよかったと思う。

(つぶやき:でも自分は演劇ではスケッチより油絵が観たい。最近ニーチェやアルトーの演劇論を読み返してみて、特にそう思う。)

昔の仲間が新しいことに挑戦したり成長を遂げたりしてるのを見て、久々に芝居やろっかなぁ、という気分になった。次回公演も決まっているようだから、次は一本モノが観たいな~。