PLAYNOTE 中島哲也監督『嫌われ松子の一生』

2006年06月12日

中島哲也監督『嫌われ松子の一生』

[映画・美術など] 2006/06/12 02:18

タイトルがおもしれかったのと、周りで観た人がことごとく良いと言っていたので観た。

出演者を見るとあちらこちらの有名人ばかりで、話題取りのための映画業界的な策略なのかなぁ、とぶすぶすくすぶりつつ観に行ったが、正解。ただ「面白かった」ってのを通り過ぎて、映画もみんなこうだったらおもしれーのにな、とか、表現の可能性について、とか思いを馳せた。素晴らしい。

以下ネタバレあり。

とにかくどうしようもなく暗い話。物語は、河川敷で撲殺死体となって発見された身寄りのない中年女・松子の生涯を振り返る形で進む。だからてっきり、途中までハッピーでどこかで転落するのかな、と思ったら、全編暗い。どうやって収集つけんのかな、と他人事ながら心配しながら観ていた。

「全編暗い」と書いたが、それはあくまで物語のこと。映画全体から感じられるのは、泥臭いけれどイキのいい、「ドブネズミのように美しく生きたい」みたいな、どうしようもなく不幸だけど、生きるエネルギーが溢れ出ている空気。原作はとにかく暗い作品だったようだけれど、それをうまくエンターテイメントとして成立させた脚本・監督の力量には恐れ入る。

松子を翻弄する人間たちに、芸人や演劇畑の俳優を使ったのがまずよかった。好感度が高くお茶目な俳優陣がイヤーな役をやっているからよかったが、これがそうでなかったらとんでもなく陰惨・陰険な映画になっていたんじゃないかしら。カンニング竹山が松子を陥れ、劇団ひとりが松子をぶっ飛ばし、荒川良々が松子を捨てるからまだ観れるけど、そうじゃなかったら。

そして、全編に渡って挿入されるミュージカルシーンが大変によかった。エンターテイメント要素としても現代的なセンスに満ちたクオリティの高いものだし、松子の感情や脳内世界を、言葉や表情ではなく、音楽と映像でつまびらかにぶちまける意味合いを持っており、これ抜きでは心理描写も物語そのものも成立し得ないまでの必要性を持っている。

以下公式サイトより引用。

CG表現には様々なものがあるが、この映画が目指したのは松子が生きた〝客観的な〟世界の再現ではない。松子の感情によって変化する〝主観的な〟世界をCGで表現することだ。

こういうのどっかで観たな、と思ったら、『トレインスポッティング』だった(映画あんま観ないんで古くてすいません)。ドラッグでへろへろになる主人公の見る世界が崩れて行く様が、そのままスクリーンに映し出され、リアリズムだった世界が歪み、色づき、動き出す。映画=リアリズム。この図式って映画史の最初から最後まで常に中心にあるものだけど、CGが発達したことで、『指輪物語』のようなファンタジーや今回の『嫌われ松子』みたいなポエティックな表現もできるようになった。映画がモダニズムという古い頚木を脱却する日が来たのかも。なんて、映画を全く観ない俺が言う。

ミュージカルシーンと同様、リアリズムから離れた表現として使われていたのが、画面に散りばめられた花、花、花。これも映画を観れば何で必要だったのかすぐわかると思う。

画面が常に綺麗。コントラストが異常なまでに強い極彩色の色彩感覚が、スクリーンで見ると実に綺麗で、映画全体のハイテンションな空気にもよく似合っている。

最初はハデさから「ゴシックだな」と思って観てたが、色彩感覚や夢幻的な表現を浴び続けるうち、「バロックだな」という思いに捕らわれる。色使いも、人物像も、描写も、すべてが歪んでおり、過度に装飾されており、意外とバロック的という修飾語はこの映画に合っているかもしれない。

まとめちまうと、よく演出されていたんだ。不条理で暗く救いようのない女の生涯を、そのまままな板の上に投げ出してさばくようなことをせず、親近感が持てて、共感できて、ビジネスとしても成立していて、でも根っこのメッセージは損なわないスタイルで、見事に料理している。ラストでまた歌が効いてくる。松子がいつも歌っていた歌を、彼女を苦しめ破滅させた人々が口ずさむ。松子は、彼らに何かを残した。言葉や物によってではなく、生き方で。「何をしてもらうかじゃなくて、何をしてあげたか」とか、途中でひょいと海外青年協力隊に行ってしまう薄っぺらな女が言った言葉が、ここに来て重みを持つ。うまい。

(聞くところによると、この中島哲也監督、騒動舎のOBらしい。うちのサークルもすげー人を輩出したものだなぁ。)

ベタ褒め。DVD出たら欲しいくらい。すごくよかった。まる。

どうでもいい追記。BONNIE PINK 好きなので、彼女の歌がいい感じで使われており、よかった。しかも出演までしてたみたいで驚いた。

リンク

あと本がたくさん出てる。早いなー。映画よかったから原作読んでみたいな。

主演女優が書く制作日『嫌われ松子の一年』 原作『嫌われ松子の一生 (上)』(幻冬舎文庫) 原作『嫌われ松子の一生 (下)』(幻冬舎文庫) シナリオ完全収録『嫌われ松子の一生』オフィシャル・ブック

コメント

投稿者: (2008年09月02日 17:38)

こいつの浅いワンパターンな作風でよくこんなに喜べるな。

投稿者:Kenichi Tani (2008年09月05日 02:45)

↑頭の悪いコメント 是非お会いしてお前の汚い顔に唾ひっかけてやりたいです