PLAYNOTE 女は一冊の本である

2006年06月06日

女は一冊の本である

[トピックス] 2006/06/06 02:56

こんなことを書こうと思い立ったのも、知り合いから突然すごい詩がメールで送られて来たからである。メールにはただ詩だけが載っていた。前置きどころか、最後まで読んでも何の説明もない。こんなメールもらったの初めてだ。

とりあえず読んで。

初めて抱き寄せられて、女の存在がふわりと浮いて、何もかも、男の中に崩れ込むあの瞬間。

五年、十年、三十年経っても、あの瞬間はいつも色あげしたやうで、あとの出逢いの退屈なくり返しを、償ってもまだ余りがある。

あの瞬間だけのために、男たちは、何遍でも恋をする。あの瞬間だけのために、わざわざこの世に生れ、飯を食ひ、生きて来たかのように。

男の舌が女の唇を割ったその後で、女の方から、おずおずと、男の口に舌を差し入れてくるあの瞬間の思いのために。

↑も現代かな使いに直して読みやすくしたものだが、一応意訳を。

「どんだけ女性経験積んでも、はじめての女をモノにするときのあの感覚、あれヤバいよね。
 絶対すぐ飽きちゃうのわかってるけど、やめられんよね。
 男なんて、あの瞬間のためだけに生きてるようなもんだ。」

訳し方がフランク過ぎるとか言わない。そうでもしなきゃこっ恥ずかし過ぎるだろ。最後の一聯が素晴らしい。素晴らし過ぎるので訳していない。ここだけはどんな形でも訳したくないので、是非原文を堪能して欲しい。

金子光晴という人が書いた詩らしい。この人きっと、ろくでなしには違いないが、ろくでなしにしか書けない美文があり、ろくでなしでなければ生み出せない芸術がある。無論、だからと言ってろくでなしが無罪になるわけではないけれど(神様は見ている)

問題のメールには、前置きどころか何の説明もない。その知り合いに問い合わせても今んとこ返信がないので、何故この詩が俺に送られて来たのか謎だが、まぁ大体言いたいことはわかる気がする。余計なお世話だ。

以前年上の女友達が「男は狩猟民族、女は農耕民族」と言っていた。今思い出してもおかしみ溢れる表現で笑っちまうが、確かにそうだ。男はあちこちにDNAをばらまくのが役目。女は十月十日も腹に命を抱えて生きる。生物学的に見れば、そりゃあいろいろ違うんじゃないの。しかし、「だから男はバリバリ狩りをしろ」と言っていた彼女は、きっといい女に違いない。

自分が酔っ払うとたまに言う台詞。
「男にとって、女は一冊の本である」。
(この文章、「男」と「女」を逆にしても成立するのかもしれないが、女の気持ちはわからないので俺は書かない。)

表紙に惹かれた、文章にやられた、前から是非読みたかった、たまたま、人気があったから、安かったので、etc...。本を買うのにはいろんな理由がありますね。基本的に読み終わったら本棚に眠るのが本の役目だし、時として読みかけで投げ出されてしまうものもあるけれど、一生に渡って何度も何度も読み返してしまいたくなる本も、稀にある。そういう相手と人は一緒になるんじゃないかしら。それに、もう読み返すことはないであろう本にしても、読む前と読んだ後では確実に自分は変わっている。乱読がいいとも精読がいいとも速読がいいとも知らんけど、本は叡智、本は楽しみ、本は気晴らし、本は文化、本は…。いくらでも喩えが引き出せる気がする。

あ、この表現とテーマはいつかちゃんと戯曲にでもしようと思ってるので、パクらないで下さい。

コメント

投稿者: (2006年06月06日 21:12)

⇒金子光晴という人が書いた詩らしい。

老婆心ながら申し上げますが、彼は大詩人です。

岩波文庫とか思潮社の現代詩文庫で手軽に読めますから、
一度目を通されてみては。エッセイも面白いですよ。

ろくでなし、というよりも、破天荒、かな。

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/search-handle-form/ref=s_b_rs/250-7748695-8678616


投稿者:Kenichi Tani (2006年06月07日 20:52)

文学部とは言え文学史なんかまともに勉強したことないので知りませんでした。ジャンル的に詩は全然手を出さないしなぁ。名前はばっちり記憶したので、書店で偶然遭遇したら手にとってみます。コメントありがとうございました。