PLAYNOTE パトリス・ルコント監督『列車に乗った男』

2006年06月04日

パトリス・ルコント監督『列車に乗った男』

[映画・美術など] 2006/06/04 00:30

実に渋い映画であった。決して交わることのないはずの、正反対の生き方をしてきた中年と初老の二人の男が偶然出会い、お互いの生き方に惹かれながらも…。これ以上書いたらぶち壊しかな。

これぞフランス映画、って感じの、エスプリっつーんですか、おしゃれなムードの映画です。撮り方も見せ方も脚本も、でしゃばらない・大声あげない感じ。プラスチックのコップに水滴がぽとり、ぽとりと落ちている。次第に水はコップの淵からゆっくりと溢れるが、水滴の落ちる感覚や勢いは変わらない。そういう映画。

初老の紳士を演じる俳優の、一癖も二癖もある、茶目っ気あるエレガントさが大変よかった。台詞は語らない、彼の表情や仕草が語る物語。いい俳優ですね。対する中年男の演技も、骨太だが繊細でよかった。まぁ、この二人のためにある映画だし、この二人がいるからこその映画なんだな。

演出としても見事。自然や、何でもない建物を、カメラの技巧や光の差し込み具合でこんなに美しく捉えられるのか、と、思わず見入ってしまった。

前述の通り、物語としても描き方としても非常に静かな映画なので、終わった後号泣できるとか、深く胸を傷つけられるとか、そういうでっかい情動はない。がために、自分はやや消化不良の感を拭い切れなかったし、スカッとしたり感動したりするために観る映画ではない。ただ、人生や人間のほの暗くも耽美な一端を垣間見せてくれる、よい映画だと思います。