PLAYNOTE アベ・プレヴォー『マノン・レスコー』

2006年05月21日

アベ・プレヴォー『マノン・レスコー』

[読書] 2006/05/21 05:33
マノン・レスコー(岩波文庫)

恋愛小説という他ないのだが、そう呼ぶにはあまりに泥臭くキ○ガイじみており、巨大な物語。本棚から引っ張り出して来て三年ぶりくらいに再読した。

ええ、一言で言いましょう、くだらない本です。娼婦に惚れ込んだ聖職者の卵がどんどん道を踏み外していくだけの、くだらない話です。だが、これを一笑に付すことができる人間は、きっと、一生において、恋愛という名の果実の本当の甘味と酸味を味わうことなく死んでいくのではないかしら。

※上には岩波文庫版へのリンクを貼ったけど、俺は新潮文庫版を読みました。

1731年に書かれた古典です。まずスピード感がすごい。情景描写はほぼ皆無、心理描写は直情的でストレートなもんだから、主人公・デ・グリューのとんでもない転落人生を一気呵成に走り抜けることができる。物語の強引なまでの牽引力が素敵過ぎ。

そして、ファム・ファタールの元祖とも言えるマノンのキャラクタリゼーションがすごい。マノンにぞっこん惚れ込んでいるデ・グリュー視点で物語が語られるため、当然マノンへの礼賛がダイレクトに読者の脳に飛び込んで来る。純真だが浮気。素直だが不実。そして目がくらむほどの美女。想像しただけでくらくらするようないい女だ。

ぜひ読んで欲しい。読んでいる最中、何度も「おいお前バカそれやめとけよ!」とデ・グリュー君を止めたくなるだろう。でも、結局マノンにころっとやられて身をあやまって、どんどん破滅に近付いていくデ・グリューに、憐憫や同情ではない、もはや親近感にすら近いものを感じてしまう。愛欲というものの凶暴性と、それゆえの尊さを生々しく描いた一作。

この小説を原作として、『マノン』はオペラやバレエや映画にもなってますが、ケネス・マクミラン振付の『マノン』を全力で推薦しておきます。俺は一昨年アレッサンドラ・フェリ主演でこの『マノン』を観たけれど、エロティックで危うく、一見エレガントなんだけどぶっちゃけ悪趣味で、すごく好きでした。よい。