PLAYNOTE DCPOP3『国境線上の蕎麦屋』、終了

2006年05月16日

DCPOP3『国境線上の蕎麦屋』、終了

[公演活動] 2006/05/16 22:48
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↑アラビアータ

♪21回目の誕生日の朝に 彼女は死んだ
一度も海を 見ることもなく 死んじまった

Blankey Jet City『彼女は死んだ』より。24回目の誕生日の夜に、初日をあけた DULL-COLORED POP Vol.3 『国境線上の蕎麦屋』、終了しました。イギリスから帰って来て一年、五本の演出と四本の脚本を手掛けたけど、ラッシュもこれで一段落。一度死んだような誕生日の朝に迎えた芝居の初日でした。

毎回言ってる気がするが、今回は今までで一番大変だったな。なかなか一言では語れない公演。

脚本について。
この半年で四本書いたけど、前回の『ラパン・アジル~』とタメをはるくらい気に入ってる。ヒューマン人間でやった『ハルシネーション・ロッジ』はいつか書き直して再演したいし、『東京都第七ゴミ処理施設場~』もあの荒削りっぷりはすごく好きなので大事なのだが。

ばたばたぶっ倒れていくラストは賛否両論でした。絶賛もあればやり過ぎという声もあり。ただ、今回の本では、とにかくあのラストが書きたかった。いや、本当を言うと、登場人物があーだこーだ言い合っている間に、ミサイルが一発落ちて暗転、次の場が始まると誰もいなくなっていて、セットも吹き飛んでおり、そのまま無人無音の状態が二分続き、そのまま客電が点いて、伏線も何も回収されないまま終了のアナウンスが流れる…、くらいやりたかったんだけど、そこまで行くともうただの現実の模写に過ぎないし、それこそ安易なので、やめました(笑)

ラストに限らず大きく反応の良し悪しが分かれる公演だったけれど、それはきっと俺にポップさが足りないからだろうな。二回目の公演で「私は言葉を信じません」という台詞があったけど、本当にそうで、結局本当の感想はアンケートや肉声じゃなくて、お客さんの目とか体温とか心拍数に感じ取るしかないんだけど、本当に惜しみなく絶賛してくれた人と、退屈しちゃった人、綺麗に二つに分かれた感じがする。

が、書きたいことが書けたので俺は満足だ。こう書くと強がりのようだけれど、どんどんそうなっていかないといけない気がする。中道派日和見主義のモノ書きにはなりたくない。そしてそれはお客さんの目を忘れるということとはイコールではないんだ。ブレないブレない、ブレない。

新井友香さんにお褒めの言葉を頂き有頂天。あといつかしのぶを自分の作演でうならせたい。

内容についてよく聞かれることをちょっと書いときます。

いつの話?
劇中で「プラハの春」が言及されることから1968年とわかります。実際には1964年に開催された東京オリンピックは、東西分割によって史実より4年遅れ込んで西日本の大阪で開催された設定。そもそも分割状態でどちらかの国でオリンピックなんてこと自体が非現実的だけど、仮面ライダーが制限速度守ってたら面白くないのと同じで、その辺はファジーにやるのがいい。(1968年に『Power to the People』は発表されてないし、ビートルズも解散していないけど、そこは歴史が変わったと思ってもらえれば。)
あの二人は本当に親子?
自分の中での答えはあるけど、結局劇中で決定的な証拠もでないし、どっちでもいいんじゃないかなぁと思います。お客さんが自由に想像してくれれば。結局、誰も知ることのないまま、ああなっちゃうんだし。少なくとも厳原は、本当の親父と信じたまま、死んでいったんでしょうね。
あの位置に腎臓はなくね?
ありません(笑)。でも、あそこで背中をめくっているととんでもない絵ヅラになるので、あえて腹にしました。もっとつっこまれるかと思ったら、あんまりなかったツッコミの一つ。
使っていた曲は何?
Blankey Jet City オンリーにするつもりだったけど、 Lou Reed を一部使いました。ベンジーは Lou Reed に大きく影響を受けているので。そもそもこのタイトル自体BJCの『国境線上の蟻』のパロディだし、木下という登場人物の台詞にはBJCのある曲の歌詞の一部が丸々引用されてたり。俺演出の『マクベス』ではカーテンコールにBJCの『悪いひとたち』を使ったけれど、人間理解の方程式として、自分の中でBJCはもう欠かせない。
西と東がわかりづらい
「西=資本主義圏/東=共産主義圏」という認識がそんなにメジャーじゃなかったのかな。衣装は多少エキセントリックになってもいいからもうちょっとわかりやすく分けるべきでした。

しかし歴史のifを考えるのは楽しいもので、芝居には直接絡まない裏設定を帰りの電車とかで考えるのは割と楽しいもんでした。

誰もつっこまなかったけど、そもそもラストのオリンピックで『Power to the People』ってのがおかしな話なわけで。ジョンの曲って『Revolution』はもとより『Imagine』にですら共産主義かぶれのテイストがまじってるんだけど、『Power to the People』もそのいい例で、「革命を欲してるなら、さぁ今すぐやっちまおうぜ」みたいな歌が西側のオリンピックで歌われるはずがない。俺の脳内設定では、ジョンがアドリブで歌い出してあとで大問題になる…って筋書きでした(それ以前に日本のオリンピックで外人が歌うのも、まぁあり得ないんだけど)

が。設定はあくまで設定。結局書きたかったのは人間。

役者について。
とにかく今回は初参加が多い上、皆が皆中心的な役だったため、最初はどうなるものかと思ったけれど、意外とやりやすくて助かった。野球さんこと菅野貴夫さん&滝井麻美嬢は騒動舎系の役者さんで、以前から知己があったから違和感なくやれたし、和知・須崎両名もディープに絡むのは今回が初だが、予想以上にバカで(←俺の最大級の誉め言葉)真面目で非常に好印象。富所浩一・清水那保も、いい配役だったと思う。佐藤弘樹は最後でいい絵を出してくれたし、岩藤一成は相変わらず欠かせないプレイヤー。高橋絵梨佳は本番間際に急上昇、堀奈津美はかなりやりづらい配役にしたと思ったけど相変わらず安定感があり助けられた。ありがとう to you all。

感じるのは基礎力の弱さ、っつーか、役者としての下地の薄さだけど、個性を消さずこの辺を伸ばすいい方法というのがなかなかに難しい。が、あのサイズの小屋で声量がいっぱいいっぱいだったり、動きが弱かったりというのは当然問題なので、日々精進するしかないのだろうな。スタニスラフスキーをやりゃあいいのか、っつーとそれだけでもないし、どこかの劇団や演出者の演技術を模倣すればいいのか、というとそれがアンサーでもないけど、知っておいて損はない。俺も勉強しなきゃ。

チラシについて。
すごく評判がよかったのでホッとしました。

映像について。
これも「すげーよかった」と「不要」にきっぱり分かれたな。でも、演出上、あれを抜きでやることは今回はあり得なかった。いろいろ書きたいけど、つっこんだこと書くとあれこれ言わん方がいいことまで言わにゃならんので、割愛。

最後にブランキージェットシティについて一言。あれほど見事に感傷と暴力性を融和した表現をするアーティストを俺は他に知らない。演劇ばっかやってる自分だけど、一番影響を受けた人は、ビートルズとブランキーなんじゃないかなと本気で思う。聞き手を選ぶバンドだと思うけど、ぜひベスト盤でも何でもいいのでいろんな人に聴いて欲しいな。

今度こそ最後に、蕎麦について一言。といきたいとこだが、それについて語るのは野暮ってもんだ。「ざっかけない」という形容詞が最近とても気に入っている。荒っぽく粗野である。ざっくばらんである。そういう意味らしい。

そもそも、自分の芝居について自分が語ること自体野暮ってもんだが、ブログってのは将来の自分に向けて発信するものだと思う。書いておきました。

舞台写真など

携帯で撮った奴をすこし。

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「休日に急に呼び出されたんだから、いいじゃないっすか~」

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「さっき、銃声してましたけど、ここ、蕎麦屋ですよね?」

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「ご注文は!」

感想リンクなど

あと、面白いものを見つけた。作ってくれた方、ありがとう!

コメント

投稿者:コマ (2006年05月17日 00:47)

ルー リード!!
行きたかった!!!!蕎麦好きを自称するものとしては。残念!

投稿者:Kenichi Tani (2006年05月17日 04:40)

蕎麦好きだったか!俺は食うのは好きだが本当にうまい蕎麦とそうでない蕎麦の区別はつけられないな。こないだうまいと言われている蕎麦屋に行ってそう思った。

まぁ、全部おいしく思えるから、その方がいいか。

投稿者: くろさわ (2006年05月18日 02:31)

こんばんは。
見にいけてよかったです!ちょっと遅刻してしまい冒頭が見れなかったけど(TT)うんうん!!体温や目や脈拍数で感じるってすごくわかる表現です。なんていうか私も観ていて「血の通ってる話だなぁ」って思ってました。
ifworldってきっと誰しもが想像してると思うんです。それを舞台っていう空間で具現化してしまうなんてすごいですね。そういえば昔、タイムマシンに乗ってJohnを助けに行くってドラマ観たの覚えてます。結局銃声に間に合わなくて帰ってくるんだけど。
最後は「Wee Thomas」にちょっとインスパイア?って思いました。(圭史好きとしては嬉しいシンパシーなんですが違ったらすみません(--;))
あのラストで「幸せの鐘が・・・」を聞いたとき、私それまで「悲しい振りってなんだろう・・・」ってずっと思ってたんですがやっと理解できた気がします。

長くなってすみません。次回は良かったら私もなにか手伝わせてください(^^)V映像面で役に立てることがあれば是非使ってやってください!

投稿者:Kenichi Tani (2006年05月18日 04:52)

ご来場&コメントありがとうございますー!冒頭観ずに話しついていけましたか?よかったー。なかなか込み入った話でしたもんで。

『Wee Thomas』にインスパイア、よくわかりましたねー…と言いたいとこですが、観てないです(笑)。今回はほぼブランキーとあちこちの蕎麦屋から得た着想だけで話が進められてますね。

くろさわさん映像もおやりになるんですか?知らなかったー。是非一度見せて下さいな。興味ありますです。