PLAYNOTE NODA MAP『贋作・罪と罰』

2005年12月23日

NODA MAP『贋作・罪と罰』

[演劇レビュー] 2005/12/23 04:14

1995年初演、ドストエフスキーの原作を野田秀樹流に換骨奪胎した話題作の再演。シアターコクーンにて。

一言で総括してしまえば、野田らしい、非常に野田らしいお芝居。キャストも特に冒険はしていないし、ホンは再演、見立てや疾走感を強調した演出。新鮮さに欠けた感はあったが、安心して見られたし、野田秀樹が蓄えてきた方法論の有効性を再確認。ただの椅子をあれだけ多様に「見立て」られる想像力にはやはり平伏してしまう。すごく、いい意味での「お遊び感」「遊戯感」とでも言うか、芝居の可能性や表現の面白さを楽しんでヤンチャをしてる感があって、見ていて気持ちよかったし勉強になった。

一つ足りなかったのは「広さ」かなぁ。野田秀樹というと広大な劇場空間を意のままに彩り操り駆け巡り、という点はひとつ醍醐味だと思うのだけれど、今回はちょっとこじんまり。えんぺに「ビンボくさい」とまで書いてあったが、ある意味では同意。彼の極彩色でケレン味溢れる空間演出は本当に毎回関心するのだが、今回はちょっと物足りなさを感じた。あのスケール感ならば、もう一回り小さな小屋でもよかったのでは。コクーンでやるなら、もっとブンブン客の頭と目玉をブン回して欲しい。
(戯曲がああいう内容だから、そういう壮大な爽快さではなくじめっとした閉塞感を目指したのかもしれないけど)

とは言え、英(はなぶさ)が一人街を歩き、周りの人間が徐々に膝を折り身体を捻じ曲げ崩折れていくシーンの生々しさ(音がまたよかった)や、目まぐるしい場面転換をわずかなセットの移動だけでしっかり成立させてしまう巧妙さはさすが野田秀樹。芝居を熟知し尽くしているなぁ。明かりの使い方なんかも地味ではあったけどでしゃばりすぎずちょうどよかったのかも。

プチプチ(緩衝材)を多用した意図はよくわからなかったな。大抵野田は最後で「なるほどっ!」って絵解きをしてくれるんだけれど、あのセットだけは最後まで劇空間に馴染まなかったような。舞い降りてくる巨大プチプチも、視覚的な驚きはあったけどそれだけかなぁという感じ。

俺が個人的に松たか子の芝居が今一つ好きになれないせいで没入感半減だったのかも。古田新太もまだまだ引き出せる気が。脇を固める村岡希美・中村まことの芝居が好きだったな。マギーさん出てた。

何かケチばっかつけてる感じだけど、よかったことはよかった。ただ、神懸かった時の野田の凄さはこんなものじゃない、というだっせー玄人意識が、手放しで褒めることを許さないのかも。

すごいなぁと思ったのは、野田秀樹という70~80年代演劇のトップランナーが、未だにトップランナーであり続けているということ。若手劇作家や演出家を見渡してみても、これくらい広大な世界観や表現の志向性、独特の言語感覚を持っている人は見当たらない。彼のバックグラウンドに歌舞伎や唐十郎を挙げる人もいるし、その影響力はもちろん否定できないんだけれど、もう完全に別の地平に行ってしまっているからすごい。

野田さん、次はオリジナル以外のホンの演出が見たいです。あと、今に見てろ。

コメント

投稿者:たかの (2005年12月23日 10:54)

椅子すごかったっすよねー。 ちなみに、谷さんの中で遊眠社含めで野田演劇で一番好きなのなんですか?もちろん、何度も再演してるから、そのときの演出でまた違うんだろうけど………

投稿者:Kenichi Tani (2005年12月23日 14:22)

俺は『贋作・桜の森の満開の下』だなぁ。ナマで始めて見たのがそれだから、原体験みたいなもんでビビッドなのかもしれないけど。新国立版もいいが遊民社版もよい。ビデオで見るべし。