2005年12月21日
ジャック・ベッケル監督『モンパルナスの灯』
モディリアーニを主人公に描かれた半・伝記的な作品。当時のパリの空気を知りたくて観たのだが、久々に快哉を叫ぶ見事な映画を観た。
まずえらく驚くのが俳優たちの美しさ。主演の二人は当然としても(と言っても昨今のハリウッドスターの何倍も美しく見える)、脇を固める俳優まで強烈な魅力を放っている。個人的にはヒロインのアヌーク・エーメより陽気でいたずらなリリー・パルマーがすげー好みだった。服の着こなしや小道具などにもパリのオシャレが出ていて腹立たしい程カッコいい。所詮イエローはパリジャン・パリジャンヌには勝てないのか。
台本も良い。理解されずに死んだ芸術家の孤独、彼が見た暗い風景を、すごくストレートに描いている。ジャンヌの献身を痛いほど感じ、逆に自分の惨めさに絶望するモディリアーニ。いい。スノッブな成金野郎がモディリアーニの絵を買おうとするシーンなんかいちいち全部ここで解説したいくらいいい。
細かなアクションがまた台本にディテールと生気を与えている。例えば上述の成金紳士のところへ向かう途中、ホテルの廊下で置いてあったワゴンから小さなお菓子をとっさにつまみあげて食うところなんか、あれがあるだけで彼らの生活の厳しさや精神状態がぐっと生気を帯びてくる。ところどころにそういった演出的工夫が入っていてすごくよい。
ラストが圧巻。もうこれは「観てくれ」としか言いようがない。思わず(かなり大きな声を出して)唸った。これほどショッキングで陰惨なラストもなかなかないんじゃないだろうか。
やっぱ白黒ってのがいいのかな。カラーでは描けない陰影があるし、街や人間の表情にも気品がある。技術的なことはさっぱりわからないけど、カメラマンや照明さんも相当いい仕事してるんじゃないかなぁ。
どこかのレビューに「自ら貧乏になろうとする気持ちがわからない、誰にだって売ってしまえばいいのに」と書いている人がいたが、そういうタイプの実利主義的な人にはこの映画はちっとも面白くないだろう。この映画は、自意識とプライドの高い人間の不器用な生き方を、賛美するでもなく卑下するでもなく、ただリアルに捉えた作品だ。画面は美しいし展開も見事。モディリアーニの生き方に共感できない人は楽しめないだろうけど、本当にいい映画だった。
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投稿者:graciasdes (2008年05月08日 20:34)
今日、新国立美術館でモディリアーニ展を観に行きました。
モディリアーニ自身の絵に対する苦悩を知ることができましたが
日常生活の破滅については、まったく説明がありませんでした。
それで「モンパルナスの灯」を観て、このレビューにたどり着きました。生のとても小気味いい感想だったので一票です。
ラストはびっくりするほど残酷ですね。実際、モディリアーニの絵は悲劇を伝説化して知名度をあげたという経緯があるそうなので、そのデフォルメであり反発なのかもしれません。
とてもよいレビューでした。
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