PLAYNOTE 演出は楽しい

2005年08月03日

演出は楽しい

[公演活動] 2005/08/03 00:36

明大主催の『マクベス』(9/16・17)、五月から週ニで稽古してて、七月は丸々休み。八月からは一日7~8時間をほぼ毎日というスケジュールで稽古がはじまり、いよいよ本格化してきた。基礎練に肉練も入ってきて、筋トレやジョギングがものすごい勢いで俺の体力を消耗させる。その上演出なので稽古時間中気を張りっぱなし。疲労でぶっ倒れるとかならいいけど、逃亡とか発狂しないといいな。

が、演出に対する意識が最近随分違ってきて、最近ひしひしミシミシ楽しくなってきた。

今までの経験や知識に頼るところは依然として大きいけど、以前あるところで知った "Directing Actors" という本(右)がすごくためになった。ものすごく大雑把に要約すると、「もっとエモーショナルに!」みたいな曖昧模糊とした演出じゃなくて、具体的で、役者が反応できて、感情を引き出せる演出を考えましょうよ、という本。

英語では「演出」にあたる動詞はは direct がポピュラーだけど、辞書を引くと block が出てくる。 Directing が一般的な「演出」であるのに対し、 block は「振り付け」や「動作を指示すること」という意味合いが強いようだ。段取りになってしまったらもちろんそれは意味がないけれど、いい blocking は役の動機や感情を役者に伝えたり喚起したりする絶好のトリガーになる(あのスタニスラフスキーでさえ、後年は physical action という行動や所作・動作からスタートする演出方法に舵を切り替えたりしているのは実に興味深い)

稽古を blocking だけにしてしまうことはしないけれど、行き詰まったときや伝わらないときに具体的な動作や行動を指示したり、小道具を与えてみると見違えて演技が変わってくる、生き生きしてくる場合があって面白い。今日も魔女っ子三人集やマクベスたんに「あれしてみて」「これしてみて」と色々やらせてみたけれど、その度ごとに違う演技が引き出せて、違うイメージが現れて、違う感情が見えてきて、すごく稽古がアクティブになる。

「うーん、ちょっと違うんだよなぁ、もっとこう内面に渦巻く怒りが神経から伝わって皮膚を震わせてどーしたこーした」とか「もっと怒って! いや、そういう怒り方じゃなくてさぁ、悲しみっていうか絶望っていうか、そういうのを内包した怒りが欲しいんだよ!」みたいなこと言っても役者が混乱しつまづいてしまう場合が多いけれど、 blocking という試行錯誤のやりかたは、そういう行き詰まった状況を打破する際にとても有用だと思う。

今日はマクベスに短剣を一本渡して、それで壁を突き刺せ、と言った後から演技ががらっとよくなった。「短剣を壁に突き刺す」というアクションが本番まで残るかどうかはまた別の話で、そのアクションをきっかけに生まれた感情を本番まで覚えていてもらいたい、ということを伝えた。

ちょっとヒントや blocking を与えただけで演技ががらっと変わって、しかも思い描いていた芝居よりいい芝居が見れたときなんか、演出の面白さに酔いしれる。こいつは面白い。やっぱり芝居は稽古場から、役者の身体から涌き出てくるものなんだ。

この本、俺は原書で読んでるけど、邦訳も出てるので演出に興味がある人には大変おすすめ。元々は映画監督のために書かれた本だから映画作家さんには当然おすすめだし、役者も読んで損はない、というか、演技の幅や引き出しを広げようと思ったときにヒントになることが多く書かれている。演技を引き出すためのテクニックなんだから、役者も当然自分を対象にして使えるし参考になる。

演劇書なので大きな書店にしか置いてないけれど、ネットで買えるので興味がある人は是非読んで見て下さい。

※ちなみにこちらの紹介で知りました。
ネットワークユニットDUO:コラム: お奨めの本「演技のインターレッスン」/演技・演出

コメント

投稿者:terasaki (2005年08月03日 04:48)

読んでみます!

投稿者:Kenichi Tani (2005年08月03日 21:34)

あらホント!すごく面白いですよ。日本じゃあまり演出術そのものについて書かれた本ってないし。対談集や著作集に混じって入ってることはあるけど。