PLAYNOTE ピーター・ジャクソン監督『乙女の祈り』

2005年06月30日

ピーター・ジャクソン監督『乙女の祈り』

[映画・美術など] 2005/06/30 06:09

1994年の作品。1954年にニュージーランドで起きた実在の事件・人物をモデルに、『ロード・オブ・ザ・リング』のピーター・ジャクソンが脚本・監督で映画化。後に『タイタニック』でヒロインを演じることになるケイト・ウィンスレットのデビュー作でもあるそうだ。

思春期の子供特有の、止めどなく加速し肥大化する妄想を視覚的に演出していて鳥肌モノ。二人の少女が描くヒロイック・ファンタジーが、徐々にメルヘンからホラーに変わっていく。ある意味手法も題材もオカルトに近い映画だが、発育途上の子供の心理をこれほど見事に描いた作品はそうそうないだろう。

この映画のモデルになった事件、オカルトの世界では割と有名な事件で、俺も映画とは全然関係ないとこで聞き知っていた。以下、猟奇殺人の専門サイト、「MONSTERS」「同性愛殺人者/男女別篇」より引用。

 1954年、16歳の少女・ポーリーン・パーカーとジュリエット・ヒュームは、ストッキングにくるんだ煉瓦でポーリーンの母親を殴り殺した。じつに45回にもわたる激しい殴打により、頭蓋骨は完全に砕けていた。理由は「わたしたちの真実の愛」を引き裂こうとしたからだ、と彼女は言った。

「毎日、何千人となく人が死んでるんですもの。ママが死んだっておかしくはないわ」

最後の「毎日~」という言葉は映画にも登場する。どうやらポーリーンの日記から引用したらしい。他にも彼女の日記から引用した言葉や、二人が夢想していたファンタジー物語のイメージも劇中に登場する。実話に取材しながらもドキュメンタリータッチではなく、よくできたフィクションのように脚本・映像が出来あがっており、すごい。感嘆。

主演二人は(演出意図なのかもしれないが)テンション高過ぎ・メーター振り切ったようなオーバーな演技で最初は引いたが、後半に行くにつれて逆にその躁的な演技が狂気に迫真性を添えていた。二人の両親も名演。脇なのに、しっかり彼らの性格と苦悩が伝わってくる。

ポーリーンのお母さん役がいいんだよなぁ。生きることに不器用で、心配性なのに勝気に装って、実にミゼラブル。台所で一人で泣いてそうな(そんなシーンはないが)。何となく自分の母親の似姿を見るようだ。レンガで殴られた瞬間の悲鳴がいい。

「ブオォォ、ハエァェァェァ、ハアァァァァア」

冗談かと思うかもしれないが、本当にこんな声なのだ。さすがピーター・ジャクソン、本当に痛い時人間は、「ギャーッ」とか「ウガァッ、アアアアーッ」とか、そんな声を出さないってことをよくわかっている。本当に怖かった。が、ここが嘘だと少女二人が感じた恐怖と後悔も嘘になる。ポーリーンは実際の裁判でこう語ったそうだ引用元

"As soon as I started to strike my mother I regretted it but could not stop then."
(最初の一撃を振り下ろした瞬間に、やったことを後悔しました。でも、止めることができなかった。)

久々に素晴らしい映画を観た。だがもう二度と観たくないし、誰にも薦めない。それくらいよかった。

追記: 事実に取材した、ってだけでもすごいが、映画公開後、この事件の主犯の一人であるジュリエットが現在イギリスで活躍しているベストセラー作家のアン・ペリーであることが明らかになったそうだ。

洋書取り寄せて読んでみるかなー、と思ったら、翻訳まで出てた。本当に人気作家なんだな。猟奇殺人犯が素性を隠して作家として成功、なんてすごい話があるもんだな。むしろポーリーンの日記が読んでみたい。さすがに出版はされてないと思うけど…。

アン・ペリー(ジュリエット・ヒューム)の本一覧

コメント

投稿者:えりこ (2005年07月10日 01:23)

こんにちは、お久しぶり。何かいろいろとお忙しそうで。これ観たよ、結局二回ぐらい。フィクションだとしても、あの演出じゃ恐いのにノンフィクションだからね、、、背筋が凍る。もう一回は観れないな、私は。それとマクベス演出するとか。すごいね、さすが。あ、今日本帰って来てるんだよ。もし暇があったら連絡して。私、ケニチ君のemailなくしちゃったので、、、ごめん。それでは。

投稿者:Kenichi Tani (2005年07月10日 01:46)

この映画全然怖くない、って人もいるけど、俺もすげー怖いと思う。血がスプラッタしないし影からゾンビもしないけど、徐々にテンションが上がって行く二人の間の糸みたいなものが見えて。

今日本なんだー。んじゃ今度暇を見てメールするよ。