PLAYNOTE アンドレ・ジッド『田園交響楽』

2005年03月31日

アンドレ・ジッド『田園交響楽』

[読書] 2005/03/31 03:22

「ジェルトリュード、いつかも言ったことがあったろう?
目が見える者は、見ることを知らないのだよ」

盲目の少女を拾った牧師。彼の心は知らず知らずのうちに「慈悲の愛」から「恋愛」に変わってゆく。たった2センテンスで説明できるストーリーだけど、ジッドの宗教的葛藤や人間観、警句でふんだんに肉付けされ、文章の美しさも手伝ってさながら交響楽のように激しく美しいストーリー。面白かった。

何でこんな短いんだ! というやり場のない怒り。緊密な人間関係の中に幾重にも重ねられた劇的要素。もっと一つ一つゆっくり書いてくれれば『狭き門』と並ぶ名作になったかもしれないのに。惜しい。

キリスト教の教義問答のような牧師の心理的葛藤は面白い。田園に広がる自然の情景描写も素晴らしく美文。もうちっと掘り下げてあれば…。二時間くらいで読んでしまった。邪道だが、ジッドの生涯と照らし合わせて読むと二重にも三重にも読めて興味深い。

ジッドの文学はキリスト教、特に新教的な克己主義を書いたのでも、ヒューマニズムの開放を訴えたのでもなく、本人の内心の葛藤を煮詰めてとったアクだ。『狭き門』にせよ『田園交響楽』にせよ、節度や忍従を重んじる登場人物を通して語られるから精錬潔白な主題を持ってるように見えるけど、実際は矛盾した・分裂した自我を持ったジッドのあがきの文学化であるよに思う。

なんて、ジッドはこの二つしか読んでないんだけどね。もっと読みたい。

Amazon.co.jp 本: 田園交響楽