PLAYNOTE NT production 『A Dream Play』

2005年03月17日

NT production 『A Dream Play』

[演劇レビュー] 2005/03/17 01:52

英国現代演劇の大御所・キャリル・チャーチルと、気鋭の若手演出家・ケイティ・ミッチェルの手によるストリンドベリの翻案。

ユーモラスだがちらと人間のグロテスクな一面を映し出すチャーチルらしい笑いに満ちた舞台で、アルフレッドが不条理なシチュエーションの中で必死に妻と生きる意味を探し駆け回る様は観ていて愉快。…「愉快」って感想しか残らなかったのが、この翻案の失敗を物語っている気がする。

ストリンドベリの原作読んでないので何とも言えないが、Guardian Unlimited によると、原作と今回の翻案ではそもそも主人公・物語を眺める視点が移し変えられているらしい。時間ねーので翻訳せずにそのまま引用。

The result is to change the play's meaning and perspective. By seeing the action through Agnes's eyes, Strindberg showed that "human beings are to be pitied" but capable of divine redemption. But, if you take away the religious framework and marginalise Agnes, you are left with an individual dream. More specifically, I felt I was watching an actor's nightmare.

「個人的な夢」「悪夢的」というイメージはまさに俺が感じたもの。視点の変化が原作の構造を壊してしまった、という指摘は正しいように思える。

シュールレアリスム的なイメージの使用は面白いと思ったが、…シュールレアリスム詩とかを読んだことがある人ならわかるように、眠いんだよね、あれって。ある時は魂を底から揺さぶるような共鳴が得られる時もあるけど、作者の並置したイメージが自分の中で繋がらない時、それは単なる無作為に抽出され羅列された視覚的・言語的オブジェクトの洪水であって、死ぬほど退屈にもなり得る。で、残念ながらミッチェルの選んだイメージは、退屈であり、視覚的に言ってもさほどビューティフルでもなかった。

アルフレッドとヴィクトリア、アグネスら主要キャラを除き、役者を個人ではなく職能で捕らえるアイディアは面白かったな。職能だから取替えがきく。一つの役を(この場合、「役割を」と言った方が適切かもしれない)複数の役者が演じられる。エンドレスに次々とやって来るヴィクトリアの恋人・ジェフリー(その間にアルフレッドは白髪の老人に老化・笑)や、左に役者Aがハケるのと同時に右から役者Bが出てきてたとこなんかは、良質のコメディだった。これをもっと象徴的な形で使えていれば、もちっと違ってた気もする。

他に面白かったシーン。新郎新婦、結婚式でスピーチ。
「僕は今、とてつもなく幸せだ! 死んでもいいくらいだ」
すかさず列席者の一人がポケットから二丁の拳銃を取り出して二人に渡す。「ご、ご親切に」まごつく新郎、それを下手へ引っ張ってく新婦、舞台裏でバーン、ヒャッホーと騒ぐ列席者(こーゆーブラックユーモアって絶対チャーチルだと思うんだけど、違うかなぁ。今回はチャーチルの他にミッチェルや役者のアイディアも入ってるらしいから曖昧。でもチャーチルらしい笑い)

(あとは早送り・巻き戻しをガチでやってたのは面白かった。二度も三度もやらなければ…)

Financial Times のレビュー、消えてたからGoogleのキャッシュで救出。一部引用。

As adapted by the usually fascinating playwright Caryl Churchill and as presented by Britain's most overrated director, Katie Mitchell, what's being presented onstage at the Cottesloe uses less than 5 per cent of Strindberg's original. Mitchell supplies a specious programme note to justify the version she is presenting, but she would be more honest if she simply announced that this is "after Strindberg" - indeed "after Churchill", too. Strindberg apart, Mitchell makes this look like the least stimulating work Churchill has conceived in a long time. Euro-clichés abound.

歯に衣着せぬ。こういう辛口批評をやるとこはイギリス偉いと思う。

リンク

その他のレビュー。まだ読んでないので俺のメモ用。

コメント

投稿者:奈美 (2005年04月02日 07:15)

こんにちは、お久しぶりです。
勝手ながらトラックバックさせて頂きました
あわわ、ごめんなさい~(ってやり逃げ?!!)

投稿者:Kenichi Tani (2005年04月04日 01:56)

トラックバックありがとうございます!もう日本にいるんでなかなかイギリスの芝居を見る機会もないと思いますけど、今後チェックさせてもらうんで頑張って書いて下さいねー。

>観客から哀れみの笑いを貰ってしまっては、”Surrealism”としては終わりだろう。
これはごもっとも。他にも鋭い指摘がいくつもあってなるほどと思いました。