PLAYNOTE ドライデン『All for Love』

2005年03月03日

ドライデン『All for Love』

[読書] 2005/03/03 19:36

桂冠詩人ドライデンの手によるアントニーとクレオパトラの悲劇。英文学史の授業でちらっと触れたけど、未だにドライデンと聞くと AMX-009 ドライセン を思い出してしまいます(わかる奴だけついてこい)

この作品、当然シェイクスピアの『アントニーとクレオパトラ』を意識して書かれたものだけど、人物の造形も題材の扱い方も随分違っていて興味深い。普段はいちいち授業で読んだ奴とかここに書かないんだけど、シェイクスピアの方も書いたので少し感想を。

シェイクスピアと比べて断然読みやすかった。せいぜい70年の開きしかないのに、ずっと現代英語に近い感じ。単に文体がシンプルなのかな。この辺は英文学の領域で、知識がないからわからん。

"All for Love" というタイトル通り、シェイクスピア以上にアントニーとクレオパトラの愛にフォーカスを当てている。つーか、食傷しそうなくらい愛、愛、愛。"dote", "dotage" という言葉が何度か出てきたけど、ホントに恋に耄碌している。

これがローマの名将・アントニーの台詞。

ANTONY. How I lov'd
Witness ye Dayes and Nights, and all your hours,
That Danc'd away with Down upon your Feet,
As all your bus'ness were to count my passion.
One day past by, and nothing saw but love;
Another came, and still 'twas only love: ...

訳:
「わかっているだろう、私がどんなにあなたを愛したことか!
昼、夜、足取り軽く去ってゆくあなたと過ごしたすべての時間、
あなたの足元に身を投げ出して、私はあなたを愛した。
そしてあなたのすべきことと言えば、私の愛を一つ一つ数え上げること、ただそれだけ。
愛、それ以外何も目にせず、一日が過ぎ、
あくる日も、あるのはただ愛、それだけだった…。」

甘いでしょう。もう胸が悪くなるくらい甘い。甘過ぎ。半ばビジュアル系の歌詞みたい。「あなた」を「貴女」とかすると余計に。

(中期英語わかってないので誤訳ある可能性アリ。"Witness ye" は挿入句的に「あなたは見た」という意味で訳したけど、「(私は)昼も夜もあなたを見た」と訳すのかも? 詳しい方、教えて下さい)

こんな調子で始終 All for Love なんだけど、でも不思議とシェイクスピアの方がより激しく宿命的な恋を詠っていたように思う。本題からそれるけど、思うに、シェイクスピアはエピソードの挿入の仕方がずば抜けてうまい。瑣末なエピソード(伝令へのクレオパトラの憤怒など)でさえ筋の部品として使うだけでなく、そこに人物の心情・性格や人間性を深く描き込み、劇をより豊穣にしている。

話を元に戻して、ドライデンの方。
アントニーの死に際も、シェイクスピアのアントニーがローマ人の兵士としての名誉の中に息を引き取ったのと対象に、ドライデンのアントニーは「最後にキスを…」と言って死んでいく。正直、肌に合わない…。読みながら笑ってしまった。

でも、はじめて読んだときはシェイクスピアも「あり得ねー」とか言って笑いながら読んでたし(高一)、ドライデンの印象もいい舞台や映画を見れば変わるのかな。読んだ感じ、ハリウッド映画どころか昼ドラっぽさすら感じて格調をちっとも感じなかったけど、俺の英語力が足を引っ張ってる部分も大きいだろうし。

最後に、ネットで検索して見つけたドライデンの警句を。いい言葉。

恋は限りない方法で私たちを喜ばせる。
ただし、私たちから平安を奪い去るということをのぞけば。

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